アイドルとマネージャー

伊達\\u3000虎浩

第3章 初夜

 
 修二達は銭湯を目指していた。


 引っ越したばかりであり、お湯が出ないからだ。


「で?目的地は?」


 と、助手席から尋ねる結衣。


 目的地は銭湯であり、ここで言うところの目的地とは、住所の事である。


「そうだなぁ。いきつけの所でもいいか?」


 他に案がないか?という意味でもある。


「ク、ク、ク。魔界めぐりツアーでも良いぞ」


「ばか。遠すぎだろ」


「ん?何処の事ですか?」


 何処って(笑)分かるだろ?


「別府だよ、別府。ひかりは、地獄めぐりの事を言ってんだろ?」


「…………」


 あれ?違うの?


 静まり返る車内。


 間違えたのかと心配になる修二。


「だろ?って、普通分かんないわよ」


「え?」


「ク、ク、ク。流石は我が親友じゃ」


「だ、誰が!」


 厨二病の気持ちが分かる自分。


 違う。昔、厨二病だったからとかじゃないからな!!


「………別府」


「いいわね。皆んなで旅行」


 あゆみとゆずが賛同する。


「無理に決まってるでしょ。遥は鹿児島出身だから、行ったことがあるんじゃない?」


「もちのロンだよ!」


「いやいや、その返しは古すぎるだろ」


 当たり前だのクラッカーだったか、当たり前だよスズキ君だったか?いや、最後のはお魚天国か。


「別府はいい所だよ!観光大使は可愛いし♡」


「それを言ったら、鹿児島の観光大使もそうだ……ろ?」


 何故か隣から睨まれてしまった。怖い怖い。


「ふん。別に!で?何処よ?」


「あ、あぁ。埼玉県草加市です」


 修二のいきつけの銭湯、いや、温泉は、草加市にある。


「あら、近いじゃない」


 だからこそのいきつけの場所なのだが、怖くて何も言えない修二。


「…大人料金を払えば、シャンプー、リンス、ボディーソープ、ドライヤーが無料で使えるし、露天風呂や、サウナもちゃんと完備されている」


 まぁ、女湯がどうなっているかは知らないが、大体同じだろ?


「タオルもお金を払えば借りられる。そうだ!小銭持ってるか?」


「小銭ですか?」


「あぁ。靴箱とロッカーに100円入れないといけない。勿論、後で返ってくるから、取り忘れないようにな」


 返ってくるなら最初から、無料でって思うかもしれないが、こうする事により、鍵の紛失や盗難を防ぐのだ。


 駅から近いので、ぜひ利用して欲しいものである。


 そんな訳で、一同は銭湯へと向かった。


 ーーーーーーーーーー


 俺は世の中の女性に問いたい。


 女ってのは何故長風呂をするのかと。


 1時間たっぷりお風呂を堪能した修二は、遥達の帰りを待っていた。


 1時間で充分ではないか?


 しかし、待つ事1時間。


 出てくる気配がない。


 一応下で待ってるとだけ、結衣にラインをしたのだが、既読はついていなかった。


 コーヒー牛乳を飲みながら、タバコに火をつける修二。


(そういえば、宣材写真を撮らねぇとな)


 遥や結衣だけではない。


 ひかりやゆず達も対象に入っている。


「ゆず達が撮らないといけない決まりはないが、新たな門出だし、撮っておく方がいいだろう」


 しかしそうなると、お金が問題である。


 写真を撮る。


 しかも、芸能人の写真だ。


 免許や履歴書のような写真とは違う。


「はぁ…仕方ない」


 携帯を取り出し、た行から目的の人物を探す。


「はいは〜い。千尋ちゃんだよ!」


「でしょうね。何でそんなテンションたけぇんだよ」


「シュウ君が電話をくれたから…かな?」


「はいはい。千尋的にポイント高い、高い」


「ぶー。で?何かようだったの?呑みに行こうとか?」


「いや、俺達、草加にある温泉にいるから」


「なななな、何で誘ってくれなかったのよ!!」


 耳がキーンとなる。


 電話を耳から離し、ころ合いを見計らって、再度耳にくっつける修二。


「あ、いや、お前忙しいかなぁとか、車に乗れないとか、とにかく、色々とあってだな」


 いい訳のオンパレード。


「で?で?自慢の電話なのかしら?」


「ち、ちげぇよ!宣材写真の撮影をしたいんだが、いくらまでならいいか?」


 宣材写真を撮るのはタダではない。


 また、人によっては額も変わる。


 ん?そりゃそうだろ?


