世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第四章3 ボステム 上

 『主な登場人物』


 ・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により異世界にワープする事になった。
 ・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
 ・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
 ・ナナ・・・魔女族。大切な姉を助けるべく、カズト達と行動を共にする。
 ・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
 ・ナナミ・・・ナナの姉。大切な妹を守る為、魔女族を滅ぼした。一族殺しの魔女が通り名である。
 ・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【本編】


 遥か上空でカズトは考えていた。
 前にもこんな事があったな・・と。
 デジャヴっていうやつかと考えたが、前とは少し違う。


「ひ、ひぃぃぃ!カ、カズトさん!落ちてます。落ちてますよ」


 黒いローブに身を包んだ少女、左右対称に結んだ三つ編みの髪の毛は上へとあがる。


「ふー。やっぱりこっちの空気の方が美味しいわね」


 吞気な事を言っているのは、ボンテージ姿の可愛らしい女の子。
 外見通り、8歳の幼女はこう見えてこの国の女王である。
 悪魔軍のだが・・。


「アリス。前にも言ったが、いきなりワープ魔法を使うな。後、なんで毎回空に出るんだよ」


 両腕を組んで真っ逆さまに落ちていく少年は、両目を瞑り、落下していく。


「・・テトの言う通りです。なんですか?自殺願望でもあるのですか?」


 金髪ゴスロリ服を着たツインテールの女の子は、鋭い目つきでボンテージ姿の幼女を睨んだ。


「はぁ?私の勝手じゃない。それに・・こうすれば問題ないでしょ」


 そう言うと、背中から黒い翼を広げ、3人を捕まえてバサバサと羽ばたいた。
 しかし、重たいせいなのか、バサバサからパタパタへとかわっていく。
 その音を聞いていたカズトとナナの表情が、どんどん青ざめていく。


「お、おい!大丈夫なんだろうな」


「は、はぁ?私を誰だと思っているのよ」


 何故か強気な態度をみせるアリスだったが、地面はもうすぐそこまで迫っている。


「ぶ、ぶつかりますぅーーーー!!」


「・・レイラ。頼む」


「ハイ。ルミナスウィンド」


 レイラは地面に向けて風の呪文を唱えた。
 バーサーカーモードに入っていない彼女は、魔法を使えないわけではない。
 使えるが、威力がかなり落ちてしまう。
 しかし、敵を倒す訳でもないのて、これだけでよかった。
 ______________________


 レイラの活躍もあり、地面に到着した4人は辺りを見渡したが、人の気配はしない。


「ここは・・魔女の森を抜けた所か?」


「・・ハイ。ここはクリフとダン爺さまが闘われた場所です」


 レイラの声が弱弱しい物へと変わっていくのを、3人は気付いていたが、茶化したりせずにスルーする。
 カズト達は、魔女の森を抜けたボステム平原へと来ていた。
 ここはかつて、クリフとダンが闘った所であり、所々に穴があいていて、戦闘の激しさを物語っていた。
 また、カズトが虎徹を手に入れた場所でもあった。


「と、とりあえずボステムに向かうが、この前やったフォーメーションでいくぞ」


 カズトは、暗くなりそうな話題を変えようと試みた。
 そんなカズトの真意を察知したレイラは、嬉しそうに笑う。
 何だか照れ臭くなったカズトは、頭をかきながら、それぞれの顔を見渡していたのだが、アリスの不思議そうな顔を見て、ため息をついた。


「まさか・・忘れたんじゃないだろうな?」


「は、はぁ???そんな馬鹿に見えるって言うの!」


 見える!と言いたい所だが、そう言ってしまうと喧嘩になる恐れがある為、ここはあえて無視する。
 するとレイラが一歩前にでて、カズトを引っ張っていく。


「いいですか?ここにアリス。そしてナナ。私とテトはここです」


 ニッコリ微笑むレイラ。


「・・・嫌。間違っているぞ」


 仕方なく、カズトは前回のおさらいから始める事となった。
 しかし、やはりアリスからの文句が絶えない為、新フォーメーションに変更となった。
 基本的には、前衛にアリスを置き、中衛にカズト、後衛にナナを置き、最後尾にレイラの布陣である。
 前衛のアリスの役目は敵の排除であり、いざとなればゴン太を召喚して、敵の発見や中衛からの援護魔法を放たせる役目であり、中衛のカズトの役目は、アリスのうち漏らした敵の排除や、アリスへの援護、または後ろのカバーや指示出しなど、大きい役割を担っている。


