世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第四章 2 カズトの決意 上

 『主な登場人物』


・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。
・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
・ナナ・・・魔女族。大切な姉を助けるべく、カズト達と行動を共にする。
・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
・ナナミ・・・ナナの姉。大切な妹を守る為、魔女族を滅ぼした。一族殺しの魔女が通り名である。
・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【本編】


 ナナの接近に気づいたナナミは、結界魔法を解いて逃げようとしたが、ナナの方が一足早く、カズトがナナミに襲われていると思ったナナは、迷う事なく、カズトとナナミの間に闇炎魔法「ダークフレイム」を唱える。


「カズトさんから離れて!!」


 そう告げるナナは普段とは違い、とても頼もしく見え、ギュッと杖を握りしめ、真っ直ぐな瞳でナナミを見つめていた。


 妹は知らない内に、頼もしく成長しているようで、姉としてそれは喜ぶべき所なのだろうが、やはり、寂しい気持ちの方が強い。
 ナナミはナナに気づかれ無いように、ほころびかける頬を、ギュッっと引き締め、右手をナナに向ける。


 そんな二人をとめるべくカズトは動きだした。


(クソ!こんなのは間違っている!)


 大好きな妹の為に、村人を殺し、悪役を演じているナナミ。
 大好きな姉の為に、カズト達を騙し、悪役を演じたナナ。


 二人が犯した、罪の重さは違うだろう。


 しかし、気持ちは全く同じはずなのだ。


 これ以上、道を踏み外し続けるのは間違っている!


「二人共やめろ!いいかナナ!良く聞くんだ・・・。」


 両手を広げ、二人の間に割って入ったカズトだったが、固まって動けない。
(な、なんだ!?声が出てこない)
 喋ろうと、二人をとめようと、必死に声を出そうとするカズトであったが、声はでてこなかった。
 不思議そうにカズトを見ていたナナだったが、カズトの様子を見た直後、表情が一変する。


「まさか・・契約魔法をカズトさんに使ったの?」


 ナナの驚愕の表情が変わり、鋭い目つきでナナミを睨みつけた。


「レイラさんだけじゃなく、カズトさんにまで・・」


 涙袋にキラリと光る涙が、ナナミの胸をチクチクつつく。


「お姉ちゃん!お願い!元に戻って!わたしだよ。ナナだよ!お姉ちゃん!!」


 ナナは必死に呼びかけた。
 正気に戻ってほしいと。
 自分の所に帰ってきてほしいと。
 しかし、ナナの必至な呼びかけは届かなかった。


「愚かな妹よ・・フレイム」


 炎魔法、フレイムが襲いかかる。


「キャッ」「危ない!!」


 カズトは、ナナの腰にタックルしながら、フレイムの軌道上からそれる。
 カズトに押し倒される形になったナナだったが、すぐに立ち上がり、ナナミの方を見たのだが、そこにナナミの姿はなかった。


 ーーーーーー


 ナナがカズトと合流した頃、アリスとレイラの方も進展があった。
 進展と呼ぶべきか迷われる出来事である。


「お、おい。聞きま違いじゃない・・よな?」


「・・・ええ。ドワーフのおば様に向かって確かに言いました」


 ドワーフのおば様とは、コロッケ屋の女店長である。
 ショーウィンドウ越しに、コロッケを指差しながら、レリスは確かにこう言った。


「我がレリスの名の元に命じる」と。


 アリスとレイラは目を合わせた。
 あの台詞は、アリスが良く口にする言葉である。
 どうなっていると目で訴えるアリスに、首を静かに横にふるレイラ。


「ちょっとだけ待ってな!」


 コロッケ屋の女店長は、そういうと奥に引っ込み、しばらくすると、少しこげてしまったコロッケを2つレリスに手渡した。


「売れないやつさ。これ食べて、お遊戯会も頑張んな」


 レリスはコロッケを受け取ると、コロッケをもの凄い勢いで食べ始めた。


「そんなに慌てて食べなくても、コロッケは逃げたりしないさ。ほら、慌てて食べるからだよ」


 コロッケを食べるレリスは、とても幸せそうな表情を見せる。
 それはコロッケ屋の女店長にとっては、お金に変えられないものであった。
 慌てて食べた為、ノドにつまらせてしまったレリスに優しく声をかけ、烏龍茶を差し出す。


