魔王様は学校にいきたい!
魔界
「久しぶりの城下町なのじゃー!」
大宴会から一夜明け、ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの四人は魔王城周辺に広がる城下町へと遊びにきていた。
「わーいなのじゃ、楽しいのじゃー!」
「待ってくださいウルリカ様、はぁ……はぁ……」
ウルリカ様は元気いっぱいにパタパタと走り回っている、大宴会の疲れは微塵も感じさせない。
一方で追いかけるオリヴィアはクタクタに疲れ切っている、何しろ大宴会では延々とお料理を作り続けていたのだ。
「あの二人は魔界でも相変わらずです、いつもの光景です」
「でも町並みはいつもと違いますの、とても不思議でワクワクする町並みですわ」
とんがり屋根の建物は、人間界の建物と比べ十倍以上の大きさだ。空を飛び交うカボチャの馬車、引いているのはペガサスである。広すぎる大通りは、様々な種類の魔物で大賑わい。
どれも人間界では見られない光景に、シャルロットとナターシャは大興奮だ。
「やはりウルリカ様の尊さは唯一無二、千年先まで眺めていられます……おっと失敬。ウルリカ様のご友人方、どうぞご自由に観光されてくださいね」
「でも周りは魔物だらけです、人間の私達を襲ってきたりしないでしょうか?」
「俺達と一緒にいるのだ、何も心配する必要はない」
「シャルロットちゃん、ナターシャちゃん、いっぱい楽しみましょうねぇ!」
付き添いはゼーファード、ジュウベエ、ヴァーミリアの大公三体、これ以上ない護衛といえるだろう。
ちなみにエミリオとミーアは、何か準備をすると言い残し朝からどこかへ消えてしまった。
ゼノン王とドラルグは魔王城でお留守番。ゼノン王は二日酔いで撃沈、ドラルグは巨体故に城下町への出入り禁止なのである。
「あっ、よくみるとお菓子屋さんでいっぱいです」
なんと立ち並ぶお店の半数以上はお菓子屋さん、お菓子大好きウルリカ様のお膝元なだけはある。
「魔界のお菓子、片っ端から調査しなくてはなりませんっ」
「うむ、ならば片っ端から突入なのじゃー!」
オリヴィアは魔界のお菓子に興味津々、疲れはどこかへ吹き飛んだ様子。ウルリカ様と一緒になって近くのお菓子屋さんへ突入だ。
一方シャルロットはというと、ピカピカ光る派手な服飾店に目を奪われていた。次々と色を変えるドレス、ポンポンと花を咲かせる帽子、どれも魔界ならではの不思議な品々である。
「あらぁ、シャルロットちゃんはお洋服に興味津々かしらぁ?」
「可愛いお洋服でいっぱいですわ、見ているだけで楽しくなりますの。あら、寝間着も売っていますのね。どれもフワフワで可愛いですわ……そうですわ、閃きましたの!」
「何を閃いたのかしらぁ?」
「ねえヴァーミリア、今夜は何かご予定ありますの?」
「いいえ、特に予定はないわよぉ」
「でしたらワタクシ達と一緒に、寝間着で女子会なんてどうですの?」
「寝間着で女子会?」
「皆で可愛い寝間着を着て、女の子だけで遅くまでお喋りですわ」
「あらあらぁ、それはとってもステキねぇ」
可愛いもの大好きなヴァーミリアは、シャルロットの提案に大喜びだ。
「決まりですわ、今夜着る寝間着を一緒に選びましょうですの」
「ふふぅ、楽しみだわぁ」
シャルロットとヴァーミリアは仲よく手を繋いで服飾店へと入っていく、どんな寝間着を選ぶのか楽しみだ。
ところで気づけばゼーファードは姿を消している、一体どこへ消えたのやら。残されたナターシャとジュウベエは、どうしたものかと辺りをキョロキョロ。
「どうする人間、俺達もお菓子屋に入るか?」
「いえ、私はあちらのお店が気になって……」
「あれは魔界の地方料理を扱っている店だな」
「魔界の地方料理ですか、どのようなお料理なのでしょう?」
「珍品ばかりで誰も寄りつかない店だ、俺も詳しくは知らん」
「珍品ばかり!」
珍品と聞くや否やナターシャはキラキラと目を輝かせる、今にも目から光線を放ちそう。
「あー……いきたいのか?」
「いきたいです!」
