魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

入学準備

「どうじゃ? 似合っておるか?」

「「きゃ~! 可愛い~!!」」

 合格発表の日から数日後。
 この日は、学園生活に必要な道具を、買い揃えるための日だ。

 ロームルス学園の購買棟に、五人の女性が集まっていた。
 ウルリカ様とオリヴィア、シャルロット、ナターシャ。
 そしてヴィクトリア女王である。

 ちなみに、ヴィクトリア女王がここにいる理由は、ただの賑やかしだ。
 ロームルス城で偶然出会い、そのままくっついてきたのである。

 そんなこんなで、購買棟の一室を借りて、準備を進める五人。
 ウルリカ様は紺色のブレザーを試着し、クルクルっと回ってみせる。

「うむ、大きさもピッタリじゃ! 気に入ったのじゃ!!」

「いいわウルリカ、とっても似合ってるわ!」

「ウルリカちゃんは可愛いわね、ステキよ!」

「そうかのう? ありがとうなのじゃ、ロティ、ヴィクトリア!」

「「はう~ん」」

 ウルリカ様の可愛らしさに、メロメロな女王と王女。
 似た者親子である。

 一方、オリヴィアとナターシャは、部屋の隅でじっとしている。
 二人の王族を前に、完全に委縮してしまっているのだ。

「なぜ……なぜ女王様までご一緒に……」

「きききっ、緊張しますぅ……」

 そうこうしている間に、ウルリカ様の試着が終わる。
 すると、シャルロットはナターシャに向かって、チョイチョイッと手招きをする。

「さぁ、次はナターシャの番よ!」

「ひぇっ!?」

 ビクリッと肩を震わせて、悲鳴をあげるナターシャ。

「せっかくだから、ナターシャちゃんの制服も私が見てあげるわ」

「ひえぇっ!?」

 ヴィクトリア女王も、チョイチョイッと手招きをしている。
 ナターシャの顔色は、緊張で真っ青だ。

「リヴィ、助けてください!」

「……頑張ってください、サーシャ……」

「そんなっ!?」

 ガーンッと膝から崩れ落ちるナターシャ。
 いつの間にか、両脇にシャルロットとヴィクトリア女王が立っている。

「ナターシャちゃんも可愛いから、きっと似合うわよ」

「そうですわね、お母様!」

「ひええぇぇ~」

 購買棟の一室に、ナターシャの悲鳴がこだまするのだった。


 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡


 場所は変わり、ここはロームルス学園の学生寮。
 その中の一室、古びた扉の前に、ウルリカ様達は立っていた。

「ここが妾達の部屋じゃな!」

「「「「……」」」」

 扉を開き、ウキウキと中へ入っていくウルリカ様。
 しかし他の四人は、気乗りしない様子だ。
 原因は室内の様子にある。

 白く、軽やかに、雪のように積もる……大量のホコリ。
 伝統的で、歴史の重みを感じさせる……オンボロな家具。
 ヒンヤリと涼やかで、明るさ控えめの……不気味な室内。
 要するに、ボロボロなのである。

「下級クラスの部屋……覚悟はしていましたが、酷いですわね」

「シャルロット様、足元に気をつけてくださいね」

 歩く度に、ギシギシと床が沈む。
 もはや廃屋のような状態である。

「やっぱり王城から通えばいいのに……部屋ならいくらでも貸すのよ?」

 ヴィクトリア女王の提案に対して、ウルリカ様は首を横に振る。

「せっかく寮があるのじゃ、こっちの方が学校っぽいのじゃ」

「そう……」

「寂しそうな顔をするでない、たまに城にも遊びに行くのじゃ!」

「約束よ? 絶対遊びに来るのよ?」

 ウルリカ様を抱っこして、嬉しそうなヴィクトリア女王。

「それにしても、このオンボロはどうしましょうか……」

「大丈夫です! 私が綺麗に掃除します!!」

 張り切るオリヴィア。
 袖をまくり、バケツを持ち、やる気満々だ。

「そうじゃ、みんなで掃除するのじゃ!」

「いえいえ、ここは私に任せてください! 皆さんはごゆっくりと──」

「いいじゃないオリヴィア。お友達と掃除なんて、楽しそうだわ」

「私も手伝います! リヴィ、一緒にやりましょう!」

「お母さんの腕の見せ所ね!」

「いえ、お母様はちょっと……」

 こうして、ワイワイと掃除にかかる五人。

 入学式は、もう目の前だ。

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