世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

特別篇 アリスと不思議なおもちゃ

 『主な登場人物』


・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。
・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
・ナナ・・・魔女族。大好きなお姉ちゃんをとめるべく、カズトと行動を共にする。
・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
・ナナミ・・・ナナの姉。
・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【本編】


 カズトは頭を抱えていた。
 いつものように、アリスとレイラ、ナナを連れて、商店街へとやってきたのだが、アリスが駄々をこねはじめたのだ。


 アリスの身体は小学生サイズなのだが、高校の制服を着ている為、目立って仕方がない。
 そんなアリスの駄々っ子攻撃を見て、レイラの目はするどくなり、ナナはどうしようかと、アワアワ慌てだすのであった。
 何故こうなってしまったのかと、カズトは頭の中を整理する。


 ことの発端は、学校からであった。


 ーーーーーーーーーー


 カズトが自分の席でぐでーんとし、前の席のレイラが心配そうにしながら、下敷きをパタパタと仰いでいると、レイラの隣の席のアリスが、クラスメイトに話しかけられていた。


「ねぇねぇアリスちゃん。お休みの日は何してるの?」


「それ!超気になるー」


 女子高生同士の普通の会話であったのだが、アリスが返した答えで普通ではなくなってしまう。


「休みか?休みはカズトにだ」


「カ、カズト君とつきっきりって・・」


 キャーっと騒ぎ出す女子達。
 カズトは顔を上げるに上げれない状況に追い込まれ、寝たフリをするハメになってしまう。
(誤解を招く言い方は勘弁してくれ)
 今思えば、ここでアリスに突っ込んで置くべきだったと、カズトは思うのだが、盗み聞きしていたと思われるのもどうかと、沈黙に徹してしまったのだ。


「ねぇねぇ。つきっきりでって言ったけど、何してるの?」


「色々だ。カズトはだから大変なんだ」


 アリスの返事を聞いた女子達は、キャーキャーっと騒ぎだす。
(下手くそってアリスのヤツ、この間のクエスト、モンスター討伐の事をまだ根に持ってんだな)
 当然、女子達はモンスター討伐の事とは考えるはずもなく、ワイワイ騒ぎ始めた。
 すると、アリスが一人のクラスメイトに声をかけた。


「なぁなぁ。それは何だ?」


「え?これ?見てみて。可愛いでしょ!」


 カズトはチラッと盗み見すると、何やらキーホルダーが気になったアリス。
(可愛いのか・・アレ?)
 女の子の、可愛いの基準がカズトには解らない。
 女の子が見てみてと言ったキーホルダーは、ちょんまげをつけ、腰に刀を装備した武士であった。
 ほっぺたには赤い〇がついており、まるで酔っ払いのようだ。
 アリスはそれを受け取ると、再度何なのかをたずねた。


「あ~これは、キーホルダーっていって、鞄に付けたりするやつ・・かな?」


「ま、そんな感じだよね!」


「何でつけるんだ?」


「いいアリスちゃん。これは女子力が試されているのよ」


「そうそう。みんなと一緒の鞄何てつまらなくない?」


「女子力?つまらない・・?」


 何を言われているのか、アリスには解らなかった。
 日本で生まれ育ったカズトにも解らないのだから、異世界の魔王の娘に解るはずもない。


「大抵みんなサンリオとかポケモンとかじゃない?」


「あ!でもこの間かなえの鞄にペンダントがあって・・で、で、それなに何?って聞いたの」


「マジ!超気になるー」


「彼氏とペアルックだって」


「うらやま」


 盛り上がっていたと思ったら、急に落ち込みだす女子達。
 全くもってカズトには理解できなかった。
 しかし、カズトの前の席で、黙って見ていたレイラは、何かにとりつかれたようにメモを必死にとるのであった。


「・・ペアルックで裏山」


 うらやましいっていう意味だと理解していないだろうとカズトは思い、レイラに教えようとしたその時であった。


「カ、カズトさん!ダ、ダ、ダメです」


 カズトの隣の席で、寝息をたてていたナナが急に喋りだした為、一斉に注目が集まった。
 アリスとレイラ、そして隣のクラスにいるであろう我が妹の視線を感じながら、カズトは寝たふりを続ける。


