世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第三章7 資格 上

 (前回 魔女 下 )
 アリスが目を覚まし、カズト達はナナを救うべく行動をおこす。
見事ナナに合流したアリス達はカズトの元へ急ぐ。


【本編】
 ナナの救出に成功したアリス達は、カズトの元へ急ぐ。
アリスは後ろを振りむく。
「・・・ちっ。やはり倒せなかったか」
アリ女王が地面に降り立つが、羽がボロボロになっていた。
「テトの作戦を忘れたのですか?足止めは成功したと言ってもいいでしょう」
「わ、わかっているわよ」
速度をあげて、アリスとレイラはさっきの出来事を思い返していた。


 ナナを救出する少し前の事である。
カズト達はナナがアリ女王と戦っていた場所へとたどり着いた。
カズト達は足をとめて、倒れた木の後ろから覗き込む。
「・・誰もいないようね」
「そのようだが・・この大きな穴は何だ?」
大きな穴のそばに近づくカズト。
ナナがアリ女王を倒した時にできた大きな穴なのだが、3人には解らなかった。
「・・テト。向こうで大きな音がしました」
「良かった。おそらくナナだ」
音がするという事はまだ戦闘中だという事だ。
ナナが生きているという証拠でもある。
「アリス、レイラ。いくぞ」
うなずく2人を確認し、再び駆け出すカズト達。


 しばらくすると王冠を被り、赤いマントを羽織ったアリが見えてきた。
「と、とまれ」
慌ててカズトはアリスとレイラをひきとめる。
木の後ろに隠れ、カズトは深呼吸する。
(・・フー。大丈夫・・きっと大丈夫)
カズトは緊張していた。
命をかける機会など日常生活で味わうことなどまずない。
しかし、命をかけないとナナが死んでしまう。
「カズト」「テト」
アリスとレイラがカズトを呼ぶ。
「ああ解っている。作戦に変更はない」
アリスとレイラは何かを言おうとしているのを感じたカズトは、言葉を遮るように続ける。
(あぁ・・解っている)
カズトは自分に言い聞かせ、アリスとレイラを見る。
「いくぞ」
カズト達は行動をおこすのであった。


 アリスとレイラがアリ王様キングの下を潜り抜ける。
アリ王様がアリスとレイラに向けて斧を振りかぶる。
「こっちだ!!この」
近くにあった石を投げる。
コツっと小さな音がするだけで、特にダメージは与えられない。
(よし。こっちに気付いたな)
目的は倒す事ではなく注意を引き付ける事なので、特に問題ないのだが。
「・・うわ」
斧が地面に、ぶつけられた時の衝撃がすごすぎる。
吹き飛ばされないように、木にしがみつき、地面から風圧で舞う石つぶてならぬ、岩つぶては木でガードする。
遠くに行き過ぎると、アリス達の方に行ってしまうかもしれない。
カズトはそう考えて、一定の距離を心掛ける。
何十回か繰り返し、これならいけるとカズトが考えたその時であった。
「う・・そだ・・ろう」
カズトは驚愕する。
アリ王様は、斧を横に向けている。
まるで今から鞘に納めてある剣を、居合切りで横抜きするような構えをみせている。
カズトは全力疾走に切り替え、さっき見た大きな穴へと駆け出す。
アリ王様が斧を横抜きする。
木という木が斧の斬撃でなぎ倒される。
まるでそこには元から木などなかったかのような光景が広がっていた。


 アリ王様が斧を横抜きする少し前、アリスとレイラは全力疾走に切り替えていた。
アリ女王がものすごいスピードで追ってきたのだ。
「どうなってるのよ」
「どうやら羽がなくなった事によって風圧抵抗が少なくなったのではないでしょうか?」
「風圧抵抗?」
「・・・風を受けても体に負担がかかりにくくなったという意味です」
「わ、解っているわよ」
そんなやり取りができるぐらいの余裕がまだあったのだが、アリ王様が横抜きした事により、突如前方から風が襲い掛かる。
「な、何事よ」
「・・・・」
アリスは近くの木を掴む事に成功したが、レイラはナナを振り落とさないようにする為、おんぶしていたナナを抱っこの形にして両手で包み込んだ。
その結果アリ女王の方へと吹き飛ばされた。
「馬鹿レイラ」
アリスがレイラに片腕を伸ばすが、届かなかった。
アリスは瞬時に判断する。
掴んでいた木を手放し、レイラの元へ駆け出す。
アリ女王がレイラに向けて槍を突き出し、突進する。
アリ女王の行動を見たレイラは瞬時に判断する。
レイラはナナをかばうようにアリスの方へナナを投げた。
思わず舌打ちがでてしまうアリス。
レイラを救うのであれば、ナナを見捨てることになる。
ナナを救うのであれば、レイラを見捨てる事になる。
アリ女王が突進してくる。
アリスの判断は一瞬であった。


