魔法×科学の反逆者

伊達\\u3000虎浩

第1章 レイの願い⑤

 
 これは…まさか、レイの記憶の中なのか?


 よ、よせ!やめろ!


 レオンはレイの前に立って、両手を真っ直ぐ横に伸ばして、レイの行く手を遮った。
 しかし、レオンの言葉や姿がレイには見えていないみたいであった。


 レオンが見ているなか次々と、周りの人達を切り殺していくレイに、思わず目を背けるレオン。


「ば、化け物め…黒き炎よ」


 右手から放たれる炎を、右手に持っているナイフで斬り、ゆっくり男に近づくレイ。


【エネルギーヲホジュウシテクダサイ】


 少し歩いた所で、そんな警告音が鳴った。


「…!?そうか、お前はロボットなのか」


「お、おい!早くしないとこの辺もヤバうぎゃあぁあ」


 レイの目の前、レイに話しかけてきた男の後ろで、若い女性が火柱の餌食となった。


「…だとしたら何ですか?」


「なぜ、あんなヤツの味方をする?」


 なぜ?


 そう、なぜなのか…?


 頭で処理をしようにも、答えは出てこない。
 私はロボットだ。好きという恋愛感情など当然ない。


 では、何故なのか?
 使命感か?しかし、私はお掃除ロボットであって、戦闘ロボではない。


 待て…そもそもお掃除ロボットであるはずの私に、なぜブースターが付いているのか?
 ブースターが付いていなければ、リミッターを解除するという事はおきないはずだ。


 私はお掃除ロボットではないのか?


「隙あり!!光の棺よ」


「……!?」


 一瞬の隙をつかれ、私は見えない何かに閉じ込められてしまう。


「ハァハァ…これで身動きとれまい。後は壊して…!?」


 そう言って、男が少し歩いた所で天井が崩れ、瓦礫が襲いかかった。下敷きになった男を見下ろしながら、私は先を急ごうとしたのだが…魔法は解けていない。


「行きて…いるのですか?」


【カツドウヲテイシシマス/カツドウヲテイシシマス】


 私の記憶はここで終わってしまう。


 ーーーーーーーー


 何がどうなっている。


 レオンが目を開けると、自分の右手と床が目に入る。


 夢を見ていたのだろうか?


 さっきまで誰かと戦っていた…戦っていた!?


 バッと、顔を前に向けるレオン。


「嘘だ…そんな。嘘だ」


 誰かに心臓を掴まれているかのようだ。


 高鳴る鼓動。


 押し寄せる胃の中の物を吐き出してしまう。


「レオ…無事で…よ…かっ…」


「なぜ、こんな…事に…」


 溢れ出す涙を抑えきれない。


 レオンの目の前には、レイの頭だけが落ちていたのであった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品