「も、もう食べれません」


 どんな夢だよ!一同は同じ気持ちであった。


 ーーーーーーーーーー


 授業が終わり、3人とお買い物をして帰る事にしたカズト。
 夕飯何か?とか、アレは何ですか?とか、色々な質問責めにあうカズト。
 ポストと答えれば3つぐらい質問が飛んでくる。


「ポストっていうのは、遠いところに手紙とかを運んでくれる入れ物みたいなものだ」


 本当は、海外宛はこっち等と説明するべきなのだが、海外とは何かと、再度質問責めにあうのが目に見えてしまっている。
 何故赤い色なのかを聞かれれば、目立ちたいからだろうと答え、何故ポストというのかを聞かれたら、携帯を開いて答えるカズト。


 本来英語では、ポストボックスが正しいのだが、略す習慣?習性?をもつ日本では、ほとんどの人がポストと呼ぶ。
 ちなみに、元々は”郵便差出箱”というのだが、ほとんどの人がポストと呼ぶため、郵便差出箱=ポストになったらしい。
 考えてみれば、郵便差出箱にコレをと頼まれたら、ポストではなく郵便局に行ってしまうだろう。


 カズトの答えを聞いて、関心する3人。
 逆に異世界ではどうなのかと、気になったカズトは質問する。


「魔獣に届けてもらうわ」


「鳥にお願いします」


「ま、魔女は村で生活していましたので、届けるなら直接です」


 手紙を日本で直接もらうとなると、ラブレターか果たし状ぐらいだろうなと、カズトはどうでもいい事を考えていた。


 ーーーーーーー


 買い物を済ませ、アリスがコレを買ってくれとせがむ為、仕方なく買ってあげたうまい棒というお菓子を仲良く食べるカズト達。
 夕飯前に食べるのもどうかと考えたが、レジの前でゴネられると、恥ずかしくなってしまったのだった。


「いいか?美姫には内緒だぞ」


「解ってるふぇ」


「食べながら喋るな」


 美姫が怒ると怖いと知っている4人。
 それぞれ、明太子味、コーンポタージュ味、サラダ味、タコ焼き味を食べ比べる。
 昔は自分も美姫と一緒に駄々をこねて、母親を困らせてしまっていたなと、カズトが遠い記憶に浸っていると、ナナから質問がきた。


「カズトさん。アレは何ですか?」


 ナナにそう言われ、指差す方へと顔を向けるカズト達。
 四角いボックス、ボックス内にはカプセル型のプラスチックのボールが大量に入っている。


「あぁアレはガチャポンといってだな」


 そう言って立ち上がるカズトは、ガチャポンの前に立って解説する。
 カズトを見習って、後に続くアリス達。


 最近ではあまり見かけなくなってしまったが、お金を入れて、中央にあるレバーをクルッと一回転させると景品がもらえる機械?みたいなヤツだと説明するカズト。
 何が出てくるか解らない所が、コレのいい所なんだと思う。
 カードが手に入るヤツだったり、1000円入れないと出来ないヤツがあったりと、種類も豊富になっている。


「1000円て?」


「さっき食べたお菓子が100本買えるお金だ」


「あ、あんなに美味しいのが100本も買えるんですか!!」


 正確には、消費税がついて1100円なんだが、そこまで言うと、消費税10%について説明しなくてはいけなくってしまう為、省略する。


「・・何故ガチャポンというのでしょう」


 レイラにそう聞かれるが、考えた事はない。
 物心ついた時にはガチャポンと呼んでいた。
 他の人はガチャガチャと呼んだりしていたが、カズトはガチャポンと呼んでいる。


「ガチャっと回してポンっと出てくるからじゃないか?」


 辺り触りない答えを返すカズト。
 カズトがガチャポンと呼ぶ由縁でもある。


「カ、カズトさん!こ、これもポンと出てくるんですか!!」


「嫌、出てくるならピンだろって、出ないから安心しろ」


 ガチャピンが100円で手に入るなら、ちびっ子は皆んな欲しがるだろうと考えるカズト。


「ねぇカズト。何でコレだけ、真っ黒で?なのよ」


「あぁそれは闇ガチャって呼ばれるヤツだ」


 闇ガチャ。
 他のガチャポンは、コレのどれかが手に入ると書いてあるのだが、コレは何が手に入るのかが、全く解らないようになっている。
 酷い時は、カプセルの中にヘアーゴムが3本の時もある。
 しかし、ヘアーゴム3本じたいが100円するかしないかなので、文句の言いようがない。


