アイドルとマネージャー

伊達\\u3000虎浩

特別篇…成就荘 活動記録その①

 
 皆さん。


 初めまして。


 成就荘203号室 水嶋 遥と申します( ^ω^ )


 色々あって、アイドルを目指す事になった私は、現在は寮生活を送りながらアイドルを目指しています。


 ん?


「ク、ク、ク。我じゃ」


「開いてるよー」


 ドアがノックされたので入室の許可を出すと、黒いゴスロリ服に身を包んだ女の子が部屋の中に入ってきた。


「どうしたの?」


 彼女は成就荘201号室に住んでいる結城 ひかりちゃんっていいます。


 何か用?と尋ねる私。


 結城ひかりちゃんは、バラエティータレントです。


 正確にはタレントさんだけど、バラエティーを中心に活動しているから、バラエティータレントって呼ばれてます。


 質問した私に対しらひかりちゃんは額に右手をあてながら、左手をサッと私の前に突き出してきた。


「ク、ク、ク。さぁ!特と見るがよい!」


 バッ!と、紙切れを差し出すひかりちゃん。


 どれどれ〜っと、紙切れに目を通す私。


「ひ、ひかりちゃん!?」


「うむ」


 ガシッと、熱い握手を交わす。


「どれ。仲間を増やすとしよう」


「おーー!!」


 そんな訳で、私たちは元気良く部屋を後にしました。


 ーーーーーーーーーー


 成就荘202号室のドアをノックする。


「………はい」


 ガチャッとドアを開け、中からひょこっと顔出したのは、相川あゆみちゃんという女の子。


 あゆみちゃんは、声優さんです。


 何のアニメに出演しているの?と、尋ねたところ、まだ出演していない。と、返された事があり、恐らく新人さんなんだと思います。


「あゆみちゃん!あゆみちゃん!今日ヒマ?」


「…………特に予定はない」


 無表情というか、クールというか、落ち着いているというか、とにかくおとなしい女の子です。


「ほぉ…ならば我々に付いてくるがよい」


「………分かった。着替えて来る」


 あゆみちゃんはそう言って、ガチャッとドアを閉めた。


 特に何も伝えてませんが…ヒマだったのでしょうか?


「やっぱりさ。皆んなに声をかけようよ!」


「ク、ク、ク。きっと奴ら泣いてしまうぞ」


 こうして私たちは、他の住人にも声をかける事にしました。


 ーーーーーーーーーー


 成就荘205号室。


 ここには天使が住んでいます。


「う〜ん…うるさいわね…何よ?」


 うさぎの着ぐるみんを着た天使は、右手で目元を擦りながらドアを開けてくれました。


 左手にはクマのぬいぐるみ。


 うん!


