世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて

伊達\\u3000虎浩

第一章2 戦略兵器レイラ

激しい爆音と共に、少女は地を蹴る。


 爆音が鳴り響く頃には、さっきまでそこいたはずの少女の姿はそこにはなかった。


 少女に気付いた時には、少女の拳が自分に向けられていた時である。


 魔王サタン軍、鉄壁の壁と称されるゴーレム部隊、アダマンタイト部隊、総勢30体はすでに、半分近く減っていた。


 そしてそれは、少女が部屋に現れてからわずか5分の出来事であった。


 少女は呟く。


「エ・セ」


 1体のゴーレムが砕け散ると同時に、少女の右拳に光が集まる。


 少女は呟く。


「カ・エ・セ・」


 2体のアダマンタイトが砕け散ると、少女が宙に舞い右手を下に向けて呪文を唱える。


「ルミナスレイン」


 少女の手の平から無数の光の雨が降りそそぎ、残りの部隊が砕け散る。


 地に降りたった少女は、辺りを見渡すこともなく、再び地を蹴り、階段を駆け上がっていくのであった。


 ーーーーーーーー


 リザードマンの言葉に一番衝撃を受けたのはカズトだった。


 戦略兵器レイラ…テトと同じぐらい聞きなれた名前だったからである。


「…被害状況は?」


 アリスは部屋の中央のイスに腰掛けながら、リザードマンに問いかける。


「ゴーレム部隊・アダマンタイト部隊共に戦闘不能。敵は現在10階層にて、我らリザード部隊と交戦中ですが、突破されるのも時間の問題かと」


 アリスの問いにリザードマンは答える。
 その間も、爆発音と振動はとまることはない。


「ここにくるのも時間の問題ってわけね」


 敵の正体がレイラだとわかったからか、アリスは落ち着いているようにみえる。


「召喚魔法で魔力を消耗しているけれど、まぁいいわ。報告ご苦労様。直ちに全軍撤退して頂戴」


 アリスはリザードマンに指示を出した。


 どうやらアリスは、レイラと戦うつもりらしい。


「待てアリス。まさかレイラと戦うつもりなのか」


 会話を聞いていたカズトは、慌ててアリスをひきとめる。


「えぇそうよ。何も問題ないわ。私を舐めた事を後悔させてやる」


 アリスはそう言うと、不敵な笑みを浮かべるのであった。


(どうする)


 カズトは心の中で呟きながら考える。


 100%そうと決まった訳ではないが、仮にこの世界がさっきまでプレイしていたゲームの中だとした場合、相手はあのレイラという事になる。


 アリスの実力は知らないが、レイラの実力は誰よりも知っている。何故なら、レイラを育てたのは自分である。


 だがあのレイラだとした場合、ある疑問が浮かび上がってくる。


(レイラが一人で…か)


 金髪ツインテールのゴスロリ少女。


 胸以外は、アリスとたいして変わらない少女なのだが、彼女は戦闘を好まない。


 そもそもレイラには、戦うというコマンドが存在しない。


 例えば、ベビースライムが現れると、必ず逃がし、攻撃しようとするテト達を叱り、両手を腰に当て、ほっぺたをふくらましながらこう言うのだ。


「弱い物いじめはゆるしません」


 とにかく優しい性格なのである。


 そんな彼女が、一人でここまで来ようとしているという事は、"バーサーカーモード"になっている可能性があるという事なのだが、しかし、バーサーカーモードになるには、ある条件が必要であって、カズトはそこにひっかかっているのであった。


 バーサーカーモードになる条件…それは、テトの身になにかあったという事だ。


「アリスここはいったんひくべきだ」


 正直言って、バーサーカーモードのレイラに、アリスが勝てるとは思えない。


「…私じゃ勝てないとでも言いたいの」


 アリスの目がするどくなる。


「信じてもらえるか解らないが、今のレイラはこの世界で誰よりも強い。例えるなら勇者テトを4人相手にするようなものなんだ」


 アリスに、睨まれようとひくわけにはいかない。何と言われようとレイラとだけは戦ってはダメだ。


 戦略兵器レイラに出会ったら直ぐ逃げろ!


 かつて勇者テトを罠にはめた盗賊の生き残りが広めた言葉であり、プレイしていたカズトは、この言葉を当然知っていた。


「とにかくいったんひいて対策をねるべきだ。町にでて情報を集めたり道具を買ったり…」


 そこまで言いかけて、カズトはある事に気付く。


「なぁアリス。旅人の書というのは持っていないのか?」


「旅人の書って何」


 どうやらアリスは知らないらしい。


「セーブする為の魔法アイテムだ」


 この世界がゲームの中なのだとしたら、旅人の書を使ってセーブできるはず。


 それなら一度レイラと戦い、負けたら次回逃げるという戦法をとればよいのでは?と考えたのである。


「初めて聞く言葉だわ。そもそもセーブって何なのよ」


 アリスは腕を組み、首をかしげる。


 カズトは解かりやすくセーブについてアリスに説明した。


「…そんな物、この世界には存在しないわ。いいカズト。命はみんな一つしかないの。死んだら終わりよ」


 アリスの話しを聞いたカズトは考えた。


 考えられる可能性は3つある。


 1つは、カズトがいるこの世界はゲームの中ではないという事。


 もう1つは、この世界はゲームの中だが若干違うという事。


 最後の可能性は、単純にアリスが知らないだけという事だ。


(考えても仕方がない…か)




 セーブができないのであれば、選ぶ行動は一つしかないのだから。と、カズトは結論を出した。


「ブラッシング」


 アリスはカズトに左手を向けて、呪文を唱えた。カズトがアリス?と、呼ぶのと同時に、ドアが吹き飛んだ。


 ドアは派手に吹き飛び、部屋の中を風が駆け回る。


 吹き飛んだドアから、人影が見えた。


 現れたのは、金髪ツインテールのゴスロリ少女、戦略兵器レイラであった。

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