「ま。ようは運試しってヤツだな」


「なるほどね。カズト!100円頂戴」


「何でそうなる」


「アンタ私のしもべなんだから、主人に尽くす務めってものがあるのよ」


 右手の人差し指をチッチッチっと振るアリス。


「ダメだ。さっきうまい棒を買う時言っただろう」


 ワガママはコレが最後という約束を、ついさっきしている。


「そうですよアリス。だいたいテトは私のし、しも」


 急に顔を赤くし、横を向いた為、最後の方は何を言ったのかが聞き取れない。


「やる!やりたいやりたいやりたいやりたい」


 こうして、アリスの駄々っ子攻撃が始まり、現在カズトは頭を抱える羽目に落ちいってしまったのであった。


 ーーーーーーーーーー


 駄々をこね始めたアリスを見落ろしながら、カズトはどうするべきかを考える。
 100円ぐらいと考えるが、ここで甘やかして、ワガママを言えば手に入るなどと思われてしまっても困る。
 まるで子供を持つ母親のようだなと、現実逃避するカズトであった。


「いいかアリス。こういったのは、自分で頑張って貯めたお金で買うからこそ価値があるっていうものなんだ」


 カズトはアリスにワガママはダメだと、説得する方法を選んだ。
 しかし、流石は悪魔である。
 嫌、アリスである。
 やる!の一点張りであった。


 見かねたレイラが、アリスを援護するようにカズトに質問する。


「お金はどうやったら手に入るんですか?」


「まぁ。バイトだったり、お小遣いだったりだろうな」


 カズトの家はお小遣い制である。
 死んだ両親が残してくれた家や貯金。
 それの管理をカズトがおこない、月にいくらかを美姫に手渡す。
 それとは別に、食費やらを手渡しているのだが、アリス達が来てから、全てが倍になっている。
 主に食費と光熱費などだ。


 美姫には秘密にしているが、カズトはお小遣いを切り崩して、コレをやりくりしている。
 美姫にバレたら、美姫もお小遣いなんていらないと言い兼ねない。
 大切な妹に迷惑はかけたくないと、カズトは思っている。


「じゃぁお小遣いを頂戴」


「じゃぁってなんだ」


 カズトはお小遣いについて説明をする。
 そもそもお小遣いをもらう為には、様々な努力が必要なのだ。
 ゴミを捨てに行ったり、お皿を洗ったり、トイレを掃除したり、洗濯をしたりと色々あり、それらを頑張って、やった報酬が50円だったりし、それを貯めに貯めて、欲しいものを買ったりするのだ。


「と、まぁこんな感じかな。俺も昔はよく母親の肩を揉んだりして、お金を貰ったりしたなぁ」


「じゃぁ、そこに座りなさいカズト」


「え?何で」


「ハァ?肩を揉んでやるからに決まってるじゃない」


「待て、馬鹿!やめろ!」


 カズトは先ほどまで座っていたベンチに連行される。


「待って下さい」


「おぉレイラ!助けてく・・れ・・?」


「私が揉んで差し上げます」


 レイラは助けるのではなく、アリス側についてしまった。


「・・・。」


「どうですかテト?」


「アンタもうちょっとそっちに行きなさいよ」


 右肩をレイラが揉み、左肩をアリスが揉んでいた。
 ナナもやります!と言ったが揉む場所がない為、カズトの首を揉んでいる。
 周りから見たらまさにハーレム状態である。


 通りすがりの人の視線が痛い。
 ゴミを見るような目で見ないでくれ。
 カズトは顔をあげられない状態である。


「解った。三人に100円やるから、回してこい」


 カズトはそう言って三人に100円玉を手渡した。


 ーーーーーーーーーー


 最初はナナからである。
 コレにしますと言って100円玉を入れたのは、魔法科の劣等生と書かれたガチャポンである。
 魔法という言葉にひかれたのであろう。
 やり方を説明し、ナナはレバーを回す。


「アン、アンティ・・ナイト?」


 指輪型のオモチャであった。
 子供用に作られているのだが、残念なのか良かったのか、胸以外は子供体系の3人娘。
 すっぽりはめた指輪を眺めるナナ。


 次はレイラの番であった。


「それ・・でいいのか?」


「ハイ。ではいきます」


 レイラがやろうとしていたのは、男の子なら、やった事があるであろう警察シリーズのガチャポンである。
 小さいピストルや小さい警察手帳、カズトの中では当たりは手錠である。


