世界は「 」にあふれている
第1章 7
伊織は考える。
「一緒にシャオロンを殺しませんか?」
この言葉の意味は誰だって解る。
しかし、言葉の理由が解らない。
どうする・・クソ。
伊織は女性に向けて、回し蹴りを繰り出した。
よどみない動作で、あたればアバラ骨をへし折る威力、全力の回し蹴りを繰り出したのだが、女性はバク宙して攻撃をかわすと、思いっきり地面を蹴って、伊織に突進する。
伊織は回し蹴りをかわされ、突進してきた女性は、伊織の額に拳銃を突きつけた。
「相打ちって事でいいですか?」
「あぁ。あんたの実力は、だいたい理解した」
伊織は回し蹴りと同時に、上着の胸ポケットに手を突っ込み、銃を抜かずに女性に向けて、構える。
上着を貫通させて、発泡するつもりだったが、相手はそれをよんで、退がるのではなく、前に突っ込んできただけでも、相当修羅場をくぐっている事がわかる。
「銃をおろします。全く、噂通りの人ですね」
「・・噂?」
その言葉は、伊織にとってマズイ事につながる恐れがある。
今は任務中で、噂の内容によってはシャオロンどころではない。
「はい。及川あいをご存知ですね?」
「・・あぁ。功夫少女及川あいは、元クラスメイトだった。お前はあいつの知り合いか?」
誤魔化そうと考えていた伊織だったが、馴染みある名前がでた為、誤魔化す事をやめ、正直に話すフリをした。
クラスメイトの知り合いなのであれば、正直に話すべきなのかもしれない。
しかし、それが本当だと誰が証明できる?
嘘だったらどうする?
すまんで済む問題ではない。
なぜなら。
俺は理由も解らないまま、人を殺そうとしているのだから。
しかし、情報を集めないとどうしようもないのが、現状であり、この女から聞き出す必要がある。
伊織は、女性を改めて見る。
身長は155センチぐらいか。
胸はそこそこ、長い黒髪、服装がチャイナドレスなのは気になるが。
「伊織さん!!聞いてますか?」
「すまない。もう一度いいか?」
「あいから聞きました。あいより強い方なら私も安心して任務に集中できますし」
「任務??」
女性の声を遮り、気になった単語に思わず質問してしまう。
伊織に指摘され、女性は、しまったと顔にだす。
「・・聞かれてしまったからには、仕方ありません。私は中国から潜入してきました、メイと申します。所属機関などは聞かない方が身の為です」
「なるほど。噂に聞く所属機関CPんぐ」
メイは伊織の口元を右手で全力で塞ぎにかかる。
「全く。狂犬だと聞いていましたが、これでは駄犬ですね。それ以上は言わない方が身の為です」
メイの目が冗談ではないと悟った伊織は、コクリと頷いた。
「一つだけ聞いてもいいか?シャオロンを何故殺る?」
「・・・いずれ話します。それよりも今はここを離れた方がいいでしょう」
先ほどの女性の悲鳴を聞いて、警察官が駆けつけてくるかもしれない。
メイの判断は正しい。
それに、伊織は待ち合わせをしている。
「それには賛成だが、あいにく俺は行かないといけない所がある」
「なつきの所ですよね?」
なるほど。
これで謎が解けた。
なつきとあいが、俺に会うようメイを仕向けたというわけだ。
あいから俺の事を聞き、なつきからここで待ち伏せをするよう教えてもらっていたというの事だったのだが、運悪くチンピラにでもからまれたのだろう。
さっきのやつらは無関係だと断言できる。
動きが素人だし、プロだったなら、さすがにプロ3人を相手して、穏便にすませる事はできなかった。
メイの裏にある組織。
そして知人。
しかし、まだ安心はできない。
なつきとあいは俺とは違い、世界的に有名なやつらだ。
なつきは類い稀な頭脳で、数々の難事件を解決、または作戦の指揮をとり、テロリスト殲滅に貢献。
あいは武道家として、数々の賞をとっている。
あいが何故あの学校にきていたのかは、知らないし興味がない。
つまり、メイがシャオロン側の人間で、俺に接触し、馴染みの二人の名前で、俺を油断させる作戦かもしれない。
だが、それはすぐに解る事だ。
なぜなら、今からなつきに会いに行くのだから。
「少しでもおかしな真似をしたら、殺す!いいな?」
「殺すからなと言われて、はいと答えるのも変な話しですが、それで構いません」
伊織はメイを連れて、なつきの所へと向かうのであった。
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