世界を救った俺は魔王軍にスカウトされて
第一章3 レイラVSアリス
レイラは入り口から、ゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
レイラを見るカズト。
息一つ切らす事もなく、怪我という怪我も見当たらなかった。
(…やはり、あのレイラなのか?)
彼女の姿を見たカズトは、驚いていた。
ゲーム画面で見ていた通りの姿。
つまり、この世界はゲームの中だという可能性が、ぐんっとあがったという事だ。
ごくり、と、唾を飲み込みながら、再度レイラに目を向ける。
レイラの青い瞳の右目が、紫色に変わっている事から、バーサーカーモードになっている事はすぐに解った。
レイラはバーサーカーモードになっているだろうと想像していた為、あまり驚かなかったのだが、傷一つ負った形跡がない事に、衝撃を受けてしまう。
かつて勇者軍で、ゴーレムやアダマンタイトと戦った事はあったのだが、無傷という事は一度もなかったからだ。
(レイラ…)
バーサーカーモードとは、ここまで凄いのかと、改めて驚いていると、頭の中でアリスの声が聞こえてくる。
「いいカズト。結界魔法を使ったから、アイツにはアンタが見えないはず。その中なら安全だからジッとしてなさいよ」
どうやら先ほどのブラッシングという呪文は、姿を消す事のできる魔法らしい。
(ま、待て!アリス!?)
二人の間に割り込み、二人を止めようと試みるカズトであったが、その場から一歩も動けなかった。
「初めまして…私はアリス。そしてさようならレイラ。お父様の仇、ここでとらせてもらうわよ」
アリスは人指し指をレイラに向け、宣言する。
青く長い髪をなびかせ、金色の瞳でレイラを見るアリス。
金髪のツインテールを揺らし、青い瞳と紫色の瞳でアリスを見ていたレイラは、スンスンっと、鼻を鳴らす。
鼻を鳴らしたかと思ったら、急に下を向き、肩をふるわしながら拳を強く握りしめるレイラ。
「…する」
レイラは、何かを囁いた。
「…トの…匂い」
レイラは呟く。
「テトの匂い、テトの…匂い」
レイラの両目が、カッと見開かれた。
「テトを…テトを…返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」
レイラが叫ぶと同時に、部屋中に風が舞う。いや、吹き荒れると言った方が正しいかもしれない。
激しい爆風が部屋全体を駆け巡ると同時に、レイラの姿が消える。
アリスはサッと、右に拳を向けたのだが、レイラはその拳を両手で掴み、そのままアリスを宙に投げた。
「ルミナスレイン」
レイラは宙に右手を向け、呪文を唱える。
光の雨が宙に、否、アリスに降り注ぐ。
「…アテナストライク」
アリスは地面に左手を向けて、呪文を唱える。
無数の黒い炎が、レイラに放たれた。
二つの魔法が激しくぶつかり、パン!っと弾けると同時に、レイラが動く。
「ルミナスブレイク」
レイラの姿が消え、ダダダダタっという音が鳴り、音が鳴った地面から、次々と火花があがる。
(レイラ!?)
火花が上がった場所は、レイラが通った場所だと、カズトだけは気づいていた。
「…ちっ。ちょこまかと」
あまりの速さに、アリスはレイラの姿を見失ってしまう。
「…落ちて下さい」
疾風のごとく速さで、アリスの後ろをとったレイラは、炎を宿した右足で、かかと落としを繰り出し、アリスを地面に蹴り落とした。
ここぞとばかりに、レイラは呪文を詠唱する。
「右手には加護を、左手には慈悲を」
レイラの背後に、巨大な魔方陣が形成される。
(ま、まさか…まずい)
カズトは焦った。
レイラが唱えた呪文は、普通の魔法ではなく、詠唱魔法だったからだ。
「ルミナスヘブン」
レイラに蹴り落とされ、下の階にいるであろうアリスに向けて、光の光線が放たれる。
白い光…レーザービームは、魔王城を大きく揺らす。
(ア、アリス…おいアリス?無事か?返事を、返事をしろ!!)
聞こえているかは分からないが、カズトは思いっきり叫んだ。
さすがに連続魔法に疲れたのか、レイラは軽く息を切らしながら着地した。
バコン!
