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魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第70話 手紙と美桜


食堂に移動をすると、対面する形で出雲と雫は出入口側の席に座る。席に座ると、雫が出雲の眼を見て美桜のことを話し始めた。

「まず、なぜ美桜様がお一人でこの屋敷で暮らしていると思いますか?」

そう聞かれた出雲は、ただの一人暮らしだと思ってましたと言う。雫はそう思いますよねと言うと、美桜様は家出をしていたんですと言う。

「家出!? 何で!?」

出雲が驚いていると、雫が美桜様のお父様が関係していますと言う。

「美桜様だけ魔法が使えないのは知っていますか?」

そう言われた出雲は、今日知りましたと返答する。

「属性魔法が扱えないと知った美桜様のお父様。弦十郎様は、まだ幼い美桜様を出来損ないだと言い放ち、この世から美桜様を消そうとしました」

美桜を消す。そう言われた出雲は消すってどういう意味ですかと聞いた。すると雫はもう意味は分かるはずですと返答した。

「消すって殺してこの世から存在を失くすってことですよね……」

出雲が言葉を発すると、雫がそうですと肯定した。そして、入ってきてくださいと雫が言うと使用人の人達が食堂に入ってきた。その使用人は出雲が見たことがある女性達とたまに見る初老の使用人の人に見たことがない使用人の男性と女性が数人いた。

「見たことがいない人もいる……この人達は一体誰ですか?」

そう聞いてくる出雲に、雫は微笑して美桜様のお母様の使用人達ですよと言う。

「美桜のお母さんの!? と言うことは、美桜とお母さんは繋がっていたんだね」

その言葉を聞いた雫はそうですと肯定をした。雫は使用人達に命じてお茶とお茶菓子を用意させた。それを自身と出雲の前に置かせる。

「あ、ありがとうございます」

出雲は恐縮ですと言いながらお茶を一口飲む。雫もありがとうと言ってお茶を飲み始めた。

「家を出られてからの美桜様は、スマートフォンや手紙で逐一連絡を取っていたのです。 弦十郎様に悟られないように、お金の支援や一人暮らしで困らないようにと私達を向かわせたりしていました」

私達を向かわせる。その言葉が気になった出雲は雫さんは何者なんですかと聞く。すると雫が私は中央魔法省の特殊殲滅部隊の隊員ですと答えた。特殊殲滅部隊。物騒な名前だと出雲が呟くと仕方ないですと笑っていた。

「なら、始めて会った時にあの魔物に楽に勝てたんじゃないんですか?」

出雲は疑問に思ったことを聞いてみると、雫は特殊殲滅部隊にいることは美桜様は知らないので、弱いふりをしていましたと答えた。

「あの時の俺の気持ち!」

そう言いながら頭を抱えていると、雫はおかげで助かりましたからと出雲にありがとうございますと言っていた。

「話を戻しますと、美桜様はお母様である凛様から支援を受けながら今日まで生きていたということです」

そう説明をされた出雲は、それであの手紙とは何だったんですかと聞いた。雫はあれはと言って一瞬言葉に詰まる。

「あれは……美桜様の婚約の話です」

婚約。そう言われた出雲は目を見開いた。自身が気になっている女の子であり、助けたい守りたいと考えている女の子であり一生一緒にいたいと思っている女の子である。そんな美桜に婚約の話が来るとは思ってもいなかった。出雲は婚約の話をもう少し詳しく聞きたいと思い、雫に誰なんですかと聞いた。雫は美桜様のお相手は同じ貴族の皇家の長男ですと言う。

「皇家? その貴族の人は美桜と同じ年なんですか?」

出雲が神妙な面持ちで聞くと、雫は同じ年の方ですと返答をする。出雲はその言葉を聞いて、なんで美桜なんですかと呟く。雫はその出雲の口から出た言葉に、属性魔法が使えないからでしょうと答える。

「たったそれだけで……たった属性魔法が使えないだけで物みたいに扱われて、家の道具にさせられるんですか!」

出雲が席から立ち上がって声を荒げると、雫がそれがこの世界で貴族の習わしなのですと真顔で答えていた。出雲はそれを聞いて、親に振り回されるのは俺だけで充分ですと雫に言った。それを聞いた雫は、どうするつもりなんですかと出雲に質問をすると、出雲はすぐには答えることが出来なかった。

「ただ直情的に動くだけでは美桜様を救うことは出来ませんよ」

今までの雫とは違って、出雲に対して真剣な表情で相対していた。救うことは出来ませんよとの言葉を雫が発した後は、食堂に静寂が走っていた。出雲はその後反論することが出来ずにいた。

「すぐに答えは出ないでしょうから、一度考えてみてください」

その言葉と共に雫と使用人達が食堂から出ていく。出雲はその場に残されてしまい、どうしたらいいんだと苦悩していた。

「俺一人じゃ救えない……かといって蓮達に助けを求めても協力してくれるとは限らない……どうしたらいいんだ……」

出雲が悩んでいると、食堂の扉が開く音が聞こえた。

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