世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて
第三章8 異変 上
(前回)
囮になってカズト達を救おうと決意したレイラは、1人ほこらから飛び出していった。
レイラをとめるべく、行動をおこしたカズト、アリス、ナナの3人。
アリスとナナはレイラの後を追って行き、カズトは直ぐ近くに探し物があると、ナナから聞いて走り出し、探し物を見つけたカズトだったのだが・・。
【本編】
辺り一面何もない焼け野原の近くで見つけた”勇者の剣”を、カズトはじっと見つめていた。
いや、じっと見つめることしかカズトにはできなかった。
【我が力を欲するか・・・その資格がお前にあるのか】
自分が一体何を問われているのか理解ができず、考え込んでしまう。
(資格・・何を・・?)
カズトはゲーム時に勇者の剣を手に入れた日の事を、 思い返してみるのだが、全くもって覚えがない。
(忘れているだけなのだろうか?)
勇者の剣を手に入れる時にこんなイベント等なかったはずなのだが、重要なのはそこではない。
自分は今聞かれているのだ。
【資格はあるのか】と。
資格が何なのか解らないが、ありますと答えれば良いのだろうか?
しかし、見せろ等言われたら、アウトだ。
では、ないと答えるべきなのだろうか?
その場合、勇者の剣は手に入らなくなってしまうかもしれない。
なら、ここは正直に資格とは何なのかを聞くしかない。
カズトはそう決心して、勇者の剣にたずね返した。
「すまないが、資格とはどういう意味なのか、教えてもらえないだろうか」
カズトはそう言い終えると、軽く頭を下げた。
【フハハハハハ。ヤツとは違うようだ】
ヤツとは勇者テトの事だろうか?
  カズトは黙って続きをうながした。
  黙って立っていたカズトは、再度問われる。
【ふむ。質問を変えるとしよう】
【小僧。このワシを手にしたい理由を述べよ】
カズトは再び考えこんでしまう。
 
【世界制覇または世界征服・・己の野望の為か】
そんなものに興味などない。
【それともヤツのように世界を救いたいのか】
カズトは三度考える。
世界制覇や世界征服、世界を救う事などに全く興味がないわけではない。
  男の子なら誰しもが憧れる事だ。
  しかし、今の自分の目的はそれ以上の、もの、価値、大切、何て言葉にしていいのか解らないぐらい重要な事である。
  カズトは正直に答える事を決心した。
  
  例えこれで失敗したとしても、後悔しない方がいい。
  人は誰しも、いい方いい方へと考え、人の意見に合わせた結果、後々後悔する事が多い生き物だ。
  ならば、自分の気持ちに正直になって生きていくのか?
  残念ながらそんな優しい世界ではない。
  正直な人ほど、生きにくい世界なのだから。
(だが、俺は覚悟を決めたはずだ)
(命をはる覚悟を)
「悪いがそんなものには興味がない」
【ほぅ・・。では我の力を求める理由は何ぞ】
「助けたい女の子がいるんだ」
【女子・・小僧。本気で言っているのか?】
「あぁ。だから力を手に入れたい」
【ワシの力を女子の為に使うと・・】
 そう聞かれたカズトはうなずいた。
【フハハハハハ!よかろう。持っていくがよい】
「遠慮はしないが・・いいのか?」
【救いたい女子がおるのじゃろ?】
 そう言われると何だか照れ臭くなり、頬を赤くする。
【ワシの名は虎徹、今日から小僧に使える事としよう】
「あぁ。よろしく頼む。虎徹」
カズトはそう言って剣を引き抜き、アリス達の後を追うべく駆け出すのであった。
カズトが剣を探しまわっていた頃、レイラはアリ女王とアリ王様2匹と遭遇していた。
  アリ2匹を遠くから発見した時といい、対峙した時といい、不思議と気分は落ちついている。
  右目は元に戻り、おそらく攻撃はできない。
逃げ回って逃げ回って、カズト達が無事ならそれでいいと思っているレイラは、アリ2匹の前に立つ。
  アリ2匹の攻撃をひらりひらりとかわし、一定の距離を保っていたレイラだったのだが、突如、後ろから感じるおぞましい魔力に、全身が緊張してしまう。
「・・・誰ですか」
向こうも自分に気づいていると察し、声をかけたレイラ。
   
