リストラ

史季

リストラ

「君はクビだ」
「そ、そんな! どうして僕が?!」
「君は何度同じミスを繰り返せば気が済むんだね?! 
 そんな奴はいらないんだよ!」
 クビを宣告された社員は失意の表情を浮かべ、とぼとぼと去って行った。
「悪く思うなよ。これも会社のためなんだ」


 私はまた一人害虫を追い払ったと思うと、晴れ晴れした気分になった。
 会社はボランティアではないのだ。
 利益にならない人間はどんどん切る。
 そうしないと、会社は潰れてしまうのだ。


 解雇すべき人間はたくさんいる。
 同じミスをする者、遅刻する者、働きの悪い中高年、返事が遅い者。
 ……挙げればキリがない。
 彼らを一掃するのが、上司である私の重大な使命だ。


 もちろん、社内には不満の声もあった。
 だが、進歩には犠牲がつきものだ。要らない社員を減らすのは当然のことだ。
 これで我が社の業績はまた伸びるだろう。
 そう思うと残業の進み具合も良くなってきた。


 仕事が終わって帰ると、夜の11時になっていた。
「おーい、帰ったぞー」
「あなた、何度言ったらわかるの?! 
 今日はプラスチックゴミの日だったでしょ!! 
 あなたが出さないとまたゴミが溜まっちゃうじゃない!!」
「すまん、すまん。忘れてたんだ」
「それと、遅くなる時はちゃんと連絡して!
 いい年してなんでそんな基本的なことができないの!!」
 ……また小言か。小言の多い人間もクビにすべきだろうな。
「返事は?!」



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