魔王様は学校にいきたい!
父と息子
アルテミア正教会、大聖堂内部。
輝く白亜の回廊を三つの人影が走っていた。ナターシャの救出へと向かう、オリヴィア、シャルロット、シャルルの三人である。
「教主様は礼拝堂におられるはずだ! このまま真っ直ぐ進むんだ!」
シャルルを先頭に回廊を駆け抜ける三人。しかし勢いよく角を曲がったところで、ピタリと足を止めてしまう。
「待っていたぞ、侵入者達よ!」
白い鎧を着た騎士達に通路を塞がれていたのである。ズラリと並ぶ屈強な騎士達は、ビリビリと鋭い威圧感を放っている。
「しまった! 神官騎士団だ!」
「「神官騎士団!?」」
「神官騎士団はアルテミア正教会の誇る精鋭の騎士団だ! 自分達でどうにか出来る相手ではない!」
「大変です! 挟まれてしまいました!」
オリヴィアの声に慌てて振り向くと、後方の通路も神官騎士団に塞がれてしまっている。どうやらまんまと挟み撃ちにされてしまったようだ。
「痛い思いをしたくなければ、大人しく捕まることだな!」
シャルロット達を捕らえるべく、神官騎士団はじりじりと距離を詰めてくる。前後を神官騎士団に挟まれ、絶望的な状況に追い込まれたその時、神官騎士達の隙間から一人の男が飛び出してくる。
「待ってくれ、あの子に乱暴をしないでくれ! 私の息子なんだ、少し話をさせてくれ!!」
「ふぇっ、父さん!?」
なんと飛び出してきたのはシャルルの父親だったのだ。あまりにも予想外の出来事に、シャルルは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「そういえば父さんは、教主様のおもてなしをしているのだったな……すっかり忘れていた……」
シャルルの父親はアルテミア正教会の神父である。教主アンナマリアをもてなすため大聖堂へ招集されていたところ、偶然にも息子が乗り込んできたというわけだ。父親からしてみれば心臓が止まるほど驚いたことだろう。
「シャルル! これは一体なんの騒ぎだ!」
「友達を……教主様に友達を誘拐されたんだ!」
「友達を誘拐? まさか……先ほど連れてこられた少女は、シャルルの友達だったのか!?」
「そうだ! 自分は友達を連れ戻しにきたのだ! 頼む父さん、道を空けてくれ!」
「くっ……ダメだ! 侵入者であるお前を、教主様にあわせるわけにはいかん!」
じっと睨みあう父と息子。
父親にはアルテミア正教会の神父という立場もある。シャルルの事情を知ったからといって、簡単に道を譲ることは出来ない。
「お前の気持ちは分かる……しかし教主様は絶対的な存在だ! どんな理由があろうとも、教主様に逆らうようなことは許されない!」
「くっ……しかし!」
「お前が罪に問われないよう、私からも頼んでみる。まだ間にあう……冷静になってくれ……」
「父さん……」
「シャルルよ……お前のことを大切に思っているんだ……。分かってくれないか……?」
そう言うと父親は、シャルルに向かってそっと手を差し伸べる。その表情や態度からは、息子を心配する気持ちが溢れている。
手を差し伸べられたシャルルは、無言で頷くと父親の元へと歩いていく。
「そんなっ、シャルル様!?」
「行ってはダメですわ! ナターシャのことはどうしますの!」
オリヴィアとシャルロットの言葉も虚しく、シャルルは父親の手を取る。
そして──。
輝く白亜の回廊を三つの人影が走っていた。ナターシャの救出へと向かう、オリヴィア、シャルロット、シャルルの三人である。
「教主様は礼拝堂におられるはずだ! このまま真っ直ぐ進むんだ!」
シャルルを先頭に回廊を駆け抜ける三人。しかし勢いよく角を曲がったところで、ピタリと足を止めてしまう。
「待っていたぞ、侵入者達よ!」
白い鎧を着た騎士達に通路を塞がれていたのである。ズラリと並ぶ屈強な騎士達は、ビリビリと鋭い威圧感を放っている。
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「待ってくれ、あの子に乱暴をしないでくれ! 私の息子なんだ、少し話をさせてくれ!!」
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