「やりました!」


「あぁ良かったな」


 レイラは見事手錠を手に入れ、満面の笑みでカズトに振り返ってきた。
 あまりにも嬉しいと喜ぶレイラに、カズトも思わずそう返すのだが、手錠など当てて嬉しいものなのだろうか?と心の中で呟いた。


「いよいよ私の出番のようね」


 アリスは両腕を組んで、ニヤリと微笑んだ。
 そして向かった先は、サッカー選手のユニフォーム型のキーホルダー。


「オイ・・アリス。まさかそれが欲しかったのか?」


「当然じゃない。それ以外に価値何てないわ」


 ユニフォーム型のキーホルダー。
 背中に背番号とアルファベットで書かれた選手の名前。
 名前と言うよりアダ名であった。
 キングや神の手、神様といったラインナップが並ぶ中、当然アリスが狙うはゴンと書かれたユニフォーム型のキーホルダー。


「そういえば、英語の授業でひたすらGONの読み方、書き方を勉強していました」


 レイラがポツリと呟く声を聞きながら、それの為にあんだけ必死だったのかと思うと、とても悲しくなったカズト。


「我がアリスの名の下に命じるわ。いでよゴン」


 そう言ってレバーを回すアリス。
 出てきたカプセルを取り出し、天に掲げるアリスを3人は遠い目で見守る。


「・・・カズト」


 呼ばれたので仕方なく、アリスの下へ行くカズトは、アリスの手元にあるキーホルダーを除く。


「ファン・・タジスタ・・よ、良かったじゃないか!多彩な才能を持つ人につけられるニックネームみたいなもので、ようは賛辞を送られる時に使う言葉でってなんだその手は」


「アンタにあげるわ。コレはアンタがやった事にして、100円よこしなさい」


「・・何故そうなるんだよ」


「ゴンよゴン!それ以外はいらないのよ!」


 どんだけ強いこだわりを、お前は持っているんだよと、カズトはそう思いながら、財布から100円を取り出し手渡す。


「帰ったら庭の草むしりに付き合ってもらうからな」


「解ったから早くよこしなさい!逃げられちゃうじゃない」


 逃げねーよとツッコミながら、アリスを見守る。


「こ、壊れてるんじゃないの!!カズト!もう一回!!」


 まるでギャンブル依存症の人みたいであった。
 次やれば当たる。
 そう言って当たった試しがない。


 結局アリスは1000円使い、見事ゴンのユニフォーム型キーホルダーをゲットする。
 しかし逆にすごいのが、一度もキーホルダーが被らない事であり、アリスは1000円でコンプリートしてしまったのである。


「・・解ってるな?帰ったらみっちり働いてもらうからな」


「ハイハイ。流石は私ね!狙った獲物は逃さない」


「1000円かかったけどな」


 上機嫌なアリスを先頭に、家を目指して歩き出すカズト達。


 ーーーーーーーーーー


 時刻が変わり、夜中にレイラが部屋にやってくる。
 何の要件なのかをたずねるカズトに、レイラは頬を赤らめ、手を差し出してくる。
 何かを渡そうとするレイラに、不思議に思いながら受け取るカズト。


「明日・・うらやま」


「まさか・・引きちぎったのか?」


 レイラが手渡してきたのは、ガチャポンで手に入れた手錠の片方であった。
 ペアルックはペアルックである。


「レ、レイラ。実はな」


 カズトは学校の出来事を思い出し、レイラにうらやまの意味を教える。


 うらやまとは裏山ではなく、羨ましいという意味であると。
 教えられたレイラは別の意味で赤くなり、し、失礼しました!と部屋から去って行く。
 やれやれと、頭をかきながら部屋の扉を閉めるカズト。


 翌日。


「行ってきまーす」


「・・行ってきます」


「い、行ってきます」


 今日も元気に登校する四人。


 鞄についているのは昨日買ったキーホルダー。


 レイラだけは気づいていた。


 カズトの鞄に昨日あげた手錠の片割れ。


 天使のような微笑みで、レイラは駆け出すのであった。


 次回     魔法少女ナナ

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