魔王様は学校にいきたい!
勝利の夜
危機を退けたロアーナの町は歓喜に包まれていた。
住人達は喜びのあまり、町中の酒を引っ張り出して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。すっかり夜も更けたというのに、賑やかさは増すばかりである。
ヴィクトリア女王は町を救った英雄として、お祭り騒ぎに参加させられている。「町の被害状況を確認したい」と訴えていたが、盛りあがりすぎた住人達はヴィクトリア女王を強制連行してしまったのだ。
一方、下級クラスの生徒達はというと──。
「ぐっ……ぐうぅっ……!」
「おいシャルル、大丈夫かよ?」
「心配するなベッポ……筋力増強魔法の副作用で全身筋肉痛なだけだ……、しばらく休めば回復する……」
「副作用のある魔法なんて聞いたことありませんね……そうだ、オリヴィアさんの回復魔法は効きませんかね?」
「ごめんなさいヘンリー様、シャルル様。昼間の戦いで魔法を使いすぎたせいか、しばらく魔法は使えそうにありません……」
「気にしないでくれオリヴィア嬢、これくらいの筋肉痛は自力で治してみせる!」
生徒達は町の宿屋で、戦いの疲れを癒しつつヴィクトリア女王の帰りを待っていた。
「それにしてもヴィクトリア様は遅いですね、もう夜中なのに……」
「住人達が放してくれないんだろ、なにしろ町を救った英雄だからな」
「ヴィクトリア様の人気は凄いな! ヴィクトリア様を連れて行く時の、住人達の盛りあがりっぷりときたら!」
「お美しいうえにカッコいい、しかもみんなから大人気! 生徒として誇らしいです!」
「そう……ですわね……」
ヴィクトリア女王の人気っぷりを生徒達は嬉しそうに語っている。
そんな中シャルロットだけは、しんみりとした様子で俯いている。昼間の戦闘で母親ヴィクトリア女王を危険にさらしてしまったのだ、落ち込むのも無理はない。
落ち込むシャルロットを心配して、オリヴィアはウルリカ様に相談しようとするが──。
「すやぁ……すやぁ……」
昼間のカッコいい姿はどこへやら、ウルリカ様はぐでーんとだらしない恰好で眠りこけている。
だらしないウルリカ様の姿に空気が緩んだちょうどその時、部屋の扉が開かれる。
「ただいま、遅くなっちゃったわね」
「お帰りなさいヴィクトリア様……と、クリスティーナ様とエリザベス様?」
扉を開けて現れたのは、ヴィクトリア女王とクリスティーナ、そしてエリザベスである。
「町の被害状況を確認しに来たところ、住人達に捕まってな……」
「住人のみんな……大騒ぎをしていた……はぁ……」
「二人とも揉みくちゃにされていたから、救出してあげたのよ」
どうやらクリスティーナとエリザベスは、お祭り騒ぎに巻き込まれてしまったようだ。よほどの大騒ぎだったのだろう、二人ともずいぶんゲッソリとしている。
「それはそうと下級クラスのみんな、昼間はロアーナの町を救ってくれて感謝する! みんなの活躍を聞いたときは心が躍ったものだ!」
「頑張ったわね……大変だったわね……今日はゆっくり休んでね……」
ゲッソリとしているものの、クリスティーナとエリザベスは生徒達への労いを忘れない。ほんわか柔らかな雰囲気が、部屋を優しく包み込む。
そんな中シャルロットはおずおずと口を開く。
「お母様……昼間のことは申し訳──」
「謝ったって許されないわよ」
「えっ!?」
ヴィクトリア女王の声色は、そして視線は鋭く厳しいものだ。先ほどまでとは打って変わって、ピリピリとした緊張感が部屋を包み込む。
「昼間の先生命令を覚えているかしら? 急いで屋敷に避難するよう伝えたはずよね?」
「はい……」
「なのにシャルロット、あなたは自分の判断で町に残ろうとしたそうね?」
「でも国民を……住人を残していくわけには……」
「あなたの勝手な判断で、クラスメイトは危険な目にあったのよ。大切な命が失われていたかもしれないのよ」
「はい……」
「謝って許されることではないわ、しっかり反省しなさい」
「……はい……」
厳しく叱られたシャルロットは、小さく返事をするだけで精いっぱいだ。そんなシャルロットを横目に、ヴィクトリア女王はクリスティーナとエリザベスを連れて部屋から出て行ってしまう。
重苦しい雰囲気の中、シャルロットはゆっくりと立ちあがる。
「シャルロット様、どちらへ行かれるのですか?」
「少し……風にあたってくるわ……」
「でしたら私も一緒に──」
「ごめんなさいナターシャ、しばらく一人にして……」
そう言うとシャルロットは、肩を震わせながら部屋を出て行ってしまう。
残されたクラスメイトは、シャルロットの背中を見送ることしか出来なかった。
