魔法の世界で新たな人生を~捨てられた人生のやり直し~

天羽睦月

第51話 入学前のある一日②


出雲がそのように考えていると、美桜が治療が終わったわよと言う。そして、美桜は続けてどうしてここに来たのと出雲に聞いた。

「暇すぎたから、美桜が行く郵便局に一緒に行こうと思って!」

そう聞いた美桜はつまらないけど、それでもいいならと言う。つまらなくないよと出雲はいい、一緒にいられることが俺にとって最高だよと言う。

その言葉を聞いた美桜は、顔を紅くさせてありがとうと返答した。そして、こっちの郵便局は出雲の世界ではどうだったかは知らないけど、出しに行くだけだからねと言った。

「俺は郵便局に行ったことないから特に何も思わないよ。 こっちの常識が俺の常識だから、色々知れてうれしい!」

無邪気な笑顔の出雲を見ると、こんな男の子ともっと早く知り合えていたら良かったなと美桜は思っていた。しかし、現在で会えたから私は幸せなのかなと笑顔でいた。

「こっちを右に曲がるわ」

美桜は分かれ道の曲がる方向を出雲に指示をする。出雲はその指示に従って美桜と共に道を歩いて行く。その際に周囲の住民の人とすれ違うと、全員が全員美桜に挨拶をしていた。

「こんにちは。 良い天気で良かったですね」

と返答をしたり、入学おめでとうと言われた際にはありがとうございますと返答をしていた。出雲は流石美桜だなと思っていると、出雲がてくれるから私が私でいられると言ってくれる。

「そんなに会ってからそこまで時間長くないけど、力になれてるならよかった!」

笑顔で言われた美桜は笑顔でありがとうと返す。出雲は二人でいると幸せでふわふわした気持ちになるこの感覚が好きでもあった。家からそれほど遠くない位置に郵便局はあった。

美桜の家の周囲が入り組んでいる町並みだったので多少は時間がかかったが、それほど苦ではない距離であった。近くにある郵便局は支店であったが、人が多く入っているようで時間はそれなりにかかると出雲は思った。

しかし郵便局に入ると、職員の一人が美桜を見つけるとすぐに側に焦りながら駆け寄ってきた。その職員は美桜に話しかけると別室に案内をした。その別室は豪華な作りとなっており、ヒノキで出来ていると思われる棚や煌びやかな花瓶や壺などが置かれていた。

「お、お待たせして申し訳ありません! 本日はどのようなご、御用でしょうか!」

若い男性職員が応対をすると、美桜が今日は支店長はいないのと聞く。

「あ、はい! 本日は本部の方に会議で行ってまして!」

若い男性職員は一語一句、発する言葉が緊張していると見える程であった。美桜と一緒に別室にいる出雲をチラッと見た若い男性職員は、出雲にも緊張しているようである。

「そちらのお客様は天神美桜様のお知合いですか?」

出雲のことを美桜に聞くと、美桜は私の大切な人ですと返答をした。出雲は大切な人と言われて、恥ずかしくなってしまった。顔を紅くしながら美桜にそこまで言わなくていいよと言うと、美桜は自身の唇に人差し指を当てて、今は静かにしてとのジェスチャーをし始める。

出雲はその美桜の指示通りに静かに待つことにした。美桜は出雲が静かになったことを見ると、若い男性職員に肩さげ鞄に入れていた手紙を手渡した。その手紙を束を受け取った若い男性職員は、少々お待ちくださいと言って部屋から出ていった。

「お願いします」

美桜がそう言うと、出雲を見てもう大丈夫よと言った。

「俺が静かにしてなくても変わらなくない!?」

出雲がそう美桜に言うと、美桜はニシシと小さく笑ってバレたねと言った。

「もう! 俺のあの頑張りは!?」

そう出雲が叫ぶと、部屋の扉がノックされて若い男性職員が入ってきた。

「まだ処理は続けていますが、支店長からお電話が入っております」

そう言われて手渡された電話の子機を美桜が受け取ると、話し始めた。

「あ、支店長お久しぶりです。 はい。 手紙を出し忘れていまして、お持ちした次第です」

そんな話を美桜がし始めると、出雲には意味が分からないので静かに椅子に座って待つことにした。出雲が椅子に座って待ち続けて三十分が経過すると、美桜の話が終わったようである。

「では、最速でお願いします。 毎度ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

そう言って子機の通話終了ボタンを美桜は押した。通話が終わったと同時に若い男性職員が部屋に入り、支店長の指示のもと最速で優先的にお届けいたしますと美桜に言う。

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