世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第四章 漆黒の堕天使 上

『主な登場人物』


輝基 和斗てるもと かずと・・本作品の主人公。ゲームをクリアーしたら、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。
・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。
・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器バーサーカーレイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)
・ナナ・・・おどおどした魔女族。
輝基 美姫てるもと みき・・カズトの妹で、ブラコン(重症)
・ナナミ・・・ナナの姉。魔女族始まって以来の天才である。
・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士まほうけんしクリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【本編】


 異世界から現実世界に帰還したカズト達を、待っていたのは妹の美姫であった。
 以前にもこんな事があったような・・とカズトは現実逃避していた。


「聞いてるの!お兄ちゃん」


 両手を腰にあてて、頬を膨らませながら妹の美姫はカズトを見下ろしていた。
 そんな美姫の前で、カズトは正座させられている。
 横にはアリスとレイラ、ナナも正座させられていた。
 ナナに至っては、わけも解らずといった感じである。


「そ、そりゃぁお兄ちゃんが、妹属性に弱いのは嬉しい事だけど」


 急に顔を赤くしながらモジモジしだした妹に、カズトは頭を抱える。
 時計の針は7時をまわった所であり、この後学校に行かないといけない。
 不思議と眠くはないが、体は疲れている。
 カズトが時計の針を見たのを、美姫は気付いたのだろう。


「と、とにく、話しは帰ってからだからね!私、朝練あるから・・行ってきます」


 美姫は部屋を出て、階段をおりて行った。
 美姫が部屋を出た為、カズトはベッドに腰掛けて3人を見渡す。
 最後、レイラと目が合うと、急に顔が赤くなった。
 レイラも同じようで、顔を赤くしながらうつむく。


「あああ、あの。一体どうなっているのか、説明を、おおおお、お願いします。」


 パニック寸前といった感じで、ナナは訪ねてきた。
 カズトは、アリスとレイラを交えながら、解かりやすくナナに説明をする。
 未だに信じられませんといった表情ではあるが、ナナは一応納得したみたいだ。
 いや、納得するしかないといった方が正しいのかもしれない。
 現状、見た事もない四角いものや、丸いもの、何よりレイラも別の世界だと保証している。
 きっと自分一人で来たら、パニックになって、震えて泣いていたに違いない。
 レイラの顔を見たナナは、ハッと気付く。
 魔女化について、レイラに説明と謝罪をしなくてはいけない。
 例え許してもらえず、自分が殺される事になったとしても、仕方がない事だ。
 ナナが口を開こうとした時であった。


「ナナ。私は大丈夫です。だから、その話は聞きたくありません」


 レイラが先回りし、微笑みながらナナの言葉を遮る。
 ナナはどうすればいいのか解らず、固まってしまう。
 そんなナナにカズトが話しかける。


「ナナ。話は帰ってからにしよう。それよりも俺は学校に行かないと行けないんだ」


 きょとんとするナナにアリスが話しかける。


「学校っていうのはね、みんなで勉強する所なのよ!そうね・・」


 学校についてナナに語りかけるアリス。
 まるで、先輩風を吹かせているようなアリスに、思わず笑ってしまう、カズトとレイラであった。
 ナナはずっと首をかしげていた。


 カズトの家を出る4人。
 カズトはついて来るなと言っても、ついてくると解っている為、カズトは何も言わなかった。
 何故、ナナも制服姿なのか疑問に思うカズトに、ナナが質問してきた。


「あ、あの・・あ、足がスースーするのですが・・この格好でないと・・だめですか?」


「ダメよ」「ダメです」


 アリスとレイラが口を揃えてナナに答える。
 ハ、ハイ、としか返せないナナであった。
 学校に向かう道中、ナナが急に身構えた。


「み、皆さん!レッドピエロです」


 何処から取り出したのか解らないが、その手には杖が握られており、ナナは呪文を唱えた。
 待てと言うカズトの静止は間に合わず、カズト達の周りを黒い煙が包み込んだ。


「ナ、ナナ!これは違う・・うわ」


「ええええ?ごめんなさい。」


 この後、カズト達はお店の人に怒られるのであった。


 学校についた俺達を、理事長が出迎えてくれる。
 丁度花壇の手入れをしていたらしく、おはようと声をかけてきた。
 カズトの後ろに周りこんだナナは、カエル伯爵ですと言いながらビクビクしている。
 そんなナナの姿に、目を光らすレイラとカズトを睨むアリス。
 教室の窓から熱い視線を感じるが、見ないようにしようとカズトは心に誓った。


「よく聞きなさい。我がアリスの名の下に命じるわ。この子はナナ。カズトと同じ所で勉強させてあげなさい」


 アリスの魔法のようだ。
 実際こうやって、アリスとレイラはこの学校に忍びこんだのだろう。
 確かに、理事長には害がない魔法のようだと、カズトはホッと胸をなでおろす。
 カズト達は自分のクラスへと足を運ぶのであった。


 カズトの教室にて、ナナの自己紹介がおこなわれる。
 担任のさおりが席を決める時であった。
 やはり、お調子者の田中が騒ぎはじめる。
 カズトには田中の行動が理解できない。
 騒いで良いことなど一度もないのだと、一回目で解ったはずであり、解ったなら次からそうしないようにするべきだ。
 そんな事を考えていると、ナナのが隣りにやってきた。
 どうやら、ナナはカズトの隣になったようだ。


「よよよ、よろしくお願いします。カズトさん」


 あぁと隣りに来たナナに返事を返すカズトは、前から放たれる怒気に冷や汗をかくのであった。
 アリスとレイラが何か言いたげなのが、さおりにも解ったようで、咳払いをして告げる。


「席について文句があった場合。私の隣りにします。いいですね!」


 何かを覚悟した表情で告げるさおりに、お調子者の田中でさえハイとしか答えられなかった。
 カズトはさっきまで死ぬ思いをしていたというのに、なんて平和なのだろうと雲を見ながら考えていた。


 しかしそれは、つかのまの休息きゅうそくでしかなかった。


 次回 第四章 漆黒の堕天使 中


※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて今回はいかがだったでしょうか?
第四章という事で、読みやすさを重視致しました。
また、登場人物も載せております。
縦書きで読んでいる方はちょっと読みづらくなってしまってしまい申し訳ありません。
こんな感じで更新していきますので、今後もよろしくお願いいたします。
では、次回もお楽しみに。

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