アイドルとマネージャー

伊達\\u3000虎浩

第2章 パーティーにて…修二編

 
 レッスンスタジオにて、楽しい、楽しい、パーティーが始まった。


「……大丈夫ですか?」


「大丈夫そうに見えるか?」


「……いえ。ふふ」


 結衣からやっと解放された修二であったが、そのほっぺたには、小さな足跡がつけられていた。


 あゆみが、本当に心配してやって来たのか、それとも、修二の頬を見に来たのかは分からない。しかし、声をかけてくれたのは嬉しい限りである。


「なぁ、あゆみっと、サンキュ」


「…どういたしまして。何でしょう?」


 手渡された缶ビールを開けながら、あゆみに質問をする修二。


「千尋から聞いたんだが、声優の仕事をしていたんだろ?何の作品に出てたんだ?」


「…………」


「い、いや、話したくないならいいんだ」


 修二の質問に対し、無言のあゆみ。


 答えたくない質問だったのだろうか?答えたくない質問なら、無理に聞き出すような事はしたくはないと考える修二。


 そんな事を修二は考えていたが、あゆみは何かを決意したのか、コクリとうなずいていた。


「…いえ。コレからマネージャーになって下さる方に、隠し事は良くないですから」


「いやいや、隠し事の一つや二つ、別に持ってていいからな」


 慌てて止めに入る修二であったが、次の瞬間、ピタッと動きが止まってしまった。


『あ♡ぷろ〜どチュウ♡だよ♡』


 聞き覚えがあるというより、昨日聞いたばかりの台詞と声…そしてまた、遠くの方にいた水嶋遥の動きもピタッと止まる。


「……残念です」


「え?え?な、何がだ?」


 ポツリと呟かれた言葉と共に、可哀想な人を見る目を向けてくるあゆみ。


 ※実際あゆみは、そんな事を思っていなかったが、パニックになっていた事もあって、修二はそう感じてしまった。


「その反応……修二さん……持っていますね?もしくは、プレイした事がありますね?」


『妹だけど愛さえあれば関係ないよね♡』を持っている、もしくは、プレイした事があるか?という質問に対し、激しく動揺してしまう。


 このままでは俺が、夜な夜なエロゲーをしていると思われてしまうではないか…何とか誤魔化さなくてはと、修二は考えた。


「な、何言ってんだ?急にそんな事を言われたら、だ、誰だって驚くだろ?」


「ふ…まさかのアキちゃん推しですか」


「待て。確かアミちゃんだっ……た!?」


 しまった!?と、思った修二であったがもう遅い。


「語るに落ちるとはこの事ですね…そうですか。私推しですか」


 あの台詞はアキではなく、アミであり、CV相川あゆみである。


 ちなみにCVとは、キャラクターボイスの略であり、担当声優という意味である。


 テレビなどで良く、キャラクターが描かれていて、その下にCV〇〇〇〇と書かれているのを見た事がないだろうか?つまり、このキャラクターを演じているのはこの人です!っていう意味になる。


「ち、違うんだ!!し、知り合いが持っていてだな…無理矢理やらされたんだよ」


 恨むぜ遥!!と、遥に目を向ける修二。


 遥はというと、携帯を開いたり、バッグの中にあるiPodを確認したりしていた。


(…音漏れでも気にしてんのか?)


 遥の謎の行動を自分なりに推測していると、再び声をかけられる修二。


「……まぁ、そういう事です」


「いやいや、分からないから」


 どういう事かわかるか?
 わかるなら誰か説明してくれ。


「……私は声優という仕事が好きです。しかし、エッチなヤツじゃなく、普通の作品に出たいのです」


 そういう事とはつまり、移籍した理由という事なのだろう。と、ようやく理解した修二。


「勿論、声優の仕事をいただけるのは、喜ばしい事なのですが…」


 ゆずも同じような事を言っていたなぁと、ゆずに目を向けると、結衣と楽しそうに話している姿が見えた。


 仲が良いのは良い事だ。
 ぐびっと缶ビールを飲む修二。


『お兄ちゃん…だぁい好き〜♡』


「ゴバァ!?……ハァハァハァ。い、いきなり何て事を言いやがる!?」


「……ファンサービス?」


「可愛いらしく、首を傾けるな!おかげでビールを吹いちゃっただろうが!鼻からビールってマジで痛いんだからな!!」


 遠くの方からも、盛大にむせている声が聞こえるが、あえて見ないようにした。


「……遥もむせていますね?何かあったのでしょうか?」


「さ、さぁな…」


 お前の所為だよなどと、言っていいのか悪いのか…判断に悩むところである。


「……この事は黙っていてもらえませんか?」


 どうやらあゆみは、あまり周りには知られたくないようだ。


「…そのかわり、担当マネージャーがロリ……普通の人だって事にしときますから」


「ま、待て。言っとくが俺は普通だからな」


 とてつもなく、可笑しな言い分である。特にロリって所がな!しかし、これはこれで、あゆみなりの交渉なのだろう。


 言わなくても言い秘密を、俺だけに教えてくれた。この意味を、この気持ちを、決して無駄にしてはいけない。


「はぁ…わかったよ。二人だけの秘密な。言っとくが、俺は元々普通だからな」


『ありがと♡お兄ちゃん』


 勘弁してくれ…と呟く修二であった。

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