魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

魔界へ

 晴れ渡る青い空、優雅に漂う白い雲。
 いよいよ今日からロームルス学園は長期のお休みに突入だ。ウルリカ様達は魔界へ出発するべく、ロームルス城の訓練場に集まっていた。お見送りはヴィクトリア女王、アルフレッド、クリスティーナ、そしてエリザベスの四人である。

「いいお天気なのじゃ、帰省日和なのじゃ!」

「ウルリカ様、そんなに走ると転んでしまいますよ」

「心配無用じゃ、妾は平気なのじゃー!」

 いつものお寝坊さんはどこへやら、ウルリカ様は朝から元気いっぱいだ。ロームルス城の訓練場をパタパタと走り回っている。
 ちなみに魔界へいく方法はウルリカ様の時空間魔法である。走り回れるほどの広さを有する訓練場であれば、時空間魔法による余波を心配する必要はない。

「ふふっ、はしゃぐウルリカちゃんは可愛らしいわ」

「あの調子で昨夜からは大騒ぎですのよ、寝かしつけるのに一苦労でしたわ」

「楽しみで眠れないと言っていましたね、でも実は私も楽しみで眠れませんでした!」

「ふふっ、実はワタクシもですの!」

 ウルリカ様に負けず劣らず、シャルロットとナターシャもワクワクしている様子。オリヴィアだけはウルリカ様の世話で手いっぱい、ワクワクする余力もなくゲッソリしている。

「せっかくの魔界ですもの、思いっきり楽しんでくるのよ」

「もちろんですわ、お土産を楽しみにしててくださいですの!」

「魔界のお土産か、大いに楽しみだな! 期待しているぞシャルロット!」

「ところで……お父様……遅い……」

「今朝方まで執務をこなしていたからね、寝坊しているのではないかな?」

 そろそろ出発の時間に差しかかるころ、しかしどういうわけかゼノン王の姿は見えない。寝坊だろうかと心配していたところへ、ドタバタと慌ただしい足音が聞えてくる。

「はぁ……はぁ……、待たせたな!」

 出発ギリギリになってようやく姿を見せたゼノン王、その風体はなんとも異様なものであった。ボサボサの髪に着崩れた服、どうにも一国の王とは思えない見てくれだ。

「あー……父上、その身だしなみは?」

「先ほどまで執務をこなしていたからな、身だしなみを整える時間はなかった。しかし聞いて驚けアルフレッド、執務は完璧に終わらせたぞ」

「本当に終わらせたのですか? 最低でも一週間は要する量の執務でしたよ、それを僅か三日で?」

「流石に三日間の徹夜は堪えた……しかし俺はやり遂げてみせたぞ、これぞ国王の本気というものだ!」

 目の下に浮かぶ深いクマは、三日間にも及ぶ徹夜によるものらしい。それにしても普段から本気を出しておけばいいものを。

「なあ父上、その荷物は?」

「よくぞ聞いてくれたエリザベス、これは魔界へのお土産だ!」

 ゼノン王はクルリを振り返り、その背に担いだ大量の荷物を見せびらかす。引っ越しでもするかのような荷物の量だ、果たして何人分のお土産を用意したのやら。

「ロムルス王国の名産をふんだんに詰め込んである、そして……」

「そして……何……?」

「秘蔵を酒をたっぷり用意した、やはり土産は酒に限る!」

「お父様……はしゃぎすぎ……」

「まったく子供みたいね」

 妻と娘に呆れられるも、ゼノン王はまったく気にしない。

「さあウルリカ、出発しようか!」

「うむ、では魔界へいくとするじゃ!」

 ウルリカ様は一呼吸おき、膨大な魔力を一気に解き放つ。溢れる魔力は魔法陣を形成し、ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャ、そしてゼノン王を包み込む。

「時空間魔法なのじゃ!」

 迸る魔力、天を貫く光の柱。
 こうしてウルリカ様達は、魔界へと旅立ったのであった。

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