 初心者に撮られるのと、超一流の人に撮られるのとでは、価格が同じなハズがない。


 千尋にかけたのはその確認の電話であり、決して自慢話しではない。


「あ!そ、その事ね…え…っと」


「ん?10万か?5万か?」


「ぜ、0で…テヘ♡」


「は?ば、ばか、0って無理だろ」


 コイツは何を言っていやがる。と、修二は思った。


「ば、ばかとは何よ!お金がないんだから、しょうがないじゃない!!」


 家を買うお金があって、写真を撮るお金がない。


 な?ばかとしか言いようがないだろ?


「ふ、ふ〜んだ。シュウ君が家賃を払ってくれたら、0じゃないんだからね」


 家賃3万。


 3万で5人分の写真が撮れるハズがない。


 いや、撮れない訳ではないが、タレントの宣材写真は命そのものであり、それを3万、いや、正確には5人で割るから6千か、とにかく、それで済ませようというのだから驚きだ。


「わ、私だって、せっかく可愛い子達なんだから、プロを雇って撮ってもらいたいわよ!」


「わ、分かった、分かった。悪かった。こっちで何とかするから、な?怒るなよ」


 逆ギレ。ヒステリック。


 そうなられても困ってしまう。


 ない袖は振れないだったか?


 そんな訳で、宣材写真の件は何とかするしかなくなってしまった。


「…はぁ。まぁ、見た目はいいんだから、俺が撮ればいいか」


 一応念の為、撮り方やらカメラやらのアドバイスを受けた方がいいか。


 そう考えた修二は、とある人物にメールを送る。


「お待たせ」


「ク、ク、ク。HP全回復じゃ」


「……いい湯だった」


「ちょ、遥!しっかりしなさい」


「ヒック。酔ってやせん。ヒック」


「…ま、待て。まさか呑んでたのか?」


 人を1時間以上待たせておいてだ、何?この仕打ち?


「バカね修二。風呂上がりの一杯が、格別なんじゃない」


「お、俺だって呑みてぇよ!」


 修二はドライバーである。


 呑んだら飲酒運転になる為、我慢していたのだ。


「あははは。あははは。修二さん可哀想」


 イラッ。


「ク、ク、ク。なぁに案ずるな我が同胞よ。ホレ。ポーションじゃ」


 と、ひかりが何かを投げ渡してきた。


 受け取る修二。


 何か?と、受けった物を見る。


「……フ、フルーツ牛乳じゃねぇか!」


 いや、美味いけどもさ…


「ほらゴン太!帰るわよ!」


 どうにでもなれ。


 と、修二は心の中で呟いた。


 ーーーーーーーーーー


 帰宅し、各々が初めての一夜を過ごす。


 二人暮らしをしていた者にとっては、久しぶりの一人部屋。


 居候していた者、いや、遥にとってそれは、天国であった。


「もぉ!誰ですか!」


 ガチャ。と、ドアを開ける。


「ん?修二さん?どうしたんですか?」


「どうしたじゃねぇよ!!」


 何故か修二は、激怒していた。


「しー。近所迷惑を考えなきゃダメですよ!」


「あ、あぁ、悪い…って、そうじゃなくてだな」


「用件を言って下さい。いま私、忙しいんですから」


 と、遥が伝えると、何故か修二は顔を赤くしていた。


「え?え?何ですか?風邪ですか?薬はありませんよ?」


「……だよ」


「え?」


「うるさいって言ってんだよ!」


 うるさい?失礼な。と、遥は思った。


「な、何ですか!突然。風邪なのかなぁって、心配してあげただけじゃないですか!!」


 怒られるいわれはない。


「いや、そうじゃなくてだな。お前、ギャルゲーやってるだろ?」


「は、ははは。さて、何の事でしょう?」


 さっと、視線をハズす遥。


(イヤホンでプレイしてたハズ…だよね?音漏れしてる…わけないよね?)


「音だよ、音!」


「…?音…ですか?」


「あぁ。興奮してドタバタするのやめろ」


 遥の下に住んでいるのは修二である。


 遥がドタバタする事により、修二の安眠を妨げていたのであった。


「は、はぁ〜い」


 自分が悪い。


 そう思った遥は、素直に謝罪した。


 アイドルを目指す彼女たち。


 一つ屋根の下で暮らす事になったマネージャー修二。


 彼等の芸能界への挑戦は、こうして始まった。

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