レイラが着地をすると同時に、地面が吹き飛び、再び宙を舞う事になったレイラ。
右手を突き上げ、レイラが居た場所から、アリスが飛びだしてきた。
(ぶ、無事だったか…)
「アンタ中々やるじゃない。チョットだけきいたわよ」
アリスはレイラに向かって、そんな事を言ったのだが、その言葉は、カズトには強がりにしか聞こえなかった。
ボンテージ服が少し破けていて、ちょっと焦げていたからである。
吹き飛ばされたレイラは、くるくる回りながら地面に着地する。
レイラは、アリスに話しかける。
「…テトがこの部屋にいたはずです。どこにいるのか、正直に話せば命まではとりません」
そう言いながら、アリスにいつでも攻撃できるよう右手を向ける。
「は?テト?知らないわよ…っていうか、まるで私じゃ勝てないみたいや言い方ね」
腕を組みながら、不機嫌そうにアリスが答える。
「見てなさい!今度はこっちからいくわよ。いでよゴン太」
アリスが地面に右手を置くと同時に、地面に魔方陣が形成される。
「アオーン!」
地面から現れたのは、大きなケルベロスであった。
(まさか、召喚魔法か?)
カズトは驚いた。
「さぁいくわよゴン太!アイスブレス」
凍てつくような氷の刃が、レイラを襲う。
グッと足に力を溜め、高く跳躍するレイラ。
「逃がすと思った?ゴン太!ファイアーブレス」
宙に逃げたレイラに、紅蓮の炎が襲う。
ゴォォ!と音をたてながら、向かってくる炎を見るレイラ。
「仕上げよゴン太!ウィンドブレス」
襲いかかる炎を、高速回転でかわしていたレイラに、突風が襲う。
流石に、風を回転でかわすことができず、レイラは天井へとぶつかってしまう。
(なるほど…ゴン太と呼ばれたケルベロスは、それぞれの頭で呪文が違い、氷・炎・風を使うことができるみたいだ)
天井にぶつかり、地面に落ちてくるレイラ。
追い打ちをかけるべく、アリスが唱える。
「ヘルズクラッシュ」
呪文を唱えたアリスが、天井に向かって両手をかかげると、両手から黒いレーザービームが放たれた。
ドゴォン!
アリスのヘルズクラッシュによって、魔王城の天井がなくなり、綺麗な星や雲が見える。
(……ど、どうなっている)
二人の戦闘を見ていたカズトは、驚いていた。
(…アリスとは、ここまで強いのか?)
バーサーカーモードのレイラと、ほぼ互角ではないか?と、カズトは考えていた。
(良かった…無事だったか)
空を見上げるカズト。
レイラの姿が見えてきたが、呪文の所為か、天井にぶつかった所為なのか、ゴスロリ服が破けており、白い右腕が見える。
レイラは額を切ったのか、血がでていた。
その姿を見たアリスは、勝ち誇ったように口元をゆるめた。
(マ、マズい。このままではマズイ!)
カズトは焦った。
このままではアリスかレイラ、どちらかが死んでしまう。
なんとかしなくてはと焦るが、カズトは結界の中であり、声も聞こえなければ、動く事すら出来ないでいた。
カズトが、そんな事を考えているなどと気付かない二人。アリスが動く。
「ゴン太!」
レイラがゴン太の攻撃をかわすと、アリスが接近戦でレイラを吹き飛ばす。
吹き飛ばされる瞬間に、レイラも魔法を使い、アリスを吹き飛ばす。
魔王城に、血だらけの少女が二人。
その光景を、ただ眺めている事しかできないカズト。
一体どのくらい、この攻防が続いただろうか。
しばらくすると、アリスが不機嫌そうな顔をしながら構えを解いた。
「ねぇあんた。まさかわざとやってるの?」
アリスがレイラに尋ねる。
尋ねられたレイラが黙っているのを見て、アリスが再び話しかける。
「アンタさっきから、一度もゴン太に攻撃してこないじゃない」
(……!?)
言われてカズトも気づく。
「…動物には、何の罪もありませんから」
レイラは警戒しながらも、アリスの問いに答える。それを聞いたアリスは、ク、クク…アッハハと、高笑いしだした。
「あ〜可笑し。アンタ気に入ったわ。ねぇ少し、話しをしましょうよ」
アリスの言葉を聞いたレイラは、警戒しつつだが構えを解いた。
「テトってヤツは、この部屋に本当に居なかったわ。この部屋に居たのは、私と部下のリザードマン。それと私のしもべだけよ」
アリスがカズトに向けて、パチンと、指を鳴らした。
パチンという音と共に、カズトの姿が露わになる。
「……!?」
カズトの姿を見たレイラの瞳が、見開かれた。
(…しもべって。誤解されるだろうが!し、しかし、良かった)
戦闘が終わった事にホッとするカズトが、レイラに自己紹介しようとしたその時である。
タタタタタタバッ!