 後衛のナナは、援護魔法の役割であり、後ろから敵が現れた場合はカズトとポジションチェンジをしたりするのだが、奇襲をかけられてしまうと危ないポジションでもある。
 そこで、最後尾に一番Lvの高いレイラでカバーをする。
 レイラの役目は回復魔法である。
 通常のパーティーであれば、回復魔法を使う人は、危険が最も薄い場所に置くのがセオリーであるのだが、そうなるとナナを最後尾に置く事になってしまう。
 無論、カズトが最後尾だと前衛に指示が飛ばせないなどの問題があるのだが、それ以前に、レイラがそれを許さなかった。


「すまないレイラ」


「いいんです。私の事はき、気に、しないで・・下さい」


 ますで気にして下さいと言っているように聞こえたが、ここは聞こえないフリをする。
 解ったとも言えない為であった。


「全く。イチャイチャしてないでほら!行くわよ」


「してないだろう」「・・イチャイチャ!?」


 顔を赤くするレイラを、カズトは見れなかった。


「最後にいいか。大型モンスターが現れた場合、フォーメーションBにいこうする」


 カズトの言葉に、固まる3人。


「アリ王様やアリ女王などが現れた場合、前衛にアリス、ナナ、俺の3人。少し後ろにレイラ。何かあった場合、レイラの元へ走れ」


 この前の戦闘で、かなり苦戦を強いられた強敵であり、ボスクラスであるとカズトは考える。
 しかし、4人が力を合わせれば倒せない敵ではない。
 実際ナナは1人で、アリ女王を倒している。
 カズトの言葉の意味をキチンと理解し、3人はコクリとうなずいた。
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 平原は良くゲームやアニメ等で見かける道である。
 実際ゲームの中なのだから、当然といえば当然の事なのだが、カズトは虎徹を右手に持ち、ナナはびくびくしながらも、杖を握り、モンスターが現れた場合に備えていた。


「・・オィアリス。もう少し緊張感を持ってだな」


 カズトの前を歩くアリスは、とにかく落ち着きがなかった。
 何かを発見すると、近くまでいってじーっと見つめ、時には触り、時には抜いてと、道くさばかりくっていた。


「しょ、しょうがないじゃない」


 アリス自身、旅をするのは初めての経験であり、とにかく好奇心を抑えられない。
 ナナもまた、旅をするのは初めての経験であり、キョロキョロしているが、臆病な性格の為、アリスみたいに触ったりはしなかった。
 その代わり、近くにいるレイラやカズトに質問したりしていた。


「アレはなんでしょう?」


「・・げんこつ岩です。こちらから仕掛けない限り、戦闘にはなりません」


「モ、モンスターなんですか!?」


 げんこつ岩と呼ばれるモンスターは、基本的に穏やかな性格をしている。
 しかし、倒して手に入る素材に価値がある為、戦闘に発展する場合もあるのだが、固いげんこつ岩は高い攻撃力と防御力を誇る故に、今のパーティーでは倒せない。


「こちらから手を出さなければ問題ないだろう。クエストも受けていないしな」


「クエスト・・ですか?」


 げんこつ岩を倒して、ドロップアイテムを下さいというクエスト依頼がくる事がある。
 主に建築物に使用するのが目的であり、それによって建物が建てられるのだが、当然死ぬ事もあるので、依頼を受けるかは任意である。


