魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第61話 苦手なもの


出雲はその美桜の声に気づかずに、部屋から出ようと歩くと扉の外に美桜がいることに気がついた。出雲は美桜いるのと声をかけると驚いたのかうひゃっと声を美桜は上げた。

「あ、ごめん。 まさかそこまで驚くなんて……」

出雲が謝ると、美桜が謝ることないよと出雲に言った。出雲はどうしてここに美桜がいるのか聞くと、美桜は呼びに来ただけよと返した。

「そうなんだ。 ありがとう!」

出雲が素直に感謝の言葉を言うと、美桜が素直すぎよと呟く。出雲にその言葉は聞こえていなかったので、お昼楽しみだなと独り言を言っていた。

「雫が麺を切っていたから蕎麦じゃない?」

蕎麦を聞いて出雲は楽しみだと眼を輝かせていた。二人で喋りながら食堂に到着をした。食堂では雫がざるに麺を置いている途中であったようで、二人の姿を見た雫はもう来たのと驚いていた。

「もう来たんですか!? 汁を用意すればもう終わるで、席に座っていてください」

そう言われた二人はいつもの席に座った。すると、出雲と美桜の眼の前にざるに乗せた蕎麦を置いた。ちょうど一人前なので量が少ないと思うも、食べれば充分満腹になる量であった。

「ざる蕎麦だ! ざる蕎麦だ!」

出雲は早く食べたいと言うと、雫がねぎを忘れないでくださいと言って出雲の汁にねぎを入れた。すると出雲がわさびはありますかと雫に聞く。

「わさびですか? ありますよ」

そう言って出雲にわさびの入っているチューブを渡す。出雲はそのチューブを絞って汁の中に適量を入れる。

「この食べ方が美味しんですよー」

わさびを汁に溶かしてそこに蕎麦を入れる。そして、汁が付いた蕎麦を一気に啜って食べていく。

「美味しい! 最高です!」

出雲が喜んでいると、美桜が美味しそうに食べるわねと言いながら出雲を見ていた。美桜も出雲と同様にして食べ進めると、雫に腕をあげたわねと話しかける。

「ありがとうございます。 蕎麦職人の方に教わって今回作りました」

雫は胸を張って美桜に言うと、それを聞いていた出雲はそこまでしているんだと思いながらありがたいと思って食べている。そして、出雲は食べ終えると美味しかったですと雫に言って片付けを手伝う。その間美桜はゆっくりとざる蕎麦を食べており、出雲に片付け頑張れと食べながら言っていた。

「頑張るよー。 美桜はゆっくり食べててな」

そう言われた美桜はそうするわと言ってゆっくりと食べていた。出雲は使用人の人達と楽しく話しながら後片付けを続けていると、美桜がお茶持ってきてと出雲に話しかけた。

「お茶? そこにない?」

そういう出雲に美桜が全部飲んじゃったと返答をした。

「全部飲んだ!? 沢山あったのに!?」

出雲はお茶が入っている大きめの水差しを見ると、それは空になっていた。出雲が美桜を見ると若干涙目になっていたので、もしやと思い聞いてみることにした。

「もしかして、美桜ってわさびが苦手だったりする?」

出雲がそう美桜に聞くと、美桜はごふっと咽てしまった。出雲は大丈夫と言いながらティッシュ箱を持って駆け寄ると、美桜がありがとうと言う。

「わさび……苦手なの……出雲が美味しそうに食べてたから挑戦したけど、やっぱり駄目だったみたい……」

美桜は顔を俯かせながら、わさびが苦手なことを出雲に話し始めた。美桜は出雲からもらった水を改めて一口飲むと、ぷはぁっと声をあげてコップを机に置く。美桜は一息つくと辛かったわと言ってわさびチューブを睨みつける。

「そんなにわさびを睨みつけないでよ……」

出雲がそう言うと、美桜がそれしまってとわさびチューブを指さした。出雲は分かったよと言ってわさびチューブを冷蔵庫の中にしまった。厨房から戻る時に美桜の口直しにとイチゴのフルーツジュレを持って行くことにした。

「はい。 これでも食べて口直しして」

美桜にそれを渡すと、美桜はありがとうと言って食べ始めた。出雲は美味しそうに食べる美桜の顔を見て、平和っていいなと感じていた。美桜はイチゴのフルーツジュレを食べ終えると、出雲に私ねと話し始めた。

「子供の時に食べたわさびが辛くて気絶しちゃって、それから苦手なのよ」

食べられない理由を聞いた出雲は、美桜に無理して食べなければよかったのにと言う。しかし、美桜が出雲が美味しそうに食べているから私も挑戦しようと思ったのと言ってきた。

「ありがとう。 でも、美桜は無理して食べなくていいの。 今度から一緒に食べられるのだけ食べよう」

出雲のその言葉を聞いて、美桜がありがとうと言った。

「私は無理しないから、出雲は食べたいの食べていいからね」

美桜は出雲に好きに食べていいからねと言う。それに対して出雲はありがとうと言って優しいねと美桜に言った。

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