 マジ天使♡


 けど、この天使ちゃんは、私やひかりちゃん、あゆみちゃんと同い歳です。


 名前は 天使 ゆず。


 天使と書いて、あまつか って呼びます。


 ゆずちゃんの見た目は小学生で、ゆずちゃんはそれがコンプレックスらしいけれど、どうかそのままでいてほしいものです。


 そうそう!こう見えてって言ったら失礼ですが、ゆずちゃんは女優さんです。


 数々のドラマや映画に、子供役として出ています。


「ゆゆゆ、ゆずぢゃん!きょきょ、今日ビバかな?」


「は?ビバ?っていうか、ちゃんと喋りなさい!ほら、ヨダレ拭いて!」


 そう言って、ボックスティッシュを手渡してきました。


 ゆずちゃんが可愛いすぎて、私はついついこうなってしまうのです。


「ク、ク、ク。我らはお主を勧誘しに来たのじゃ」


「…勧誘?」


 ひかりちゃんはそう言うと、サッと、ゆずちゃんの顔の前に、先ほどの紙を差し出します。


「…わかったわ。支度するから下で待ってて」


「はぁ〜い!」


「残すは後三人じゃな。ほれ、行くぞ」


 ーーーーーーーー


 成就荘206号室。


「あら?二人してどうしたの?」


 ガチャっとドアを開け、何かよう?と、尋ねてきたのは、私たちアイドルグループリーダーの 橋本 結衣ちゃんです。


 元々マネージャーだった結衣ちゃんは、現在私たちを担当しているマネージャーに後を引き継ぎ、社長秘書として働いていました。


 それを辞めて、私たちとアイドルを目指す事になり、私の同期ってヤツになるらしいです。


 ゆずちゃんとは元々同級生で、現在のマネージャーと、プロダクションの社長とは、同じ高校の先輩後輩の関係になります。


「うん。結衣ちゃんは今日ヒマ?」


「そうね…ヒマと言えばヒマだけど?」


「はっきりせい!はっきりと」


「…やる事はあるけど、急ぎって訳じゃないから、用件次第って事よ」


 なるほど。


 つまり私たちの用件によって、その日の予定が変わるって事だね。


「ひかりちゃん!」


「うむ。コレを見よ!!」


 まるで、印籠を掲げるかのように、ひかりちゃんは紙切れを差し出した。


「…すぐ行くわ」


 結衣ちゃんは即答だった。


 ま、当然だね!


 とまぁ以上の皆んなで、アイドルを目指しています(๑>◡<๑)


「残すは二人じゃな」


「皆んな喜ぶね〜」


 ーーーーーーーー


 成就荘204号室。


「どうされましたか?」


 ヒョコっとではなく、スッと部屋の中から現れたのは、メイド服に身を包んだ女の子です。


 いえ、彼女はロボットなので、女の子と呼んでいいのかは分かりません。


 女型のロボット…と、呼ぶべきなのでしょうが、ロボットと知らなければ普通の女の子と間違われても仕方がないぐらい凄いので、私たちは女の子として彼女を扱っています。


 あっ!名前はレイっていいます。


 成就荘の家政婦さんみたいな感じですが、一緒に暮らしている人を家政婦さんと呼ぶのかは疑問です。


 ひかりちゃんと私は皆んなにしたように、レイちゃんにも同じようにしました。


「…せっかくですが、レイは行けません」


「え?」


 まさか断る人物がいようとは…と、固まる私。


「この家を留守にして、万が一空き巣があっては困ります。ですので、レイはお留守番させて頂きます」


「この家に空き巣はこないと思うけど?」


 元々学生寮だったこの家は、とても古く、あまり言いたくはないですが、ボロボロです。


 狙われる対象にもならないと思います。


「油断が命とり…と、レイは申し上げます」


「うむ。我のお宝を狙う輩がくるやもしれぬ。良いな?しかと頼んだぞ!」


「承知致しました」


 そんな訳で、レイちゃんはお留守番です。


 ーーーーーーーーーー


 リビングに集まった私たち。


「あれ?修二さんは?」


 修二さんとは、私たちの担当マネージャーです。


 本名は 霧島 修二。


 かつて私のお姉ちゃんの担当マネージャーだった人で、結衣ちゃんの後輩です。


 いえ、高校時代では修二さんが先輩で、結衣ちゃんが後輩で、仕事場では、修二さんが後輩で、結衣ちゃんが先輩です。


 ややこしい話しです。


「修二さまは、本日ひかりさまの番組打ち合わせだと、おっしゃっておりました」


「ふ〜ん。ん?って、ひかり!?あんたは行かなくてよかったの?」


 ゆずちゃんが驚きながら、ひかりちゃんに尋ねます。


「ク、ク、ク。我は夜を支配せし者なり。下僕であるアキラに任せておけば良いのじゃ」


「下僕ってwwもぉ、ひかりちゃんたら…ははは」


「…………まさか嘘?」


 バッ!と、レイちゃん以外の全員が、発言主であるあゆみちゃんに振り向きます。


「しゅしゅ、修二が嘘?ううう嘘をつく理由なんてあるのかしら?」


「デートだったりして…なぁんてね(笑)」


 何故、デートをするのに嘘をつくのか?


