魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第68話 美桜の魔法


美桜が魔法を発動出来ないのがおかしいと出雲達以外のクラスメイト達は思っていた。貴族は魔法が出来て当然と考えているからである。しかし、そこにいる貴族である美桜は魔法が扱えていない。

「な、なんで美桜は魔法が使えないの!? 回復魔法は使えてたのに!」

出雲が横にいる蓮に話しかけると、蓮は出雲はまだ知らなかったねと言う。

「知らないよ! 美桜に何かあったの!?」

出雲が再度蓮に聞くと、蓮は昔からと言葉を発する。

「美桜は子供の時から魔法を上手く扱えなかったんだ。 美桜の家は貴族の中でも上位で、美桜の家を推している派閥があるんだ。 それに、美桜には兄が一人、姉が二人いて三人共魔法を活かして中央魔法省で働いているんだ」

中央魔法省と言われて出雲はそれが何なのか分からないよと聞く。蓮はごめんと言う。

「中央魔法省は国の魔法と国防を担っている国の重要機関なんだ。 そこに美桜の兄と姉達が勤めていて、そこで働いているんだ」

そう言われて凄いなと感じるも、中央魔法省って貴族しか入れないのと聞く。すると蓮は八割の貴族と二割の一般人で構成されてると返答をした。

「その世界で美桜の家族は働いているんだ。 ちなみに、国立魔法部隊って知ってる? その舞台は中央魔法省の下部組織になっているんだ」

出雲は試験で来栖朧が隊長の部隊のことを思い出した。あの部隊が下部組織なことに驚いていたが、それよりも美桜に兄と姉がいたことにも驚いていた。出雲は美桜の魔法が使えない理由とは何だろうと蓮に聞くと、蓮は分からないと答える。

「分からないって、そんな!」

出雲がそう問い質すと、蓮が俺の知っている情報は少ないと答える。

「上位の貴族の天神一族がホイホイと情報を流すわけないでしょ」

出雲はそう言われてしまい、そりゃそうだと納得をした。しかし、蓮は出雲に美桜は魔法が扱えないから誰でも訓練すれば使いこなせる回復魔法の特訓をしていたんだと言う。

「美桜はそれで回復魔法を使っていたんだ……それにお金も自分で稼いていたんだ……」

美桜は魔法が使えないから努力をしていたんだと出雲が呟くと、琴音が使えないからじゃないよと出雲に言った。

「美桜は魔法を諦めていないよ! 家族を見返すために属性魔法を扱えるようにするって言ってたし!」

琴音がそう出雲に言うと、出雲も美桜は必ず出来るようになるよと返す。出雲が出来るよ取った瞬間、天神美桜不合格との教師の言葉が出雲に聞こえてきた。

「そんな!? 美桜が不合格だなんて……」

出雲が驚いていると、周囲にいるクラスメイト達が貴族なのに魔法の実技で不合格ってと嘲笑ったり、貴族なのに落ちこぼれなのとの言葉を発していた。出雲は美桜はそんなことはないとクラスメイト達に言うが、実際に身体強化魔法でさえ出来ていないじゃんと言い返されてしまう。出雲は何も言い返せなくなってしまい、その場にて歯が軋むほどに歯を喰いしばっていた。

そこに美桜が静かに歩いて来て、もういいわと出雲に言う。出雲は美桜に何か話しかけようと思ったが、すぐには声が出てこなかった。しかし、琴音や蓮が残念だったねと話しかけると、美桜がもっと魔力を上手く操作出来るようにしなきゃと呟くと、その顔は諦めていなかった。

出雲は美桜は凄いなと考えていると、蓮が出雲の背中を軽く叩いて行ってこいと言う。出雲は蓮にありがとうと言って一番後ろで琴音と話している美桜の側に歩いて行くと、美桜が出雲と小さく呟く。

「美桜が魔法が苦手なのは分かったけど、俺もまだまだ苦手なんだ! 一緒に練習していこうよ!」

出雲がそう言いながら美桜にガッツポーズをすると、美桜がそう言うところよと呟いて出雲の左肩を軽く叩いた。

「私の方が先に魔法得意になるから!」

そう言うと、先ほどまで落ち込んでいた美桜は笑顔になっていた。それからは出雲が教師に呼ばれて初めは身体強化魔法が発動せずに苦戦をするが、声を大きく上げると身体強化魔法が発動をして、辛くも合格をした。また、当然ながら琴音や蓮も合格をしていた。

「よし、全員終わったな。 不合格者は中間試験で身体強化魔法も追加で受けてもらうから、練習しておくように。 以上、解散!」

その言葉と共に授業が終わるチャイムが鳴った。

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