「そうか……いくか?」
「はいっ、ありがとうございます!」
ナターシャはジュウベエの手を引いて地方料理のお店へ突撃。まるで父親と娘のような、なんとも微笑ましい光景である。
楽しみ方は三者三様、それぞれ魔界を存分に満喫するウルリカ様達なのであった。
ポカポカ陽気のお昼時、だというのにドラルグは鬱々と項垂れていた。
「グルル……ウルリカ様、楽シソウダ……」
城の中から聞えてくるウルリカ様達の楽しそうな声、どうやら城下町から戻ってきたらしい。しかし外へは出てきてくれず、ドラルグは魔王城の外でポツンと寂しく過ごしているのだ。
「我モウルリカ様ト遊ビタイ……」
ドラルグは寂しさのあまり今にも泣き出してしまいそう、とそこへ──。
「あ、こんにちは」
「グルル、ウルリカ様ノゴ友人カ?」
やってきたのはオリヴィアだ、ドラルグの巨体に驚きつつも笑顔でペコリとお辞儀をする。
「オリヴィアと申します、確かドラルグ様ですよね?」
「ソノ通リ、黒竜ドラルグトハ我ノコトデアル……」
「あの、何やら元気がないようです……」
「グルル……聞イテクレルカ少女ヨ」
「私でよろしければ」
「我モウルリカ様ト一緒ニ遊ビタイノダ。シカシ我ノ巨体デハ、謁見ノ間ト宴会場以外ノ場所ヘ入レナイ。我ダケ外ニ取リ残サレテ寂シイノダ、グルル……」
大きな体をションボリ丸め、長い尻尾を地面にペタリ。いつもの雄々しい姿はどこへやら、気のせいか一回り小さくなったようにすら感じる。
「ウルリカ様、外ヘ出テキテクレナイダロウカ……」
「そうでしたか、でしたら私にお任せください」
そう言い残してオリヴィアはどこかへ走り去ってしまう。そして数分後、ガラガラと配膳台を押して再び登場。
「何ヲ持ッテキタノダ?」
「溶かしたチョコレートとマシュマロです、一緒に食べましょう」
「チョコレート? マシュマロ? ナゼ我ガソノヨウナモノヲ?」
「チョコレートフォンデュですよ、いいから食べてください」
オリヴィアはマシュマロをチョコレートに潜らせ、ドラルグの口にポイッと放り込む。
「ホウ、甘ク蕩ケル味ワイダ」
「おいしいですよね、それにとってもいい香りです」
「悪クナイ、モウ一ツイタダコウ」
「はいっ」
オリヴィアとドラルグは仲よくチョコレートフォンデュをパクパク、とそこへ──。
「この甘い匂いはなんじゃー!」
どこからともなくウルリカ様登場、どうやら蕩けるチョコレートの香りを嗅ぎつけた模様。
「なんじゃそれは!」
「ドラルグ様と一緒にチョコレートフォンデュを食べていたのです」
「チョコレートフォンデュじゃとー!?」
トロトロのチョコレートにフワフワのマシュマロ、甘いもの大好きなウルリカ様は当然ながら大興奮である。
「妾も食べたいのじゃ、チョコレートをフォンデュしたいのじゃ!」
「もちろんです、いいですよねドラルグ様?」
「オオウッ、ウルリカ様モ一緒ニ食ベマショウ!」
「わーいなのじゃ、チョコレートをフォンデュなのじゃ!」
ウルリカ様はマシュマロをチョコレートに潜らせ、次々と口へ放り込んでいく。その流れでフォンデュしたマシュマロの一つをドラルグの口目掛けてポイッ。
「ほれ、ドラルグも食べるのじゃ」
「グルルッ!? ウルリカ様カラ食ベサセテモラエルトハ、ナントイウ至福ノ時間!」
「よかったですねドラルグ様」
「マサカ少女ヨ、コウナルコトヲ見越シテチョコレートフォンデュヲ用意シテクレタノカ?」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
「ナントイウ聡イ少女ナノダ! グルルルゥ、我ハ大イニ感謝シテイルーッ!」
ドラルグは感謝の雷で晴れ渡る空をゴロゴロと貫く、先ほどまでのションボリな姿はどこへやら。そうこうしていると──。
「あら、いい香りですわ」
「あれはチョコレートフォンデュでしょうか?」
「ちょっとぉ、ウルリカ様達だけズルいわよぉ」
