魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

一位の表彰台を巡って

 運動会のお知らせからほどなくして、下級クラスの生徒達は校庭へと集まっていた。普段の学生服とは違う、動きやすそうな運動用の服に着替えている。

「わーいなのじゃ、お外で授業じゃー!」

「待ってくださいウルリカ様、走ると転んでしまいますよ」

 例のごとくウルリカ様は元気いっぱい、パタパタと校庭を駆け回り大はしゃぎ。そして例のごとくオリヴィアは、ウルリカ様を追いかけ回して大忙し。

「さあウルリカ、運動会に向けて特訓を開始するぞ!」

「うむ! ところでエリザベス先生、特訓とは何をするのじゃ?」

「そうだな……そもそもウルリカは運動会を知らないのだったな。ではまず全体の流れや、競技について簡単に説明をしておこう」

「よろしく頼むのじゃ!」

 ウルリカ様は膝を抱えてチョコンと小さく体育座り、可愛らしいことこの上ない。

「先ほどナターシャが言っていた通り、運動会は二日間に渡って開かれる。行う競技は多種多様、生徒はどの競技に参加してもいい」

「ふむふむ、全部に参加してもいいのじゃな?」

「残念ながら全ての競技に参加することは不可能だ、いくつかの競技は同時進行で行われるからな。よって表彰台を目指すのであれば、得意な競技に的を絞って参加し、計画的に勝利を積み重ねなければならない」

「なるほどなのじゃ、それにしても自由な催しなのじゃな」

「ああ、初代学長の意向で自由な運動会としているらしい。生徒以外の飛び入り参加も認められているぞ、もちろん同じ年頃の子供限定だがな!」

 ロームルス学園の運動会でありながら、学園外からの参加も認められているという。学園祭といい運動会といい、まったく自由にもほどがある。

「流れは分かったのじゃ、次は競技について教えて欲しいのじゃ」

 ウルリカ様の質問を「待ってました」と言わんばかりに、ナターシャとシャルルは勢いよく立ちあがり、猛烈な勢いで捲し立てる。

「人気の個人競技は徒競走や障害物競争だ、もの凄く白熱するぞ! 数は少ないが団体競技もあり、玉入れや綱引きは大盛りあがりだ!」

「そして目玉は剣術合戦と剣術大会です! 剣術合戦は広い校庭を舞台に入り乱れての大乱闘、剣術大会は勝ち残り形式の真剣勝負なのです!」

「競技ではなく応援を頑張る生徒もいる、気合の入った応援団は見ものだ!」

「皆で参加する競技もあるのじゃな、楽しそうなのじゃ!」

「ただし数は多くありませんわ、基本的には個人競技ですの。これは学年やクラスによる人数のバラつきを考慮しているのですわね」

 要約すると、競技の種類は個人競技を主として様々、競技への参加は基本的に自由。各競技で収めた成績により、最終的な順位を決定するということらしい。

「つまり自分達はクラスメイトであると同時に、競争相手でもあるのだ!」

「表彰台を奪いあう好敵手というわけですね!」

「どうだナターシャ嬢、一位の表彰台をかけて勝負といこうか?」

「むむむっ、負けませんよシャルルさん!」

「ならば妾も一位の表彰台を狙ってみようかの、面白そうじゃからの!」

「ハッハッハッ、非常に素晴らしいことだ! 表彰台独占を目指しつつ、全員で一位争奪戦だな!」

 一位の表彰台を巡り、ウルリカ様、ナターシャ、シャルルの三人はバチバチと火花を散らしている。そんな三人の様子を見て、エリザベスは全員参加の一位争奪戦を決めてしまう。

「いつの間にやらワタクシ達まで、争いに巻き込まれていますわ……」

「もしかして私も参加するのでしょうか、私は生徒ではないのですが……」

「諦めましょうオリヴィア、あの勢いは止められませんわ……」

「決まりなのじゃ、では特訓を──」

「ちょっと待った!」

 いよいよ特訓開始、と思われたところへ待ったの声。
 果たして声の主は誰なのであろうか。

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