レイラの前に現れたのは、黒いローブをまとい、右目にルーペをはめた1人の女の子だった。
  ナナより身長が低く、アリスよりは背が高いこの女の子から、感じられるこのおぞましい魔力は何なのか、レイラは身構える。
「黒いトンガリ帽子・・魔女の方ですか?」
  終始無言の彼女に、レイラは声をかけた。
  声をかけられた彼女は、ニヤリと笑い、右手でレイラの後ろの方を指さす。
「・・・しま・・くっ」
後ろを振り向くと、槍と斧の嵐がレイラを襲うのであった。
一方、レイラを追っていたアリスとナナは、木こり兵と対峙していた。
素早い動きの木こり兵に、ナナの魔法を放つがあたらない。
 「ちっ、それなら」
  アリスがベルズアタックを繰り出そうとした時、ナナが呼びとめる。
「ダメですアリスさん!カズトさんの言葉を忘れたのですか!」
  カズトはリゼクトの魔力を残しておけと言っていた。
「そんな悠長な事、言ってられないわ」
「ここは撤退しましょう」
ナナはそう言うと、杖を地面に突き立て、呪文を唱える。
「ダーク」
  地面から黒い煙があがり、辺り一面を黒い煙が包みこんだ。
「この私が逃げるだなんて」
アリスは顔をしかめながらも、ナナの指示に従う。
  敵に遭遇しない事を祈りつつ、再びレイラの元へと駆け出すアリスとナナ。
アリ2匹の攻撃をうけたレイラ。
  直撃だけは何とか避けたが、無傷とはいかない。
「はぁ、はぁ・・・」
  木の後ろに隠れ気配を殺す。
  レイラは、そっと様子を伺う。
  アリ王様は辺りを見渡して、自分を探しているようだ。
息を整えたら、撤退しよう。
  自分の役目は、テト達が逃げる為の時間稼ぎをすることであって、ここに長居する事ではない。
  
後ろを振り向いていたレイラは凄まじい魔力を感じ、前を向いた時であった。
「ダークフレイズ」
先ほどの少女が、自分に向けて呪文を唱えてきた。
ニヤリと口角をあげ、右手を真っ直ぐ突き出している少女。
右手から放たれた黒い炎は、とてつもなく大きい。
「ウインド」
レイラは咄嗟に両手を前に向けて、呪文を唱える。
しかし、今のレイラの魔法では完全な威力は発揮できない。
風の魔法で、女の子の魔法の起動をそらす、もしくはダメージを軽減させようと判断しての行動であった。
「・・・しま・・」
後ろに木があった事が敗因だった。
前からくる黒い炎を、何とか風の魔法で防いでいたレイラだったのだが、後ろの木と挟まってしまう。
まるでサンドイッチのような状態になったレイラは、押しつぶされてしまう。
高らかに笑う少女だけの笑い声だけが、この場を支配していた。
レイラの元へ急いでいたアリスとナナは、全身から流れる警戒信号を無理やりねじ伏せ、身構える。
アリスとナナの前に現れたのは、さっきまでレイラと対峙していた2匹のアリであった。
「こんな時に・・ナナ!いける?」
あの自信家であるアリスが、ナナにいけるかと質問してきた時点で、この状況は非常にまずい緊急事態だとナナは悟った。
「・・・いけます」
数分の沈黙の後に、ナナはこう答える事しかできなかった。
自分達はレイラを追っている、ここでひく訳にはいかない。
レイラの事を考えた時、ナナの震える手はとまっていた。
もしかしたら、自分の震える手をアリスは気付いていたのかもしれない。
「ナナいくわよ!」
「ハイ」
アリスとナナは2匹のアリを倒すべく、身構える。
私はレイラ。
貴方を守る盾でありたい。
だから・・きっと。
それでも。
自分に指を向ける女の子。
こんな時こそ。
笑っておきたい。
レイラはニッコリ微笑んだ。
次回 第三章8 異変 中
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回は中々上手く書けたのでは?と自己満足です。
もう少し戦闘シーンを面白くしたいと考えるのですが、う~ん。
難しいですね。
あまり長くなってはあれなのでこの辺で。
では次回もお楽しみに。
囮になってカズト達を救おうと決意したレイラは、1人ほこらから飛び出していった。
レイラをとめるべく、行動をおこしたカズト、アリス、ナナの3人。
アリスとナナはレイラの後を追って行き、カズトは直ぐ近くに探し物があると、ナナから聞いて走り出し、探し物を見つけたカズトだったのだが・・。
【本編】
辺り一面何もない焼け野原の近くで見つけた”勇者の剣”を、カズトはじっと見つめていた。
いや、じっと見つめることしかカズトにはできなかった。
【我が力を欲するか・・・その資格がお前にあるのか】
自分が一体何を問われているのか理解ができず、考え込んでしまう。
(資格・・何を・・?)
カズトはゲーム時に勇者の剣を手に入れた日の事を、 思い返してみるのだが、全くもって覚えがない。
(忘れているだけなのだろうか?)
勇者の剣を手に入れる時にこんなイベント等なかったはずなのだが、重要なのはそこではない。
自分は今聞かれているのだ。
【資格はあるのか】と。
資格が何なのか解らないが、ありますと答えれば良いのだろうか?
しかし、見せろ等言われたら、アウトだ。
では、ないと答えるべきなのだろうか?
その場合、勇者の剣は手に入らなくなってしまうかもしれない。
なら、ここは正直に資格とは何なのかを聞くしかない。
カズトはそう決心して、勇者の剣にたずね返した。
「すまないが、資格とはどういう意味なのか、教えてもらえないだろうか」
カズトはそう言い終えると、軽く頭を下げた。
【フハハハハハ。ヤツとは違うようだ】
ヤツとは勇者テトの事だろうか?
  カズトは黙って続きをうながした。
  黙って立っていたカズトは、再度問われる。
【ふむ。質問を変えるとしよう】
【小僧。このワシを手にしたい理由を述べよ】
カズトは再び考えこんでしまう。
 
