魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

王都観光?

 王都ロームルスの城下町を縦断する一本の大通り。
 国内外から集る様々な品。それらの品を目当てに多くの人々が訪れる、王都で最も賑やかな通りである。

「はぁ……」

 行き交う人々に紛れて歩く憂鬱気な一人の少女。
 黒を基調とした聖職者を思わせる衣服に身を包む、長い髪を左右で結んだ幼い顔立ちの少女だ。

「ロームルス学園がお休みだなんて思わなかった。ヨグソードの在り処も分からないし、これじゃ王都まできた意味ないじゃん!」

 ガレウス邪教団の最高幹部にして上位魔人の一角、魔人リィアンはトボトボと大通りを歩いていく。どうやらアブドゥーラやザナロワの言いつけを破り、独断で王都ロームルスに侵入したようだ。
 目的なもちろん時空剣ヨグソードの奪取だろう、しかしヨグソードを発見出来ずにすっかり落胆している。

「それはそうと串焼きって凄い、人間の料理なのにおいしい!」

 落胆していたかと思いきや、コロッと表情を変えて串焼きの味にご満悦だ。どこかの露店で買ったのだろうか、両手に持った串焼きを次から次へと平らげていく。

「はむ……はむ……おいしすぎて止まらない、んん?」

 リィアンはピタリと手を止め、服飾用品の並んだ露店を覗き込む。並んだ品々を物色すると、今度は隣の雑貨店へと足を運ぶ。

「この髪飾り可愛いなー、こっちの置時計もステキ!」

 もはや完全に食べ歩きをする観光客である、しかし本人にその自覚はまったくない。

「人間の町って意外と楽しいかも……ん?」

 しばらく観光を続けていたリィアンは、不意に足を止め遥か遠くを凝視する。視線の先では四人の学生らしき少女達と、背の高い女性が買い物を楽しんでいた。
 その中の一人をじっと見つめ、正確には腰に下げられた白銀の剣をじっと見つめ、リィアンは勝ち誇った笑みを浮かべる。

「ヨグソード見っけ」

 そう言うとリィアンは食べ終わった串焼きをポイッと放り捨て、買い物を楽しむ五人組、ウルリカ様達の後を追いかけるのだった。

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