 浮気、不倫など様々な理由がありますが、修二さんは独身で彼女もいません。


 つまり、私は冗談を言ったのです。


「バ、バカ!?」


 うわ!?マジ天使♡


 ゆずちゃんが何故か慌てながら、私の口に手をあててきました。


「……デ……デート?は、はははは。ああ、あ、あの修二が…デデデ、デートですって?」


「ゆゆゆ、結衣ちゃん、くる、くるびぃよ」


「ゆ、結衣!遥が死んじゃうから!!」


「はぁ、はぁ、はぁ、じょ、冗談だよ」


 顔を赤くする結衣ちゃん。


「ご、ごめんなさい」


 うん。可愛い♡


 けど、どうかやめてね…苦しいから。


「皆さま。時間は大丈夫ですか?と、レイは助言します」


「あ!?ほ、ほら!さっさと行くわよ!」


 レイちゃんの助言を受け、私たちは家を後にしました。


 ーーーーーーーーーー


 数十分後。


「ク、ク、ク。今宵は宴じゃ」


「そうだねぇ〜♡」


「もう一回やる?」


「………ルール違反」


「そうよ。ここに書いてあるじゃない」


 と、ゆずちゃんの意見になぜ反対なのかを、結衣ちゃんが説明します。


 お一人様。一個まで。


 そう。私たちはスーパーに、卵を買いに来ています。


「…………安い」


「1パック60円って、ヤバイよねー」


「はぁ…」


「どうしたの?ゆず?」


「お肉食べたい…魚でもいいわ」


 ぐぅ〜。


 アイドルを目指す私たちは、お金があまりありません。


 というのも、まだデビューすらしていない為、収入がないのです。


 なのに、バイト禁止とかあり得ないです。


「仕方がないヤツらよ…ホレ」


 と、ひかりちゃんが奮発してくれました。


 唯一収入があるひかりちゃん。


「鶏肉を買って、後はケチャップと玉ねぎを…」


「オムライスだね!」


「………オムライス♡」


 レジに並び、各々が会計を済ませ、寮に戻る私たち。


 ーーーーーーーーーー


 成就荘 玄関前


「おかえりなさいませ。ご主人様」


 語尾を伸ばす事もせず、るん♪とか、キャピ♡とかという事もなく、冷静に頭を下げてくるレイちゃん。


「ただいま。修二は?」


「まだ戻って来ておりません。朝のお帰りでしょうか?」


「………!?」


 結衣ちゃんの目が怖いです。


 レイちゃん。どうかやめて…結衣ちゃんが怖いから。


「フ、フン。そ、そん時は紐か何かで縛って、私の部屋に連れて来て頂戴」


「かしこまりました」


 じょ、冗談だよね?


 縄じゃないところがリアルです。


「…さ、昼ごはんにしましょう」


 ゆずちゃんもそれを感じたのか、話題を変えます。


「今日の当番は…ゆずちゃんだね!」


「ぐっ!わ、私?」


 私たちは寮生活をしていく中で、当番というものを作っています。


 基本的にはレイちゃんがやってくれるのですが、ご飯と洗濯だけは私たちの当番制です。


 ご飯に関しては、修二さんがスキルをあげておけというマネージャー命令からであり、洗濯に関しては、結衣ちゃんからのリーダー命令です。


 お料理番組に備えての日々の特訓。ということで、料理に関しては分かります。


 洗濯に関しては、下着などの自己管理って言ってたけど…間違えない気がするんだよね?


「ほら、遥!帰るよ」


「は、はぁ〜い」


 そんなわけで、ハッピータイムの幕開けです。


 ーーーーーーーーーー


 リビングにて。


 冷蔵庫の前にレイちゃんが立ち、台所前にはゆずちゃんが立ちます。


 レイちゃんはアシスタントとして、ゆずちゃんの後ろに立っており、私は見学です。


 可愛い天使を間近で見ないなんて、人生を損してますよ!


 小さな可愛らしい手で、子供用の刃物を握るゆずちゃん。


 鼻血が出そうになってしまいます。


「………く、屈辱だわ」


 ぐぬぬっと、ゆずちゃんは震えながら、レイちゃんを呼びます。


「……どうぞ」


「え、えぇ。ありがと」


 台所の下に、ゆずちゃん専用の台を置くレイちゃん。


 こうしないとゆずちゃんは、届かないのです。


「……言っとくけど遥。写メったら怒るわよ」


「ななな、なんで!!!」


 天使を撮ろうとした私は、クギをさされてしまいます。


 可愛いエプロン姿の天使が、私の為に料理を作ってくれている。


 写メりますよね?


「ローアングルから撮るのがダメなの!!」


 べべべ、別に、スカートの中を撮ろうとか思ってませんよ?


「撮るんだったら、ほら、コレを使って、上から撮りなさい」


 と、ゆずちゃんから手渡されたのは、伸ばし棒っていうアイテムです。


 ゆずちゃんは嫌がっていましたが、私は思うのです。


 想像して見て下さい。


 天使が台所に立ち、料理を作っている。


 可愛いエプロン姿に、長い髪が邪魔にならないようにと、料理の為だけにポニテにしている姿。


 台所に立つ天使の足元には台が置いてあり、それがないと届かないというこの愛しさ。


 ブッ!?


