世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第三章4 魔女の森 下

 お金がないというアリスの言葉にカズトは固まってしまう。
(お金がないって・・どうするんだ・・)
ボステムに行くどころではない。
最悪何処かに連れていかれてしまうかもしれない。
アリスとカズトの2人は顔が青ざめてしまう。
「あの~?」
獣人の女の子が不思議そうな顔をしながらまっている。
「あ、あぁお金ですよね?ちなみにおいくらですか・・?」
カズトは顔をひきつらせつつ獣人の女の子に聞く。
「スライムソーダ3つで900Gです」
店員スマイルを見せる彼女に、他のテーブルから注文がはいりそっちの方へと走っていった。


「・・・オイ。どうするんだ?」
カズトは周りに聞こえないように声を潜めて2人に確認する。
「しょ、しょうがにゃいじゃにゃい!」
無いものは無い!という謎の強気な態度にイラっとするカズト。
どうしようか悩んでいたらレイラに腕を引っ張られる。
「レイラ?」
無言でカズトを引っ張って行き、店内を出ようとする為、食い逃げと思われないようアリスに残っているように指示をだす。
「1人にしにゃいで!!」
そんな声が遠くから聞こえてくる。


「・・テト。あちらでお金が手に入ります」
外に連れ出したレイラはある場所を指さす。
「あれは・・何々・・力・・自慢大会??・・優勝・・賞金・・・2000G!!!」
よくやったと頭をなでるとレイラの顔がさっきより赤くなる。
(酔いがまわったのか?)
 カズトはレイラを連れて、大会に参加する事になるのだがスライムソーダの為かと思うと悲しくなった。
勇者と戦略兵器って事でレイラとは別ブロックにさせられた。
大会を盛り上げるためであろう。
大会内容は腕相撲だ。
ドワーフやリザード、獣人等多種族参加している。
本来なら参加費がいるらしいのだが、大会を盛り上げるゲスト枠の為、無料でいいらしい。


 レイラ難無く突破して決勝戦まで駒をすすめていく。
俺は今から準決勝である。
「テト。頑張ってください」
レイラに励まされ、任せとけ!の意味を込めて親指を立てて合図する。
「オオ。勇者テト!覚悟しろよ!!」
対戦相手は獣人族の青年だ。
「さぁぁあぁ始まりました準決勝戦!」
実況のそんな声を聞きながらカズトは青年と向き合い、肘をテーブルに置き、片手をガッチリ握り合う。
腕相撲とは片方の肘をテーブルに置き、相手と片手をガッチリ握り合い、相手の手の甲を先にテーブルにつけたほうが勝ちというゲームだ。
「レディー・・・ファイ!!!」
フンッ!!っとお互い力をいれる。
レイラが祈るように応援しているのが見え、力が増す。
カズトが優勢だったのだが、獣人族の青年はズルをする。
カズトの手の甲に思いっきり爪をたてたのだ。
(イテッ!!)
丁度死角になっている事や実況で観客を煽っていたため、ズルに気付かなかったのだが、レイラだけはカズトの動きを凝視していたので気付いた。
「ハハ!勇者とはこんなものか!」
一気に形勢逆転しカズトは負けてしまう。
「なななななんと!!ここで勇者テトが負けてしまうという大波乱!!!」
実況の男が更に観客を煽る。
「オオオォォォ-」
観客も盛り上がっている。
 手を抑えてレイラの所に申し訳なさそうに帰るカズトに、サッっとレイラが駆け寄り手を治療してくれた。
にっこりと微笑むレイラにお礼を伝え頑張れとエールを送る。
「行ってきます」
レイラはそう伝えカズトに背を向ける。
カズトには見えないがその瞳が薄い紫色に変化しようとしていた。
「テトを傷つけたり、私がテトと手を繋げる機会を壊したりとあなたは私が許しません」
誰にも聞こえないように呟くレイラの表情と迫力に青年が固まる。
さすがに”バーサーカーモード”には入っていないのだがレイラから放たれる怒気に観客も息を飲む。
獣人族の青年はレイラと対峙する為レイラがボソボソ何か呟いているのが解る。
「・・せっかくテトと手を繋ぐ・・せっかく・・手を・・機会だったのに・・」
目の前で繰り返しつぶやかれるこの言葉に、青年はある言葉を思い出す。
”バーサーカーレイラに出会ったらすぐ逃げろ”そんな言葉と共に冷や汗がでる。
「そ、それでは・・決勝戦!!」
レイラが先に肘をテーブルに置く。
とても細く白い腕で、少しでも力を入れると折れてしまいそうな、そんな可愛らしい手をおそるおそる握る青年。
「レディー・・・ファイ!!!」
イ!の言葉と共にテーブルが吹き飛び会場が揺れる。
蹴とばしたとか投げ飛ばしたとかではない。
レイラが相手の手の甲をテーブルに否、テーブルを吹き飛ばし、テーブルと一緒に床に叩きつけた。
叩きつけられた床はえぐれ、獣人族の青年は白目を向いて倒れる。
文字通り瞬殺であった。
「ゆ、優勝は戦略兵器レイラだぁぁぁぁあ」
「オ、オオオォォォ-」
観客もあまりのすごさに騒ぎ出す。
優勝賞金をもらい褒めてっと顔で訴えるレイラにカズトは顔をひきつらせつつ頭を撫でるのであった。
この日の出来事をきっかけに、勇者一行の中で否、世界で一番強いのはレイラでは?と世界中で囁かれる事になるのを2人は知らなかった。