賑やかな声を聞きつけて、シャルロット、ナターシャ、ヴァーミリアも合流。こうしてウルリカ様達は、夕暮れ近くまでチョコレートフォンデュを楽しんだのであった。
大宴会から一夜明け、ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの四人は魔王城周辺に広がる城下町へと遊びにきていた。
「わーいなのじゃ、楽しいのじゃー!」
「待ってくださいウルリカ様、はぁ……はぁ……」
ウルリカ様は元気いっぱいにパタパタと走り回っている、大宴会の疲れは微塵も感じさせない。
一方で追いかけるオリヴィアはクタクタに疲れ切っている、何しろ大宴会では延々とお料理を作り続けていたのだ。
「あの二人は魔界でも相変わらずです、いつもの光景です」
「でも町並みはいつもと違いますの、とても不思議でワクワクする町並みですわ」
とんがり屋根の建物は、人間界の建物と比べ十倍以上の大きさだ。空を飛び交うカボチャの馬車、引いているのはペガサスである。広すぎる大通りは、様々な種類の魔物で大賑わい。
どれも人間界では見られない光景に、シャルロットとナターシャは大興奮だ。
「やはりウルリカ様の尊さは唯一無二、千年先まで眺めていられます……おっと失敬。ウルリカ様のご友人方、どうぞご自由に観光されてくださいね」
「でも周りは魔物だらけです、人間の私達を襲ってきたりしないでしょうか?」
「俺達と一緒にいるのだ、何も心配する必要はない」
「シャルロットちゃん、ナターシャちゃん、いっぱい楽しみましょうねぇ!」
付き添いはゼーファード、ジュウベエ、ヴァーミリアの大公三体、これ以上ない護衛といえるだろう。
ちなみにエミリオとミーアは、何か準備をすると言い残し朝からどこかへ消えてしまった。
ゼノン王とドラルグは魔王城でお留守番。ゼノン王は二日酔いで撃沈、ドラルグは巨体故に城下町への出入り禁止なのである。
「あっ、よくみるとお菓子屋さんでいっぱいです」
なんと立ち並ぶお店の半数以上はお菓子屋さん、お菓子大好きウルリカ様のお膝元なだけはある。
「魔界のお菓子、片っ端から調査しなくてはなりませんっ」
「うむ、ならば片っ端から突入なのじゃー!」
オリヴィアは魔界のお菓子に興味津々、疲れはどこかへ吹き飛んだ様子。ウルリカ様と一緒になって近くのお菓子屋さんへ突入だ。
一方シャルロットはというと、ピカピカ光る派手な服飾店に目を奪われていた。次々と色を変えるドレス、ポンポンと花を咲かせる帽子、どれも魔界ならではの不思議な品々である。
「あらぁ、シャルロットちゃんはお洋服に興味津々かしらぁ?」
「可愛いお洋服でいっぱいですわ、見ているだけで楽しくなりますの。あら、寝間着も売っていますのね。どれもフワフワで可愛いですわ……そうですわ、閃きましたの!」
「何を閃いたのかしらぁ?」
「ねえヴァーミリア、今夜は何かご予定ありますの?」
「いいえ、特に予定はないわよぉ」
「でしたらワタクシ達と一緒に、寝間着で女子会なんてどうですの?」
「寝間着で女子会?」
「皆で可愛い寝間着を着て、女の子だけで遅くまでお喋りですわ」
「あらあらぁ、それはとってもステキねぇ」
可愛いもの大好きなヴァーミリアは、シャルロットの提案に大喜びだ。
「決まりですわ、今夜着る寝間着を一緒に選びましょうですの」
「ふふぅ、楽しみだわぁ」
シャルロットとヴァーミリアは仲よく手を繋いで服飾店へと入っていく、どんな寝間着を選ぶのか楽しみだ。
ところで気づけばゼーファードは姿を消している、一体どこへ消えたのやら。残されたナターシャとジュウベエは、どうしたものかと辺りをキョロキョロ。
「どうする人間、俺達もお菓子屋に入るか?」
「いえ、私はあちらのお店が気になって……」
「あれは魔界の地方料理を扱っている店だな」
「魔界の地方料理ですか、どのようなお料理なのでしょう?」
「珍品ばかりで誰も寄りつかない店だ、俺も詳しくは知らん」
「珍品ばかり!」
珍品と聞くや否やナターシャはキラキラと目を輝かせる、今にも目から光線を放ちそう。
「あー……いきたいのか?」
