魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

ヴィクトリア女王

 ロアーナの町に魔物が押し寄せる。
 スカーレットによってもたらされた報せは、予想だにしない恐るべきものであった。

「どういうことですの? どうしてロアーナの町に魔物が押し寄せますの!?」

「落ちつきなさいシャルロット、まずはスカーレットのお話を聞くべきだわ」

「そ、そうですわね……」

 報せを聞いたシャルロットは動揺を隠せない。しかしヴィクトリア女王の言葉で、なんとか落ちつきを取り戻す。

「スカーレット、説明をお願い出来るかしら?」

「実は先ほどまで、ロアーナ高原に魔物の大群が発生していたのです。クリスティーナ様とエリザベス様、そして私達聖騎士は、魔物討伐のために王都から派遣されたのです」

「ロアーナ高原に魔物の大群ですって!?」

「ご安心ください、ロアーナ高原の魔物は私達とロアーナ軍兵士で討伐しました。しかし討伐した矢先、今度はロアーナの町東部に魔物が発生したのです」

「ロアーナ地方は魔物が少ないなずなのに、どういうことかしら……」

「ロアーナ軍は魔物との戦闘で疲弊しており、すぐには動けない状態です。エリザベス様とクリスティーナ様は軍を預かる身として、疲弊した兵士達を放置出来ません。そこで一番足の速い私が、伝令を仰せつかったというわけです」

「そういうことね……報告ありがとう、状況は理解したわ」

 ロアーナ高原とロアーナの町は決して近い距離ではない。にもかかわらず短時間で走り抜けたスカーレットの速力は、凄まじいものといえるだろう。
 ヴィクトリア女王は見事伝令を果たしたスカーレットを労うと、ロアーナの町へと視線を移す。

「とにかく住人の命が最優先よ、急いで全員を避難させるわ」

「でもお母様、全員を避難させる場所なんて……」

「町の西側に王家所有の屋敷があるわ。かなり広くて食料も備蓄してある、そこに住人を避難させましょう」

 永らく国政にかかわってきただけあって、ヴィクトリア女王の判断は早い。

「疲れているところ悪いけれど、スカーレットも力を貸して」

「もちろんです! ロアーナの町には駐屯兵もいます、彼等にも協力を仰ぎましょう!」

「私も先頭に立って避難を呼びかけるわ、一刻も早く住人の非難を完了させるわよ!」

「かしこまりまし──えぇっ、ヴィクトリア様が先頭に立つ!?」

 スカーレットが驚くのも無理はない。なんと王族であるヴィクトリア女王が、危険を顧みず避難活動に参加すると言っているのだ。

「ヴィクトリア様は王族なのですよ、最優先で避難されるべきです!」

「私はロアーナ出身なの、ロアーナの町ではとっても人気者なのよ。私から直接呼びかければ、みんな落ちついて話を聞いてくれるはずだわ。それに──」

「それに……?」

「愛する国民を置き去りにして、逃げるわけにはいかないわよ」

 ヴィクトリア女王の言葉には、そして瞳には強い意思が宿っている。なにを言っても説得は出来なさそうだ。

「分かりました……ならば私の命に代えても、ヴィクトリア様をお守りします!」

「ありがとうスカーレット」

「あの……ワタクシ達は……」

「みんなは急いで屋敷に避難しなさい」

「でもお母様を残して──」

「これは先生命令よ、いいわね?」

「うっ……分かりましたわ……」

 こうしてヴィクトリア女王とスカーレットは、ロアーナ軍の駐屯所へと向かっていく。
 そして残された下級クラスは──。

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