「カズト!」


 そんな会話をしていると、アリスから声をかけられるカズト。
 アリスの方を向くと、アリスは既に臨戦態勢に入っていた。


「カマキリコウモリか・・厄介な」


 目の前に現れたのは、1mサイズのカマキリコウモリであった。
 特徴的な部分を挙げるなら、両手と黒い羽だろう。


「どこから現れたんだ・・。ナナは魔法の準備、アリス!」


「解ってるわよ」


 そう言うと、アリスはカマキリコウモリに突進して行く。
 カズトもまた、虎徹を構え、アリスとカマキリコウモリの動きを観察する。
 右拳を全力で叩き込むアリスの攻撃を、右にかわすカマキリコウモリに対し、カズトは虎徹で切りかかったのだが、火炎切りは不発に終わってしまう。


「な・・バカな」「テト!」


 固まるカズトに襲いかかるカマキリコウモリの攻撃に、レイラがカズトを押し倒して攻撃をかわす。


「ナナ!撃ちなさい」「ハ、ハイ!」


 左側からアリスが指示を飛ばす。
 右側にいるカズトとレイラ。
 その真ん中にいるカマキリコウモリだけを狙うとなると、選択すべき魔法はこれしかない。


「フレイム」


 杖を真っ直ぐカマキリコウモリに向けて、呪文を唱えるナナ。
 カマキリコウモリは逃げようと試みるも、左右をアリスとカズトが警戒していて逃げられない。
 赤い炎は、カマキリコウモリに直撃した。


 ________________


 先ほどの戦闘は、ナナの活躍もあり、難無く勝てたカズト達。
 虫モンスターは炎に弱い。
 相性というものがあり、虫は炎が苦手、炎は水が苦手、水は砂が苦手等々だ。
 先ほどの、げんこつ岩を倒せないとカズトが判断したのは、げんこつ岩には相性が存在しない為である。
 では、どうやって倒すのかといえば、ひたすら物理攻撃で壊すのだ。
 いつもは、守護神ダンの攻撃で一撃であるが、現パーティーにダンはいない。
 レイラなら可能であるが、レイラは攻撃ができない。
 言うまでもないが、カズトがピンチの場合は別である。


「ちょっとカズト!」「・・テト?」


 先ほどの戦闘で固まってしまったカズトに対し、アリスとレイラが詰め寄る。
 カズト自身もまた、虎徹を凝視していた。


「す、すまない。次からは気をつける」


 自分だけの命ではない。
 自分のミスで、パーティーが危険な目にあってしまうのだ。
 カズトは3人に頭を下げた。


「ま、まぁ。次から気を付けなさい」


 アリスはそう告げて、先を歩く。
 レイラは心配そうな表情を浮かべ、何か言おうとしたが、持ち場に戻る方が重要な為、てくてく戻って行く。
 カズトは虎徹に心の中で話しかけた。


『虎徹・・どういう事だ』


【なんじゃ】


『なんじゃじゃない。火炎切りが発動しなかったぞ』


【そりゃぁそうじゃろうな】


『そりゃぁって・・まさかつかえないのか?』


【かっ!つかえない訳あるか】


『どうい意味だ・・力を貸してくれるんじゃなかったのか』


【何を言うておる小僧。ワシとの約束を忘れたのではないか】


『約束?』


 カズトは、虎徹を手にした時の事を思い返していた。


【小僧。このワシを手にしたい理由を述べよ】


【世界制覇または世界征服・・己の野望の為か】


【それともヤツのように世界を救いたいのか】


【ワシの力を女子おなごの為に使うと・・】


『そういう・・事か』


 思い返して少し顔を赤くするカズト。
 虎徹の能力を使う為には、女の子を救うという理由がないと使えないという事であった。


【思い出したようだのぉ。ではワシは寝るぞぃ】


 このままではマズイ。
 そう考えたカズトは、ボステムの街で武器を買う事を決意した。
 何度かの戦闘を行いながらも、ボステム平原を抜け、カズト達はボステムの街の入り口付近へと来ていた。


「武器屋の前に少し休憩をしよう。レイラ。道案内を頼む」


「お任せください。ではテトの隣に・・アリス。邪魔です」


「邪魔って何よ!」


「け、喧嘩はダメです」


 ギャーギャー騒ぎながら、カズト達は休憩する為に飲食店を探す事にする。
 何も起きなければいいのだが・・。
 カズトは心の中で、そう願うのであった。


 次回第四章3 ボステム 中



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