魔法×科学の反逆者

伊達\\u3000虎浩

第1章 姉妹

 
 風呂場で一悶着あったり、食事で一悶着あったりと、いつもの静かな食事とは全く違った。


 レイナを入院させた日からレオンは、一人で食事をする事が多くなり、その為、レイを起動させない日もしばしあった。といっても、レイはレオンの言う事をあまり、いや、かなり聞かない。


「レイ。ご苦労であった」


「……私の仕事ですからこのぐらい何でもありません」


 食後のコーヒーを入れてもらった所で、レオンはレイに、労いの言葉をかけた。
 久しぶりに起動させたが、特に問題は無さそうだと考えながらレオンはレイに、休むよう指示を出す。


「…お断りします」


「・・・一応、理由を聞こうか」


 クスクス笑うジャンヌをチラリと見てから、視線をレイに向ける。


「では、お聞きしますが、飲み終わった後の食器の後片付けや、ジャンヌ様がお休みになられる部屋などは、どのようになされるおつもりですか?」


 機械とは思えない滑らかな言葉使い。
 両手を前の方で組みながら、レイは続ける。


「まさかレオンの部屋で一緒になどとお考えなのですか?」


 うっすら開けたレイの目からは、殺気すら感じさせられた。


「…俺たちと一緒に休むといい」


「承知致しました」


 レイナを入院させたあの日から、本当にレイが起動していなかったかは、レオンには分からない。もしかしたら、レオンが気づいていないだけで、ずっと起動していたのかもしれない。


 しかし、それはレイの望みなのだろう。
 休む時は休む。起きていたい時は起きる。
 人間と同じ様にしていたいという気持ち。


 レオンがそんな事を考えていると、レイから少しいいですか?と、質問される。


「レイナはいつ頃お帰りになられますか?」


「……!?」


 当然とも言える質問であった。
 レイはレイナを姉のように慕っており、レイナが入院すると聞いた日には、自分も入院するんだと言って、レオンやレイナを困らせたぐらいである。


 その時は、機械が沢山ある部屋に、お前を連れてはいけないという理由をつけ、機械であるレイにとって、最も残酷な言い方で我慢させる事が出来たが、流石に誤魔化せないだろう。


「……レオン?」


 どうする?と悩むレオンに、中々返事をしない事を不思議に思うレイ。


「なぁレイ。少し待っててくれないか?」


 悩むレオンに助け舟を出したのは、ジャンヌであった。当然、レイは何故ですか?と理由をたずねた。


「先に食器などを洗っててくれ。私は今日はレイナの部屋に泊まらせて貰おうかな…何ならレイ!お前も来い。レオンに夜這いをかけられてはたまらんからな」


「…するものか。すまないレイ。食器の後片付け終わったら、レイナの部屋を軽く換気してきてくれ。終わったら呼びに来ること」


「……了解しました」


 本当なら直ぐにでも聞きたい気持ちをぐっとこらえるレイ。メイドとしての誇りが、そこにはあった。


「レオン。お前の部屋を先に見せてくれ」


 レオンの部屋で少し話そう。そういう意味だろうと解釈し、レオンはジャンヌを連れ、自分の部屋へと行くのであった。

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