「……お、おい!?」
「ちょ!?」
レイラがいきなり、カズトに抱き着いてきたのだった。
驚くアリスとカズト。
レイラは満面の笑みを向けて、こう言ってきたのだった。
テト…やっぱり居た!と。
レイラを見るカズト。
息一つ切らす事もなく、怪我という怪我も見当たらなかった。
(…やはり、あのレイラなのか?)
彼女の姿を見たカズトは、驚いていた。
ゲーム画面で見ていた通りの姿。
つまり、この世界はゲームの中だという可能性が、ぐんっとあがったという事だ。
ごくり、と、唾を飲み込みながら、再度レイラに目を向ける。
レイラの青い瞳の右目が、紫色に変わっている事から、バーサーカーモードになっている事はすぐに解った。
レイラはバーサーカーモードになっているだろうと想像していた為、あまり驚かなかったのだが、傷一つ負った形跡がない事に、衝撃を受けてしまう。
かつて勇者軍で、ゴーレムやアダマンタイトと戦った事はあったのだが、無傷という事は一度もなかったからだ。
(レイラ…)
バーサーカーモードとは、ここまで凄いのかと、改めて驚いていると、頭の中でアリスの声が聞こえてくる。
「いいカズト。結界魔法を使ったから、アイツにはアンタが見えないはず。その中なら安全だからジッとしてなさいよ」
どうやら先ほどのブラッシングという呪文は、姿を消す事のできる魔法らしい。
(ま、待て!アリス!?)
二人の間に割り込み、二人を止めようと試みるカズトであったが、その場から一歩も動けなかった。
「初めまして…私はアリス。そしてさようならレイラ。お父様の仇、ここでとらせてもらうわよ」
アリスは人指し指をレイラに向け、宣言する。
青く長い髪をなびかせ、金色の瞳でレイラを見るアリス。
金髪のツインテールを揺らし、青い瞳と紫色の瞳でアリスを見ていたレイラは、スンスンっと、鼻を鳴らす。
鼻を鳴らしたかと思ったら、急に下を向き、肩をふるわしながら拳を強く握りしめるレイラ。
「…する」
レイラは、何かを囁いた。
「…トの…匂い」
レイラは呟く。
「テトの匂い、テトの…匂い」
レイラの両目が、カッと見開かれた。
「テトを…テトを…返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!」
レイラが叫ぶと同時に、部屋中に風が舞う。いや、吹き荒れると言った方が正しいかもしれない。
激しい爆風が部屋全体を駆け巡ると同時に、レイラの姿が消える。
アリスはサッと、右に拳を向けたのだが、レイラはその拳を両手で掴み、そのままアリスを宙に投げた。
「ルミナスレイン」
レイラは宙に右手を向け、呪文を唱える。
光の雨が宙に、否、アリスに降り注ぐ。
「…アテナストライク」
アリスは地面に左手を向けて、呪文を唱える。
無数の黒い炎が、レイラに放たれた。
二つの魔法が激しくぶつかり、パン!っと弾けると同時に、レイラが動く。
「ルミナスブレイク」
レイラの姿が消え、ダダダダタっという音が鳴り、音が鳴った地面から、次々と火花があがる。
(レイラ!?)
火花が上がった場所は、レイラが通った場所だと、カズトだけは気づいていた。
「…ちっ。ちょこまかと」
あまりの速さに、アリスはレイラの姿を見失ってしまう。
「…落ちて下さい」
疾風のごとく速さで、アリスの後ろをとったレイラは、炎を宿した右足で、かかと落としを繰り出し、アリスを地面に蹴り落とした。
ここぞとばかりに、レイラは呪文を詠唱する。
「右手には加護を、左手には慈悲を」
レイラの背後に、巨大な魔方陣が形成される。
(ま、まさか…まずい)
カズトは焦った。
レイラが唱えた呪文は、普通の魔法ではなく、詠唱魔法だったからだ。
「ルミナスヘブン」
レイラに蹴り落とされ、下の階にいるであろうアリスに向けて、光の光線が放たれる。
白い光…レーザービームは、魔王城を大きく揺らす。
(ア、アリス…おいアリス?無事か?返事を、返事をしろ!!)
聞こえているかは分からないが、カズトは思いっきり叫んだ。
さすがに連続魔法に疲れたのか、レイラは軽く息を切らしながら着地した。
バコン!
