魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

決勝戦

 剣術大会は最後の戦い、ウルリカ様とナターシャによる決勝戦へと突入。二人は闘技場の真ん中で、静かに開始の合図を待っていた。

「入学試験を思い出すのじゃ」

「そうですね……」

 普段通りのウルリカ様とは対照的に、ナターシャは闘志に満ち溢れている。試合開始前だというのに、木刀を構えて臨戦態勢だ。

「果たしてどこまで戦えるか……ウルリカさん、今日は手加減無用でお願いします!」

「ふむ……」

 ウルリカ様は一瞬にして、ナターシャの気迫が本物であることに気づく。そしてどういうわけか、クルリと背を向け闘技場の端へ。

「リィアンよ、お主の木刀を貸しておくれなのじゃ」

「うん、まあいいけど……」

 ウルリカ様の魔剣ヴァニラクロスは双剣、つまりウルリカ様の得手は二刀流。ナターシャの望む手加減無用に応えるべく、リィアンの木刀を借りて二刀流となったのだ。
 お互い戦闘準備は整い、そして──。

「それでは……決勝戦、開始!」

「いきます、やあああっ!」

 まずはナターシャの先制攻撃、その速度はリィアンにも引けを取らない。しかしウルリカ様は軽やかな足取りで、なんともあっさりナターシャの速攻を躱してしまう。

「悪くない動きじゃ、しかしまだまだじゃ!」

「うぐっ!」

 続いてはウルリカ様の反撃だ、二本の木刀を交差させナターシャを打ちつける。ナターシャは辛うじて防御するも、衝撃で大きく吹き飛ばされてしまう。

「よくぞ防いだのじゃ、ならば!」

「くっ、くうぅっ!?」

 止むことのないウルリカ様の猛攻、大嵐を思わせる激しい連続攻撃だ。それでもナターシャは飛び退き、転がり、紙一重で攻撃を躱し続ける。

「こんなものかの?」

「いいえ、今度は私の番です!」

「むむぅ?」

 やはり実力差は明白、しかしやられっぱなしのナターシャではない。防戦一方かと思われたが、しっかり反撃の機会を伺っていた。
 スカーレットのように素早い動き、カイウスのように正確な剣捌き、そしてエリザベスのように力強い一撃。聖騎士顔負けの見事な剣捌きで、一転して攻勢に出る。だが──。

「うむ、素晴らしい剣じゃ!」

 相手は最強無敵の魔王様、その力は圧倒的。全身全霊をかけたナターシャの攻撃も、ウルリカ様には通用せず。

「ほれ、お終いなのじゃ!」

「ああっ!?」

 ついにナターシャは木刀を弾き飛ばされ、頭にポカッと一本を受けてしまう。

「そこまで! 勝者はウルリカ、よって剣術大会優勝はウルリカだ!」

「「「「「わああぁー!」」」」」

 規格外の強さを見せつけたウルリカ様、必死に食らいついたナターシャ。二人の激闘に観客は、この日一番の大興奮だ。

「はぁ……はぁ……、本気で戦ってくれて、ありがとうございました!」

「うむ、また勝負しようなのじゃ!」

「はい!」

 こうして剣術大会は、ウルリカ様の優勝で幕を閉じた。


            


 大興奮の決勝戦から数分後、闘技場には剣術大会の参加者が集まっていた。

「剣術合戦を制したナターシャと、剣術大会で優勝したウルリカに、最強剣士の称号を与える!」

 エリザベスからウルリカ様とナターシャに、金色と銀色の短剣が手渡される。といっても刃のついていない安全な短剣だ。これこそ剣術合戦と剣術大会の勝者へ送られるご褒美、ロームルス学園最強の剣士である証だ。

「やったのじゃ、嬉しいのじゃ!」

「そうですねウルリカさん、それでは……」

「うむ、せーのなのじゃ!」

 ウルリカ様とナターシャは、揃って天高く短剣を掲げ大喜び、誰もが二人に祝福の拍手を送っている、とそこへ──。

「ああっ、終わっちゃったわ!」

「残念……遅かった……」

 汗だくになりながら駆けつけたのは、ヴィクトリア女王とクリスティーナである。

「お父様と……お兄様に……、執務を押しつけてきた……甲斐なし……」

「もうっ、ゼノンは執務を溜め込みすぎよ!」

 どうやら二人は、ゼノン王とアルフレッドに執務を押しつけてきた模様。しかし残念ながら一足遅く、最後の競技も終わってしまった。

「お二方、あまり俺から離れませんように」

「大丈夫よガーランド、学園に危険なんてないわ」

「そう……護衛は不要……心配は無用……」

「いえしかし、万が一ということもありますので」

 二人の護衛についてきたらしい聖騎士のガーランド。護衛は不要と言われつつも、しっかりと辺りを警戒し、とある一点でビタリと視線を止める。

「なっ、なんだと……!?」

 ビタリと止まった視線の先、そこには無邪気に拍手をするリィアンの姿があった。

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