魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん / UnicornNovel

コツンッ!

「うむ! 間にあったのじゃ!!」

 突然現れたウルリカ様。
 オリヴィアを引き連れて、時空間魔法で転移してきたのだ。
 レッサードラゴンの巨大な顎を、軽々と片手で止めている。

「うぅ……うっぷ……気持ちが……」

 人生初の時空間魔法に、酔ってしまってフラフラなオリヴィア。
 真っ青な顔で、地面にへたり込んでいる。

「む? 怪我人がおるのじゃ。リヴィ、介抱を頼むのじゃ」

「怪我人……はっ、大変です! すぐに手当てします!!」

 我に返ったオリヴィアは、ナターシャへと駆け寄る。
 シャルロット王女は、なにがなんだか分からないといった様子だ。

「オリヴィア……一体どうして……?」

「説明は後です! シャルロット様はお怪我はありませんか? なければ先にナターシャ様を治療します」

「え、えぇ……ワタクシは大丈夫ですわ」

「分かりました!」

 衣服をちぎり、ナターシャの怪我を丁寧におさえていく。
 素早く止血を終わらせるオリヴィア。
 見事な手際のよさだ。

「治癒魔法を使います、シャルロット様は離れていてください」

「わ、分かったわ……」

「リヴィ! これを使うのじゃ!」

「はいっ、ありがとうございます!」

 ウルリカ様からオリヴィアへ、杖が手渡される。
 元々オリヴィアが使っていた、手のひらサイズの小さな杖だ。
 杖を受け取ったオリヴィアは、静かに魔力を集中させていく。

「しっかり頼むぞ、手に負えないようなら、妾を呼ぶのじゃ」

「かしこまりました!」

 魔力が集まり、杖の先端から光のシャワーが噴き出してくる。
 治癒魔法の温かい光によって、ナターシャの傷は徐々に癒されていく。

「ほう、見事な治癒魔法じゃな……おっと!」

「グオオォォッ!!」

 大きく口を開けるレッサードラゴン。
 口元に魔力が集中し、赤い炎がチラチラと燃えあがる。

「なるほど……妙な魔法をかけられて、混乱しておるのじゃな。可哀そうに……」

「ゴオオアアァッ!!」

 強力な炎のブレスが、ウルリカ様に襲いかかる。
 しかしウルリカ様は、余裕たっぷりの表情だ。

「ほれっ!」

 それは魔法ですらない。
 ウルリカ様は、片手で魔力を巻きあげただけ。
 にもかかわらず、強烈な突風が吹き荒れる。

「グオォッ!?」

 あっけなく空へと散っていく、炎のブレス。
 凄まじい突風にあおられて、レッサードラゴンは体勢を崩す。

「よしよし、大人しくするのじゃ」

「グルル……グルルオォッ!!」

 怒りの声をあげるレッサードラゴン。
 大きく翼を広げると、一気に空へと飛びあがる。
 しかし、その時にはすでに、地上にウルリカ様の姿はない。

「うーむ……あまり痛い思いはさせたくないのじゃが……仕方ないのじゃ」

 ウルリカ様のいる場所は、レッサードラゴンのさらに上空だ。
 魔法の力で、フワフワと浮かんでいる。

「グオォ──」

「コツンッ、じゃ!」

 コツンッ! とレッサードラゴンの頭を小突くウルリカ様。
 そして、ドゴンッ! と響き渡る、凄まじい轟音。

 頭を小突かれたレッサードラゴンは、猛烈な勢いで地面へと打ち落とされる。
 衝撃で地面は割れ、大きなクレーターが出来あがる。

「グ……グオォ……ォ……」

 土ぼこりが舞う中、ウルリカ様はゆっくりと地上に降りてくる。

「こんなものかのう、死んではおらんはずじゃ」

 圧倒的で、常識外れな戦闘力。
 ウルリカ様の力を見て、シャルロット王女は放心状態だ。

「あ……あなたは一体……」

「ん? シャルロットも知っておるじゃろう?」

 振り返り、ニパッと笑顔を浮かべるウルリカ様。

「魔王じゃ!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品