レイラが着地をすると同時に、地面が吹き飛び、再び宙を舞う事になったレイラ。
右手を突き上げ、レイラが居た場所から、アリスが飛びだしてきた。
(ぶ、無事だったか…)
「アンタ中々やるじゃない。チョットだけきいたわよ」
アリスはレイラに向かって、そんな事を言ったのだが、その言葉は、カズトには強がりにしか聞こえなかった。
ボンテージ服が少し破けていて、ちょっと焦げていたからである。
吹き飛ばされたレイラは、くるくる回りながら地面に着地する。
レイラは、アリスに話しかける。
「…テトがこの部屋にいたはずです。どこにいるのか、正直に話せば命まではとりません」
そう言いながら、アリスにいつでも攻撃できるよう右手を向ける。
「は?テト?知らないわよ…っていうか、まるで私じゃ勝てないみたいや言い方ね」
腕を組みながら、不機嫌そうにアリスが答える。
「見てなさい!今度はこっちからいくわよ。いでよゴン太」
アリスが地面に右手を置くと同時に、地面に魔方陣が形成される。
「アオーン!」
地面から現れたのは、大きなケルベロスであった。
(まさか、召喚魔法か?)
カズトは驚いた。
「さぁいくわよゴン太!アイスブレス」
凍てつくような氷の刃が、レイラを襲う。
グッと足に力を溜め、高く跳躍するレイラ。
「逃がすと思った?ゴン太!ファイアーブレス」
宙に逃げたレイラに、紅蓮の炎が襲う。
ゴォォ!と音をたてながら、向かってくる炎を見るレイラ。
「仕上げよゴン太!ウィンドブレス」
襲いかかる炎を、高速回転でかわしていたレイラに、突風が襲う。
流石に、風を回転でかわすことができず、レイラは天井へとぶつかってしまう。
(なるほど…ゴン太と呼ばれたケルベロスは、それぞれの頭で呪文が違い、氷・炎・風を使うことができるみたいだ)
天井にぶつかり、地面に落ちてくるレイラ。
追い打ちをかけるべく、アリスが唱える。
「ヘルズクラッシュ」
呪文を唱えたアリスが、天井に向かって両手をかかげると、両手から黒いレーザービームが放たれた。
ドゴォン!
アリスのヘルズクラッシュによって、魔王城の天井がなくなり、綺麗な星や雲が見える。
(……ど、どうなっている)
二人の戦闘を見ていたカズトは、驚いていた。
(…アリスとは、ここまで強いのか?)
バーサーカーモードのレイラと、ほぼ互角ではないか?と、カズトは考えていた。
(良かった…無事だったか)
空を見上げるカズト。
レイラの姿が見えてきたが、呪文の所為か、天井にぶつかった所為なのか、ゴスロリ服が破けており、白い右腕が見える。
レイラは額を切ったのか、血がでていた。
その姿を見たアリスは、勝ち誇ったように口元をゆるめた。
(マ、マズい。このままではマズイ!)
カズトは焦った。
このままではアリスかレイラ、どちらかが死んでしまう。
なんとかしなくてはと焦るが、カズトは結界の中であり、声も聞こえなければ、動く事すら出来ないでいた。
カズトが、そんな事を考えているなどと気付かない二人。アリスが動く。
「ゴン太!」
レイラがゴン太の攻撃をかわすと、アリスが接近戦でレイラを吹き飛ばす。
吹き飛ばされる瞬間に、レイラも魔法を使い、アリスを吹き飛ばす。
魔王城に、血だらけの少女が二人。
その光景を、ただ眺めている事しかできないカズト。
一体どのくらい、この攻防が続いただろうか。
しばらくすると、アリスが不機嫌そうな顔をしながら構えを解いた。
「ねぇあんた。まさかわざとやってるの?」
アリスがレイラに尋ねる。
尋ねられたレイラが黙っているのを見て、アリスが再び話しかける。
「アンタさっきから、一度もゴン太に攻撃してこないじゃない」
(……!?)
言われてカズトも気づく。
「…動物には、何の罪もありませんから」
レイラは警戒しながらも、アリスの問いに答える。それを聞いたアリスは、ク、クク…アッハハと、高笑いしだした。
「あ〜可笑し。アンタ気に入ったわ。ねぇ少し、話しをしましょうよ」
アリスの言葉を聞いたレイラは、警戒しつつだが構えを解いた。
「テトってヤツは、この部屋に本当に居なかったわ。この部屋に居たのは、私と部下のリザードマン。それと私のしもべだけよ」
アリスがカズトに向けて、パチンと、指を鳴らした。
パチンという音と共に、カズトの姿が露わになる。
「……!?」
カズトの姿を見たレイラの瞳が、見開かれた。
(…しもべって。誤解されるだろうが!し、しかし、良かった)
戦闘が終わった事にホッとするカズトが、レイラに自己紹介しようとしたその時である。
タタタタタタバッ!
「……お、おい!?」
「ちょ!?」
レイラがいきなり、カズトに抱き着いてきたのだった。
驚くアリスとカズト。
レイラは満面の笑みを向けて、こう言ってきたのだった。
テト…やっぱり居た!と。
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