【世界制覇または世界征服・・己の野望の為か】
そんなものに興味などない。
【それともヤツのように世界を救いたいのか】
カズトは三度考える。
世界制覇や世界征服、世界を救う事などに全く興味がないわけではない。
  男の子なら誰しもが憧れる事だ。
  しかし、今の自分の目的はそれ以上の、もの、価値、大切、何て言葉にしていいのか解らないぐらい重要な事である。
  カズトは正直に答える事を決心した。
  
  例えこれで失敗したとしても、後悔しない方がいい。
  人は誰しも、いい方いい方へと考え、人の意見に合わせた結果、後々後悔する事が多い生き物だ。
  ならば、自分の気持ちに正直になって生きていくのか?
  残念ながらそんな優しい世界ではない。
  正直な人ほど、生きにくい世界なのだから。
(だが、俺は覚悟を決めたはずだ)
(命をはる覚悟を)
「悪いがそんなものには興味がない」
【ほぅ・・。では我の力を求める理由は何ぞ】
「助けたい女の子がいるんだ」
【女子・・小僧。本気で言っているのか?】
「あぁ。だから力を手に入れたい」
【ワシの力を女子の為に使うと・・】
 そう聞かれたカズトはうなずいた。
【フハハハハハ!よかろう。持っていくがよい】
「遠慮はしないが・・いいのか?」
【救いたい女子がおるのじゃろ?】
 そう言われると何だか照れ臭くなり、頬を赤くする。
【ワシの名は虎徹、今日から小僧に使える事としよう】
「あぁ。よろしく頼む。虎徹」
カズトはそう言って剣を引き抜き、アリス達の後を追うべく駆け出すのであった。
カズトが剣を探しまわっていた頃、レイラはアリ女王とアリ王様2匹と遭遇していた。
  アリ2匹を遠くから発見した時といい、対峙した時といい、不思議と気分は落ちついている。
  右目は元に戻り、おそらく攻撃はできない。
逃げ回って逃げ回って、カズト達が無事ならそれでいいと思っているレイラは、アリ2匹の前に立つ。
  アリ2匹の攻撃をひらりひらりとかわし、一定の距離を保っていたレイラだったのだが、突如、後ろから感じるおぞましい魔力に、全身が緊張してしまう。
「・・・誰ですか」
向こうも自分に気づいていると察し、声をかけたレイラ。
   