 バタン。


「ちょ、は、遥?!レイ!」


「…鼻血ですね」


「鼻血?はぁ…レイ。」


「かしこまりました。ソファーに寝かせておきます」


 そこから私は記憶がありません。


 ーーーーーーーーーーーー


 ん?


 何やら騒がしい。


「ぐぬぬ。水瀬りの…おそるべし」


「仕方がないんじゃない?」


「………彼女は強い」


「ちょ、だ、誰が!?」


 ソファーに横になっていた私は、皆んなの声で目が覚めました。


「……どうしたの?」


「遥?大丈夫なの?」


「結衣ちゃん大丈夫だよ」


「良かった。そうだ。オムライス食べる?」


「食べるーー♡それよりどうしたの?」


 レイちゃんが、オムライスを温めに行ってくれます。


 私は皆んなが何をしているのかが気になり、ソファーから立ち上がりました。


「コレよ。コレ」


 コンコンと、雑誌らしきものを叩く結衣ちゃん。


 どれどれ〜と、覗く。


 エンタランキングという雑誌であった。


「コレって確か、色々なランキングが載ってる雑誌だよね?」


「………そう」


「街頭インタビューや、ネットにアンケートの募集をかけたり、編集部で話しあったりして決めるランキングよ」


「ふ〜ん。それで?何で騒いでいたの?」


「コヤツじゃ!我の宿敵!水瀬りの」


 水瀬りの。


 現役女子高生アイドルにして、アイドル界のトップに君臨しています。


 どれどれ〜と、眺めると皆んなが騒いでいた理由が分かりました。


 憧れる女性 第一位。


 付き合いたい女性 第一位。


 奥さんにしたい女性 第一位。


 などなど。


 女子高生を奥さんにって…男性の気持ちが分かりません。


 私は見たままの感想を告げます。


「う、嘘だよね?」


 ほぼ独占状態のランキング。


「事実よ」


「す、凄い……ん?あれ?」


 ふと、何かに気づいた私。


『……!?』


 ビクビクっとする二人。


「ひかりちゃんもゆずちゃんも、ランキングに載ってるじゃん!」


 このランキングに載るのがどれだけ難しいか。


 素人の私でも分かります。


「は、遥!?や、やめて!!」


 と、ゆずちゃんが言いますが、何が嫌なのか、私には分かりません。


 だってそうですよね?


 たくさんいる芸能人の中で、ゆずちゃんはトップに選ばれたのですから。


 トップ。


 つまり、1位です。


「え〜っと、何々…」


 天才だと思う子役 


 第1位 天使 ゆず(21)


「うぎゃぁぁぁあああ!!だ、誰が、誰が子役だぁぁぁあ!!!」


 と、ゆずちゃんは天に向かって叫びます。


「はぁ、はぁ、はぁ…はぁ…ぐ、ぐす。ぐす。ゆ、結衣〜。゜(゜´Д`゜)゜。」


「はいはい。ほら遥。あんまりいじめちゃダメよ」


「い、いじめてないよ〜本当に凄いと思ってるんだから」


「ク、ク、ク。流石は我が眷属よ。我も素直に負けを認めようぞ」


「…………尊敬」


「あ、あんたらね…私の下を見てみなさいよ」


 ぐぬぬっと言いながら、ゆずちゃんが指示するので、ん?と、私は下を眺めます。


第2位………(8)


第3位………(7)


第4位………(5)


第5位………(10)


第6位………(6)


「皆んな、皆んな、中学生以下じゃない!!」


「あ、そういう事か…」


 ゆずちゃんを筆頭に、ズラ〜っと名前が並ぶ。


 成人は、いや、中学生以上は、ゆずちゃんだけでした。


「クク…クク…」


 口元を手で押さえるひかりちゃん。


 ブチ。


「…ひ、か、り〜?アンタは笑っている場合なのかしら?」


「………!?」


 ピタっと、ひかりちゃんの動きが止まります。


「遥。ひかりも1位をとっているわよね?」


「や、やめんか!?」


「ん?ひかりちゃんどうしたの?凄い事じゃん」


 トップ。


 つまり、1位です。


「お、おのれ…」


 ひかりちゃんが選ばれたランキング。

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