魔王様は学校にいきたい!
終幕
パラテノ森林の激戦はノイマン学長とアルフレッドの勝利で幕を閉じた。一方そのころ、ウルリカ様達の舞台劇は大詰めに入っていた。
舞台上で睨みあうウルリカ様とアンナマリア、緊迫感のある展開に観客は釘づけである。そしていよいよ舞台劇は最後の場面へと突入する──。
──勇者アンナと大魔王ウルリカは、お互いに一歩も譲りません。お菓子をかけた運命の戦いは三日三晩も続きました。
「なかなかやるのじゃ、しかし勝つのは妾なのじゃ!」
「こっちのセリフっす、そろそろトドメを刺してやるっす!」
そして四日目の朝、ついに戦いは決着を迎えるのです。お互いに最後の力を振り絞ろうとした、その時!
「覚悟するのじゃ──すってん!?」
大魔王ウルリカは飛びかかろうとした拍子に、足をもつれさせて転んでしまったのです。千載一遇の好機を勇者アンナは見逃しません、と思いきや!
「油断したっすね、私の勝ちっす──すってん!?」
なんと勇者アンナまで足をもつれさせて転んでしまったではありませんか。すってんころりんと転んだ二人は、勢いあまって真正面からゴチンとぶつかってしまいます。
「痛いっす!」
「うむむ……大変なのじゃ!」
大魔王ウルリカは慌てて起きあがり、懐から小さな包みを取り出します。包みを開くとそこには、バラバラに割れたクッキーが入っていました。
「妾のクッキーが割れてしまったのじゃ!」
「あー……それはご愁傷様っす」
「あとで食べようと楽しみにしておったのじゃ!」
大好物のクッキーが割れてしまい、大魔王ウルリカはワンワンと大泣きです。見かねた勇者アンナは、懐から小さな包みを取り出して大魔王ウルリカに差し出します。
「むぅ……これはなんじゃ……」
「私のクッキーっす」
包みの中身は二枚の小さなクッキーでした。クッキーを見た大魔王ウルリカは、目をキラキラと輝かせます。
「クッキーなのじゃ、おいしそうなのじゃ!」
「仕方ないっすから、私のクッキーを一枚あげるっす」
「なんじゃと、よいのか!?」
「一枚だけっすよ?」
「ありがとうなのじゃ、いただくのじゃ!」
二人は一枚ずつクッキーを手に取り、おいしそうにポリポリと頬張ります。つい先ほどまで激しい戦いを繰り広げていたというのに、すっかりクッキーに夢中です。
「ポリポリ……おいしいのじゃ!」
「当然っす、とっておきのクッキーっす」
「いつも食べるクッキーよりおいしく感じるのじゃ」
「独り占めして食べるクッキーより、誰かと一緒に食べるクッキーの方がおいしいっすよ」
「なんと、そうなのか!」
「そうっすよ、お菓子はみんなで食べるからおいしいっす!」
「ポリポリ……おいしいのじゃ!」
「ポリポリ……おいしいっすね!」
おいしいクッキーに満足したのか、二人とも戦いを続ける意思はなくしてしまったようです。
「分かったのじゃ、これからは独り占めせずにみんなでお菓子を食べるのじゃ!」
「それはよかったっす、だったら退治するのはやめてあげるっす」
「これからも一緒にお菓子を食べておくれなのじゃ!」
「し、仕方ないっすねー」
こうして、お菓子をかけた運命の戦いは決着を迎えました。大魔王ウルリカは世界中にお菓子を配り、人々は甘々で幸せな生活を取り戻しました。
そして勇者アンナと大魔王ウルリカはお友達になり、一緒にお菓子を食べながら平和に暮らしましたとさ──。
──「めでたしめでたし」の締め括りと同時に、観客は立ちあがり惜しみない拍手をおくる。
ほんわか幸せな結末に、ロムルス王家御一行も大満足の様子だ。
「終わりよければ全てよし、いい台本だったぞシャルロット!」
「二人とも可愛らしかったわよ! 抱っこしちゃいたい!」
「面白い……舞台だったわ……、魔法の演出も……素晴らしかった……」
「戦いの場面は手に汗握ったな、つい熱くなってしまった!」
「お菓子をきっかけに平和を取り戻すとは、なかなかに興味深い展開でしたね」
小道具を折ってしまうという騒ぎはあったものの、無事に終幕を迎えて一安心である。とそこへボロボロのノイマン学長とアルフレッドが駆けつける。
「はぁ……はぁ……まさか!?」
「ウソだと言ってほしいですな……」
舞台上でお辞儀をするウルリカ様とアンナマリアを見て、二人はグルングルンと目を回す。そして──。
「「間にあわなかったーっ!?」」
二人揃ってバターンとその場に倒れてしまうのだった。
舞台上で睨みあうウルリカ様とアンナマリア、緊迫感のある展開に観客は釘づけである。そしていよいよ舞台劇は最後の場面へと突入する──。
──勇者アンナと大魔王ウルリカは、お互いに一歩も譲りません。お菓子をかけた運命の戦いは三日三晩も続きました。
「なかなかやるのじゃ、しかし勝つのは妾なのじゃ!」
「こっちのセリフっす、そろそろトドメを刺してやるっす!」
そして四日目の朝、ついに戦いは決着を迎えるのです。お互いに最後の力を振り絞ろうとした、その時!