レイラの前に現れたのは、黒いローブをまとい、右目にルーペをはめた1人の女の子だった。
  ナナより身長が低く、アリスよりは背が高いこの女の子から、感じられるこのおぞましい魔力は何なのか、レイラは身構える。
「黒いトンガリ帽子・・魔女の方ですか?」
  終始無言の彼女に、レイラは声をかけた。
  声をかけられた彼女は、ニヤリと笑い、右手でレイラの後ろの方を指さす。
「・・・しま・・くっ」
後ろを振り向くと、槍と斧の嵐がレイラを襲うのであった。
一方、レイラを追っていたアリスとナナは、木こり兵と対峙していた。
素早い動きの木こり兵に、ナナの魔法を放つがあたらない。
 「ちっ、それなら」
  アリスがベルズアタックを繰り出そうとした時、ナナが呼びとめる。
「ダメですアリスさん!カズトさんの言葉を忘れたのですか!」
  カズトはリゼクトの魔力を残しておけと言っていた。
「そんな悠長な事、言ってられないわ」
「ここは撤退しましょう」
ナナはそう言うと、杖を地面に突き立て、呪文を唱える。
「ダーク」
  地面から黒い煙があがり、辺り一面を黒い煙が包みこんだ。
「この私が逃げるだなんて」
アリスは顔をしかめながらも、ナナの指示に従う。
  敵に遭遇しない事を祈りつつ、再びレイラの元へと駆け出すアリスとナナ。
アリ2匹の攻撃をうけたレイラ。
  直撃だけは何とか避けたが、無傷とはいかない。
「はぁ、はぁ・・・」
  木の後ろに隠れ気配を殺す。
  レイラは、そっと様子を伺う。
  アリ王様は辺りを見渡して、自分を探しているようだ。
息を整えたら、撤退しよう。
  自分の役目は、テト達が逃げる為の時間稼ぎをすることであって、ここに長居する事ではない。
  
後ろを振り向いていたレイラは凄まじい魔力を感じ、前を向いた時であった。
「ダークフレイズ」
先ほどの少女が、自分に向けて呪文を唱えてきた。
ニヤリと口角をあげ、右手を真っ直ぐ突き出している少女。
右手から放たれた黒い炎は、とてつもなく大きい。
「ウインド」
レイラは咄嗟に両手を前に向けて、呪文を唱える。
しかし、今のレイラの魔法では完全な威力は発揮できない。
風の魔法で、女の子の魔法の起動をそらす、もしくはダメージを軽減させようと判断しての行動であった。
「・・・しま・・」
後ろに木があった事が敗因だった。
前からくる黒い炎を、何とか風の魔法で防いでいたレイラだったのだが、後ろの木と挟まってしまう。
まるでサンドイッチのような状態になったレイラは、押しつぶされてしまう。
高らかに笑う少女だけの笑い声だけが、この場を支配していた。
レイラの元へ急いでいたアリスとナナは、全身から流れる警戒信号を無理やりねじ伏せ、身構える。
アリスとナナの前に現れたのは、さっきまでレイラと対峙していた2匹のアリであった。
「こんな時に・・ナナ!いける?」
あの自信家であるアリスが、ナナにいけるかと質問してきた時点で、この状況は非常にまずい緊急事態だとナナは悟った。
「・・・いけます」
数分の沈黙の後に、ナナはこう答える事しかできなかった。
自分達はレイラを追っている、ここでひく訳にはいかない。
レイラの事を考えた時、ナナの震える手はとまっていた。
もしかしたら、自分の震える手をアリスは気付いていたのかもしれない。
「ナナいくわよ!」
「ハイ」
アリスとナナは2匹のアリを倒すべく、身構える。
私はレイラ。
貴方を守る盾でありたい。
だから・・きっと。
それでも。
自分に指を向ける女の子。
こんな時こそ。
笑っておきたい。
レイラはニッコリ微笑んだ。
次回 第三章8 異変 中
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回は中々上手く書けたのでは?と自己満足です。
もう少し戦闘シーンを面白くしたいと考えるのですが、う~ん。
難しいですね。
あまり長くなってはあれなのでこの辺で。
では次回もお楽しみに。
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