住人達は喜びのあまり、町中の酒を引っ張り出して飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。すっかり夜も更けたというのに、賑やかさは増すばかりである。
ヴィクトリア女王は町を救った英雄として、お祭り騒ぎに参加させられている。「町の被害状況を確認したい」と訴えていたが、盛りあがりすぎた住人達はヴィクトリア女王を強制連行してしまったのだ。
一方、下級クラスの生徒達はというと──。
「ぐっ……ぐうぅっ……!」
「おいシャルル、大丈夫かよ?」
「心配するなベッポ……筋力増強魔法の副作用で全身筋肉痛なだけだ……、しばらく休めば回復する……」
「副作用のある魔法なんて聞いたことありませんね……そうだ、オリヴィアさんの回復魔法は効きませんかね?」
「ごめんなさいヘンリー様、シャルル様。昼間の戦いで魔法を使いすぎたせいか、しばらく魔法は使えそうにありません……」
「気にしないでくれオリヴィア嬢、これくらいの筋肉痛は自力で治してみせる!」
生徒達は町の宿屋で、戦いの疲れを癒しつつヴィクトリア女王の帰りを待っていた。
「それにしてもヴィクトリア様は遅いですね、もう夜中なのに……」
「住人達が放してくれないんだろ、なにしろ町を救った英雄だからな」
「ヴィクトリア様の人気は凄いな! ヴィクトリア様を連れて行く時の、住人達の盛りあがりっぷりときたら!」
「お美しいうえにカッコいい、しかもみんなから大人気! 生徒として誇らしいです!」
「そう……ですわね……」
ヴィクトリア女王の人気っぷりを生徒達は嬉しそうに語っている。
そんな中シャルロットだけは、しんみりとした様子で俯いている。昼間の戦闘で母親ヴィクトリア女王を危険にさらしてしまったのだ、落ち込むのも無理はない。
落ち込むシャルロットを心配して、オリヴィアはウルリカ様に相談しようとするが──。
「すやぁ……すやぁ……」
昼間のカッコいい姿はどこへやら、ウルリカ様はぐでーんとだらしない恰好で眠りこけている。
だらしないウルリカ様の姿に空気が緩んだちょうどその時、部屋の扉が開かれる。
「ただいま、遅くなっちゃったわね」
「お帰りなさいヴィクトリア様……と、クリスティーナ様とエリザベス様?」
扉を開けて現れたのは、ヴィクトリア女王とクリスティーナ、そしてエリザベスである。
「町の被害状況を確認しに来たところ、住人達に捕まってな……」
「住人のみんな……大騒ぎをしていた……はぁ……」
「二人とも揉みくちゃにされていたから、救出してあげたのよ」
どうやらクリスティーナとエリザベスは、お祭り騒ぎに巻き込まれてしまったようだ。よほどの大騒ぎだったのだろう、二人ともずいぶんゲッソリとしている。
「それはそうと下級クラスのみんな、昼間はロアーナの町を救ってくれて感謝する! みんなの活躍を聞いたときは心が躍ったものだ!」
「頑張ったわね……大変だったわね……今日はゆっくり休んでね……」
ゲッソリとしているものの、クリスティーナとエリザベスは生徒達への労いを忘れない。ほんわか柔らかな雰囲気が、部屋を優しく包み込む。
そんな中シャルロットはおずおずと口を開く。
「お母様……昼間のことは申し訳──」
「謝ったって許されないわよ」
「えっ!?」
ヴィクトリア女王の声色は、そして視線は鋭く厳しいものだ。先ほどまでとは打って変わって、ピリピリとした緊張感が部屋を包み込む。
「昼間の先生命令を覚えているかしら? 急いで屋敷に避難するよう伝えたはずよね?」
「はい……」
「なのにシャルロット、あなたは自分の判断で町に残ろうとしたそうね?」
「でも国民を……住人を残していくわけには……」
「あなたの勝手な判断で、クラスメイトは危険な目にあったのよ。大切な命が失われていたかもしれないのよ」
「はい……」
「謝って許されることではないわ、しっかり反省しなさい」
「……はい……」
厳しく叱られたシャルロットは、小さく返事をするだけで精いっぱいだ。そんなシャルロットを横目に、ヴィクトリア女王はクリスティーナとエリザベスを連れて部屋から出て行ってしまう。
重苦しい雰囲気の中、シャルロットはゆっくりと立ちあがる。
「シャルロット様、どちらへ行かれるのですか?」
「少し……風にあたってくるわ……」
「でしたら私も一緒に──」
「ごめんなさいナターシャ、しばらく一人にして……」
そう言うとシャルロットは、肩を震わせながら部屋を出て行ってしまう。
残されたクラスメイトは、シャルロットの背中を見送ることしか出来なかった。
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