 投げられたナナを右手で掴んで、前方の空に投げる。
ナナを投げた後、レイラの下に潜り込み、レイラを上空に蹴り上げる。
「・・アリス!」
アリスの行動が理解できず、レイラはアリスを呼ぶ。
アリスの間合いに入るアリ女王の槍。
蹴り上げた足をかかと落としして、槍を地面に蹴り落とす。
しかし、アリ女王本体は止められず、アリスはアリ女王本体と直撃した。
 上空で体勢を立て直したレイラは、ナナを空中でキャッチする。
キャッチしたレイラは、下から上空に向かって吹き飛ぶアリスをキャッチする。
「・・・く」
前方を見てレイラは、苦悶の表情を見せる。
赤いマントを羽織ったアリが見えたのだが、アリの前を広がるのは木がなくなった地面であった。
アリ女王はアリ王様の元に近づいていく。
「・・・テト」
地面に降り立ったレイラは、膝がくじけそうになる。
バーサーカーモードになりかけそうなのを必死で抑え、両手に抱えたアリスとナナを回復させる事に集中する。
きっと大丈夫。
レイラは、自分に言い聞かせる。
「俺は勇者だからさ」
その言葉を思い出して、ようやく落ち着きを取り戻したレイラ。
カズトを探そうにも、2人を置いて行くのは危険だ。
かと言って自分がここにいて、モンスターに遭遇した場合戦える者がいない。
サクラ王国から長い事旅をしているレイラは、自分1人では旅ができないという意味がわかっている。
「それなら・・・」
カズトを探したいという自分の気持ち、さっきのアリスの行動、テトの作戦は戦うなと言う事。
レイラは、隠れるという選択肢をとった。
あそこならとレイラは駆け出すのであった。


 カズトは大きな穴の下に潜り込む事に成功したのだが、冷や汗がとまらなかった。
(ハァ・・ハァ・・危な・・かった)
あと少し遅れていたら、死んでいた事を悟る。
(・・どうする)
カズトは穴の中で考える。
おそらくこの穴の上には、アリ王様が待ち構えているだろう。
(だとしたら・・)
とるべき行動は3つある。
 1つはここで助けを待つという事。
しかし、アリス達には戦うなと伝えてある為、望みは薄い。
倒せるという保証もない。
バーサーカーレイラなら可能かもしれないが、戦うなと伝えている為、それも望み薄である。
 2つ目はこの穴の上にでて、上手く逃げるという選択肢である。
向こうはとにかくでかい。
こっちはアリ、向こうは人間みたいな関係だ。
(立場が変わるとはこういう時こそ、相応しいのかもしれない)
思わず苦笑いをするカズト。
しかしさっきの出来事を思い返すと、それも望みは薄いだろう。
次に横抜きされたら、かわせないだろう。
 3つ目は・・・この穴だ。
大きな穴に飛び込んだカズトは、人が1人は入れそうな小さな穴を見つけていた。
どこに繋がっているかは解らないが、ここにいても始まらない。
「ここを選ぶ事が一番いいか」
少し不安ではあったのだが、カズトは小さな穴の中に飛び込んだ。


 小さな穴の中に飛び込んだカズト。
中は暗いかもしれないからと思い覚悟したカズトであったが、心配は杞憂に終わる。
明るいからではない。
中は滑り台みたいになっており、考える暇もなく出口まで一直線であった。
悲鳴をあげるまもなく出口を潜り抜けるカズトは、着地体勢をとる暇もなくお尻から地面に着地する。
「イ・・テテテ」
お尻をさすりながらカズトが立ち上がる。
(ここはどこだ・・)
カズトが周りを見渡す。
「な・・に・・何があった・・うっ」
思わず口元を抑え、吐きそうになる胃液を無理やり飲み込んだ。


 カズトが見渡した光景。


そこには血の海が広がっていた。


次回第三章7 資格 中
※ここまで読んで頂きありがとうございます。
さて今回はいかがだったでしょうか?
今回から前回と本編というくくりをつけさせていただきました。
読みやすいかなぁ~と思ったからです。
では引き続きお楽しみください。



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