「・・・・美味そうだな、ジュル」


「そ、そうですね・・」


 二人は今度、カズトに買って貰おうと考えたのだが、レイラはお願いしようと考え、アリスは買わせようと決意した事から、目的は同じだが、方法は全く別であった。
 また、二人は気づいていないが、カズトがレリスに襲われなければ、夕御飯でコロッケが食べれていた。


 レリスの天使のような笑顔が、そう思わせているのか、アリスとレイラ同様、周りの通行人もコロッケを買い求め、気付けばコロッケ屋に大行列ができていた。


「なんだい、なんだい。はいよ!コロッケ2つお待たせさま」


 急に慌ただしくなったコロッケ屋であったが、慌てる事なく、お客の注文をテキパキこなしていく女店長。
 ふと気になって、レリスがいた場所をチラっと見たが、そこにレリスの姿は見当たらなかった。


 ーーーーーーーーーーーー


「全く。何処に行っていたんですか?」


「解らん。しかし、美味びみであった。」


「美味?」


 レリスを見下ろしながら、首をかしげるナナミ。
 良く解らないが、どうやら何かを食べてきたようだ。


「それよりも、何故勇者テトをのですか?クリフ様に知られたら、怒られますよ」


「何故かは解らん。それに怒られる理由がない」


 レリスはお腹をさすりながら、幸せそうであった。


「この世界を気に入ってしまいそうじゃわい」


「・・!!。・・冗談を言うのはやめなさい」


 背中に、冷たいものが流れたのを、ナナミは確かに感じた。
 とにかく急いで戻るわよと、強引に話しをすり替え、レリスの肩を掴む。
 レリスは少し、寂しそうな表情を浮かべながら、呪文を唱えた。


【リゼクト】


 レリスのこの言葉が、嘘や間違いであってほしいと、時空間の中でナナミは祈っていた。


 ーーーーーーーー


 カズトは考えこんでいた。
 いや、考えさせられていたが正しいのかもしれない。
 目の前で泣いている女の子、ナナを見ながら頭をかいていた。
 かける言葉が見当たらない。


「ひぐ、ご、ごべんなざい」


 両手で目元を拭うナナは、さっきからこの調子であった。
 自分の姉が、カズトを襲っていたんだと思うと、溢れる涙が抑えきれないでいた。
 だが実際は、ナナミはナナを救う為に行動を起こしている。
 カズトはこの事をナナに告げようとしたが、その事になると声がでなくなってしまう。
(そうか!書くのなら・・・)
 カズトはキョロキョロ辺りを見渡し、木の枝を拾って地面に書こうとしたのだが、寸前で止まってしまう。
(何て書くんだ?安心しろと、ナナミはナナを救う為に、村を滅ぼしたとでも言うつもりなのか俺は・・)


 泣いているナナに対しその真実は、あまりにも残酷な事ではないだろうか。
 自分の為に姉が、魔女村を壊滅したんだと知ってしまったら、ナナが喜ぶのだろうか?
 レイラを殺したんだと知ってしまったら?
 カズトの持つ木の枝がプルプルと震えてしまう。


 実際にナナミの魔法がきかず、書けたかどうかは解らない。
 一つ言える事があるのであれば、カズトはこの真実を告げられないという事であった。


 知らない方がいいという言葉がある。


 カズトはこの言葉が嫌いだった。


 無知という言葉がとにかく嫌いであった。


 だがしかし、ナナにとってはどうなのだろうか?


 両手で涙を拭きながら、鼻水をすするナナを見ながらカズトは、そんな事を考えていた。


 次回 第四章 カズトの決意 中



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