 お金を手にアリスの元に帰るとアリスの姿が見当たらない。
(ま、まさかアリス逃げたのか・・)
カズトの顔が青ざめていると獣人の女の子がカズトの元にやってきた。
「あ!お客さん!アリス様を置いて逃げるなんて酷いにゃ」
獣人族の女の子が少し怒り気味でカズトに告げる。
「え・・っとどういう意味ですか?」
カズトはわけも解らず聞き直すと、奥の方からエプロン姿のアリスがでてきた。
「あ、あんた達!!良くも私を置いて逃げたわね」
ものすごい形相のアリス。
「お客様が代金替わりにアリス様を置いて逃げたと聞いてます」
獣人族の女の子の話しを聞いたカズトは頭がいたくなる。
どうやらお金がないので代金分働かされていたらしい。
事情を説明し、お金を払おうと900G手渡すと、獣人族の女の子とアリスの顔が変わる。
申し訳なさそうな顔をする獣人族の女の子と、急に横を向くアリス。
「あ、あの~実はアリス様が厨房でお皿やグラスを割ってしまって・・」
バッっとアリスを見るが横を向いて目を合わせないアリス。
「い、いくらなんですか?」
「1500Gになります」
獣人族の女の子は満面の笑みでカズトに告げる。
「ア、アリス!!」「しょ、しょうがないじゃない!!お皿なんて洗った事ないんだから」
レイラがお金を持ってこなかったら、アリスはずっとここで働く事になっていたかもしれないな・・とお金を手渡しながらカズトは考えていた。


 武器屋で剣を買ったカズト達は魔女の森を目指す。
勇者の剣を取りに行くので買う必要がないと思ったが、装備できるかわからない。
道中敵に遭遇するかもしれないし、もしかしたら勇者の剣が無い可能性もある。
そう思い剣を購入したカズトは装備する。
300Gなのでそこまでいい剣ではないがそれは仕方がない。
レイラは戦えないし、アリスは魔法や素手の攻撃なので武器の必要がない。
余った200Gで飲み物を3本購入し、ボステムを目指す。
「剣・・か。まさか自分が振るう事になるとは」
ゲームでは振るう事があっても現実世界で振るう機会などない。
体育の授業で教わるか剣道部に入りでもしない限りまずないだろう。
だが不思議な事に握り方と構え方はカズトにはわかっていた。
試しに構えてみると、それを見たアリスとレイラが関心していた。
「レイラ!これを見てくれ」
魔女の森にむかう向かう途中でレイラに自分のステータスを見せる。
「さっきの腕相撲でLvが2にあがっている訳だが、敵と戦う時は弱い者いじめじゃないからとめるなよ」
レイラはカズトのステータスを見て不思議がっていたが、”弱い者”と言う懐かしい単語に思わず微笑んだ。
「はい。フフ・・やっぱりテトはテトです」
”弱い者いじめは許しません”
その言葉はテト、クリフ、ダンにしか解らない言葉だからだ。


 魔女の森。
とても大きな大木が太陽の光を遮るようにたくさん並んでいる。
一度森に入り森をぬけるにはかなり時間がかかり、一度道に迷うと帰れなくなり、飢えて死んでしまう事もある。
この森の中心にあると噂されている魔女の村には誰も行った事がない。
 カズト達は道中敵に遭遇する事なく、魔女の森付近までやってきた。
「あれが・・魔女の森か?」
「えぇ、そうよ!大きい木ね。」
「・・あそこに誰かいます」
レイラに言われて見てみると魔女の森入口付近に人影がみえた。
「よし!話しを聞きに行ってみよう」
カズト達はその人影に向かって歩き出した。


 人影の方もこっちに気付いたのか、急にそわそわしだしたのが見て解る。
首を左右に振ったり、慌てて転んだりとしていた人影がよし!っと言ってそうな感じでガッツポーズをとっているみたいだ。
人影の方まで近づいたカズト達は一定の距離の所で声をかけた。
「あのーすいません!!」
カズトに話しかけられた人影がビクっとしたかと思いきやこっちに向けて何かを向ける。
(攻撃か?)
攻撃に備えて身構える3人を見てまた人影はビクっとする。
「・・・・」「・・・・」
少しの沈黙の後、意を決したのか、カズト達の前に姿を見せる。
黒いローブに身を隠し、後ろ髪を2つに結んだ黒い髪、歳は15~17の少女。
ローブで見えないが胸はそこそこあり、身長は150㎝ぐらいだ。
その少女は向けていた杖を自分の横に立ててカズト達に宣言する。


「わわわわ、我は最強魔法のつつつつ、使いてナナナナ、ナナである」




次回 第三章5 魔女の村 上




※いやぁ書いてみてやはり難しいですね。
活動報告に書いていた調べものは腕相撲のルールです。
ルールは知っていますが、どう書いて表現すればいいかと迷いましたが伝わってますかね?
伝えたい事が読んでいる皆様に伝わっていればいいですが・・。
さて新キャラクターもでてきた所で次回もお楽しみください。









「世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く