「覚悟するのじゃ──すってん!?」
大魔王ウルリカは飛びかかろうとした拍子に、足をもつれさせて転んでしまったのです。千載一遇の好機を勇者アンナは見逃しません、と思いきや!
「油断したっすね、私の勝ちっす──すってん!?」
なんと勇者アンナまで足をもつれさせて転んでしまったではありませんか。すってんころりんと転んだ二人は、勢いあまって真正面からゴチンとぶつかってしまいます。
「痛いっす!」
「うむむ……大変なのじゃ!」
大魔王ウルリカは慌てて起きあがり、懐から小さな包みを取り出します。包みを開くとそこには、バラバラに割れたクッキーが入っていました。
「妾のクッキーが割れてしまったのじゃ!」
「あー……それはご愁傷様っす」
「あとで食べようと楽しみにしておったのじゃ!」
大好物のクッキーが割れてしまい、大魔王ウルリカはワンワンと大泣きです。見かねた勇者アンナは、懐から小さな包みを取り出して大魔王ウルリカに差し出します。
「むぅ……これはなんじゃ……」
「私のクッキーっす」
包みの中身は二枚の小さなクッキーでした。クッキーを見た大魔王ウルリカは、目をキラキラと輝かせます。
「クッキーなのじゃ、おいしそうなのじゃ!」
「仕方ないっすから、私のクッキーを一枚あげるっす」
「なんじゃと、よいのか!?」
「一枚だけっすよ?」
「ありがとうなのじゃ、いただくのじゃ!」
二人は一枚ずつクッキーを手に取り、おいしそうにポリポリと頬張ります。つい先ほどまで激しい戦いを繰り広げていたというのに、すっかりクッキーに夢中です。
「ポリポリ……おいしいのじゃ!」
「当然っす、とっておきのクッキーっす」
「いつも食べるクッキーよりおいしく感じるのじゃ」
「独り占めして食べるクッキーより、誰かと一緒に食べるクッキーの方がおいしいっすよ」
「なんと、そうなのか!」
「そうっすよ、お菓子はみんなで食べるからおいしいっす!」
「ポリポリ……おいしいのじゃ!」
「ポリポリ……おいしいっすね!」
おいしいクッキーに満足したのか、二人とも戦いを続ける意思はなくしてしまったようです。
「分かったのじゃ、これからは独り占めせずにみんなでお菓子を食べるのじゃ!」
「それはよかったっす、だったら退治するのはやめてあげるっす」
「これからも一緒にお菓子を食べておくれなのじゃ!」
「し、仕方ないっすねー」
こうして、お菓子をかけた運命の戦いは決着を迎えました。大魔王ウルリカは世界中にお菓子を配り、人々は甘々で幸せな生活を取り戻しました。
そして勇者アンナと大魔王ウルリカはお友達になり、一緒にお菓子を食べながら平和に暮らしましたとさ──。
──「めでたしめでたし」の締め括りと同時に、観客は立ちあがり惜しみない拍手をおくる。
ほんわか幸せな結末に、ロムルス王家御一行も大満足の様子だ。
「終わりよければ全てよし、いい台本だったぞシャルロット!」
「二人とも可愛らしかったわよ! 抱っこしちゃいたい!」
「面白い……舞台だったわ……、魔法の演出も……素晴らしかった……」
「戦いの場面は手に汗握ったな、つい熱くなってしまった!」
「お菓子をきっかけに平和を取り戻すとは、なかなかに興味深い展開でしたね」
小道具を折ってしまうという騒ぎはあったものの、無事に終幕を迎えて一安心である。とそこへボロボロのノイマン学長とアルフレッドが駆けつける。
「はぁ……はぁ……まさか!?」
「ウソだと言ってほしいですな……」
舞台上でお辞儀をするウルリカ様とアンナマリアを見て、二人はグルングルンと目を回す。そして──。
「「間にあわなかったーっ!?」」
二人揃ってバターンとその場に倒れてしまうのだった。
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