「いきたいです!」
「そうか……いくか?」
「はいっ、ありがとうございます!」
ナターシャはジュウベエの手を引いて地方料理のお店へ突撃。まるで父親と娘のような、なんとも微笑ましい光景である。
楽しみ方は三者三様、それぞれ魔界を存分に満喫するウルリカ様達なのであった。
ポカポカ陽気のお昼時、だというのにドラルグは鬱々と項垂れていた。
「グルル……ウルリカ様、楽シソウダ……」
城の中から聞えてくるウルリカ様達の楽しそうな声、どうやら城下町から戻ってきたらしい。しかし外へは出てきてくれず、ドラルグは魔王城の外でポツンと寂しく過ごしているのだ。
「我モウルリカ様ト遊ビタイ……」
ドラルグは寂しさのあまり今にも泣き出してしまいそう、とそこへ──。
「あ、こんにちは」
「グルル、ウルリカ様ノゴ友人カ?」
やってきたのはオリヴィアだ、ドラルグの巨体に驚きつつも笑顔でペコリとお辞儀をする。
「オリヴィアと申します、確かドラルグ様ですよね?」
「ソノ通リ、黒竜ドラルグトハ我ノコトデアル……」
「あの、何やら元気がないようです……」
「グルル……聞イテクレルカ少女ヨ」
「私でよろしければ」
「我モウルリカ様ト一緒ニ遊ビタイノダ。シカシ我ノ巨体デハ、謁見ノ間ト宴会場以外ノ場所ヘ入レナイ。我ダケ外ニ取リ残サレテ寂シイノダ、グルル……」
大きな体をションボリ丸め、長い尻尾を地面にペタリ。いつもの雄々しい姿はどこへやら、気のせいか一回り小さくなったようにすら感じる。
「ウルリカ様、外ヘ出テキテクレナイダロウカ……」
「そうでしたか、でしたら私にお任せください」
そう言い残してオリヴィアはどこかへ走り去ってしまう。そして数分後、ガラガラと配膳台を押して再び登場。
「何ヲ持ッテキタノダ?」
「溶かしたチョコレートとマシュマロです、一緒に食べましょう」
「チョコレート? マシュマロ? ナゼ我ガソノヨウナモノヲ?」
「チョコレートフォンデュですよ、いいから食べてください」
オリヴィアはマシュマロをチョコレートに潜らせ、ドラルグの口にポイッと放り込む。
「ホウ、甘ク蕩ケル味ワイダ」
「おいしいですよね、それにとってもいい香りです」
「悪クナイ、モウ一ツイタダコウ」
「はいっ」
オリヴィアとドラルグは仲よくチョコレートフォンデュをパクパク、とそこへ──。
「この甘い匂いはなんじゃー!」
どこからともなくウルリカ様登場、どうやら蕩けるチョコレートの香りを嗅ぎつけた模様。
「なんじゃそれは!」
「ドラルグ様と一緒にチョコレートフォンデュを食べていたのです」
「チョコレートフォンデュじゃとー!?」
トロトロのチョコレートにフワフワのマシュマロ、甘いもの大好きなウルリカ様は当然ながら大興奮である。
「妾も食べたいのじゃ、チョコレートをフォンデュしたいのじゃ!」
「もちろんです、いいですよねドラルグ様?」
「オオウッ、ウルリカ様モ一緒ニ食ベマショウ!」
「わーいなのじゃ、チョコレートをフォンデュなのじゃ!」
ウルリカ様はマシュマロをチョコレートに潜らせ、次々と口へ放り込んでいく。その流れでフォンデュしたマシュマロの一つをドラルグの口目掛けてポイッ。
「ほれ、ドラルグも食べるのじゃ」
「グルルッ!? ウルリカ様カラ食ベサセテモラエルトハ、ナントイウ至福ノ時間!」
「よかったですねドラルグ様」
「マサカ少女ヨ、コウナルコトヲ見越シテチョコレートフォンデュヲ用意シテクレタノカ?」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
「ナントイウ聡イ少女ナノダ! グルルルゥ、我ハ大イニ感謝シテイルーッ!」
ドラルグは感謝の雷で晴れ渡る空をゴロゴロと貫く、先ほどまでのションボリな姿はどこへやら。そうこうしていると──。
「あら、いい香りですわ」
「あれはチョコレートフォンデュでしょうか?」
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