魔法×科学の反逆者
第1章 皇帝の眼
たじろぐ男を前にして、レオンが覚醒する。
右眼に宿す六角形の魔法陣を見たジャンヌは、驚きを隠せないでいた。
「ふ、ふざけるな」
「ふざける?何を言っているんだお前は」
見覚えがあるのか、もしくは、聞いた事があるのか、男は焦りを隠せずにいた。
(まさかとは思ったが、こんなに早く目覚めるとは…)
遺伝という言葉がある。
男女が結婚をし、子供を授かった場合、大抵の子供は親に似るという事なのだが、魔法特性も似る傾向があった。
しかし、強大な力を持つ魔法全てが似るのかといったら、そうではない。
例えば、病院で出会った桐島拓斗という少年は、時間旅行者である。
彼は、その日をやり直す事ができる異能とも呼ぶべき呪われた魔法をもっているのだが、妹が死んだという話しから、この呪われた魔法は彼にしかない魔法だという事が分かるだろう。
もしも妹も同じ時間旅行者だとするならば、この世界の時間軸がずれてしまうからだ。
そういった事から、必ずしも遺伝するとは限らないのだが、レオンの話しを聞いたジャンヌはもしかしたらと考えていた。
レオンと出会った時、彼は泣いている理由を教えてくれた。
"妹が死んだ、いや、殺された"と。
彼等の父である人物の、死の宣告という魔法によって、レオンの妹であるレイナは今日が命日になる予定だったのだ。
つまり、父である人物が洗脳魔法を使えるのであれば、遺伝的にレオンやレイナにも使える可能性があるという事である。
しかし、小学7年生であり、僅か15歳の少年が、洗脳魔法を開眼させた実例など無い。
「化け物め…」
あの男の態度から、あの男は皇帝の眼を知っているのだろうと判断するジャンヌ。
しかし、レオンからしてみれば、一体何に怯えているのかが分からなかった。
わざわざ左手で、両目を隠すようにしている男は、左手の指の、隙間と隙間の間からこちらを覗きこんでいる。
「化け物と分かっているなら話しは早い」
怯え出した理由が分からないレオンであったが、そんなそぶりを一瞬でも見せたらダメだと考え、あえて強気な態度で出る。
「貴様はこれから死ぬ。苦しみながら死んでいくがいい」
強く、傲慢に、大胆不適に、自分は全てを理解している。そんな態度と言葉を使うレオン。
「…ん?な、なんだ!?」
しかし、その態度は長くは続かない。
何故なら、男は両膝をつき、急に苦しみだしたのだった。
「な、何がどうなっている」
近づいて様子を見ようにも、これが演技であり、罠かもしれないと考えると、近づく訳にはいかなかった。
「ぐぐぐお…ぉああ」
喉をおさえ、まるで毒にやられたかのように地べたを這いずり回っている男。
しばらく経つと、男はピクリとも動かなくなった。
「やはりか…」
「ジャンヌ?何か知っているのか?」
レオン同様に、その光景を見ていたジャンヌが、確信を得たような表情とともに、男の元へと歩み寄って行く。
男の表情を見たジャンヌは、思わず目を逸らしたくなる衝動に襲われたが、そうもいかないと自分に言い聞かせ、そっと男の両目を閉じさせた。
「レオン。この男は死んだんだ」
「死んだ?なぜだ?俺は何もしていない」
全くもって見に覚えがないレオンは、戸惑いを隠せなかった。
「言葉だ」
「言葉?」
「お前は言ったな、苦しみながら死ぬ、と」
「あ、あぁ。しかし、それはフェイクであって…ま、まさか…」
ようやくレオンも理解した。
この男は、レオンの言葉を聞いた所為で、死んだのだと。
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