魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

真祖

「「ウルリカ!?」」

 突然現れたウルリカ様。
 ゼノン王とルードルフは、頭を抱えて困ってしまう。

「ひひいぃ~っ!?」

 そしてノイマン学長は、ウルリカ様の足元にひれ伏している。
 現れただけで大混乱だ。

「ウルリカよ、なにか用事か?」

「うむ! 明日から学校じゃからな、持っていく鞄を見せてやろうと思ったのじゃが……」

 鞄を片手に、クルクルっと回ってみせるウルリカ様。
 スカートがフワリと浮きあがり、とても可愛らしい仕草だ。

「なにやら取り込み中のようじゃな?」

「ウルリカ! 待ってウルリカ!!」

 今度は扉の外から、可愛らしい声が飛び込んでくる。
 慌てた様子のシャルロットが、ウルリカ様を追いかけてきたのだ。

「ウルリカ! 勝手に入ってはダメよ!」

「そうじゃな、ゼノンは忙しいようじゃ……」

「ごめんなさいお父様、すぐに出ていきますから」

 一気に賑やかになる執務室。
 そんな中ゼノン王は、ウルリカ様を見つめてニヤリと笑みを浮かべる。

「待てシャルロット、丁度いいかもしれん」

「陛下、悪い顔つきになっていますよ。なにを考えているのですか?」

「おい、人聞きの悪いことを言うな……」

 コソコソと耳打ちをするルードルフに、コソコソと耳打ちで返すゼノン王。

「ウルリカは魔王だ、つまり魔物に関しては専門家だ。吸血鬼についても詳しいかもしれん」

「そうですね、本物の魔王であれば……」

「本物だと言っただろう? とにかくだ、専門家の意見は聞いておくべきだろう?」

「しかしウルリカを怒らせると、国が滅ぶかも知れないのでしょう?」

「俺に任せておけ、上手くやってみせる」

「はぁ……分かりましたよ」

 相談を終える二人。
 ウルリカ様に視線を移すと、ノイマン学長の前でクルクルと回っていた。

「どうじゃ? 似合うか?」

「もちろんですとも! よくお似合いですな!!」

「本当か! ありがとうなのじゃ!」

 通学姿をお披露目しているだ。
 呑気なウルリカ様である。

「ウルリカよ、聞きたいことがある」

「なんじゃ? 鞄のことか? 中身は筆記用具と──」

「いや、そうではなくてだな……」

 話をさえぎられて、残念そうな顔をするウルリカ様。
 しかしゼノン王は、構わずに話を続ける。

「ウルリカは吸血鬼について、詳しかったりするだろうか?」

「もちろん詳しいのじゃ、妾も吸血鬼じゃからな!」

「そうか、ウルリカも吸血鬼か……」

 あっさりと答えるウルリカ様。
 一瞬の沈黙が流れ──。

「「「「はあぁっ!?」」」」

 一斉に声をあげる四人。

「待て待て! ウルリカは吸血鬼なのか!?」

「正確には真祖じゃな、そこらの吸血鬼とは少し違うのじゃ」

「なんだ真祖か……」

 そして再び沈黙が流れ──。

「「「「真祖ぉ!?」」」」

 一斉に立ちあがる四人。
 驚きすぎて、シャルロットの顔色は真っ青だ。
 ノイマン学長にいたっては、白い顔で昇天寸前である。

「これは大問題ですよ、本当に吸血鬼なのだとしたら……」

「なんじゃ? 吸血鬼ではダメなのか?」

 キョトンと首をかしげるウルリカ様に、ゼノン王は事情を説明をする。

「吸血鬼は人間の敵なのだ。実際に人間と吸血鬼は、遥か昔から争っている」

「そうなのか? 仲よく暮らしておるものと思っておったのじゃ」

 ウルリカ様の反応に、呆れ返ってしまう一同。
 ルードルフはポソリと疑問をこぼす。

「仲よく暮らすとは……逆になぜそう思えるのですかね……」

「なぜ、と言われてものう……」

 何気ない疑問。
 しかしウルリカ様の返答で、執務室の空気は凍りつく。

「城の中でも、たまに吸血鬼を見かけるからのう」

 ヒヤリとした空気が流れる。
 そっと顔を見あわせる四人。

「まさか……城の中、と言ったのか?」

「うむ、城の中を普通に歩いておる。だから仲よくしておると思ったのじゃ」

 高まる緊張感。
 ゼノン王の質問は続く。

「具体的にどこにいるか、教えてもらえるか?」

 そして、ウルリカ様は答える。

「この部屋にもおるぞ?」

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