その心が白銀色に染まるなら
第二話 『厭世の記憶①』
「お前よくそんな重たいもの軽々しく持ち上げられるよなー」
俺は背中に担いでいる犬型の獣を地面に下ろしながら言った。
「まあ僕はこれくらいしか取り柄がないからね……」
そう自信なさげに言葉を漏らした少年もまた、肩に担いでいた犬型の獣を地面に下ろした。
少年の名はキール。俺が五年前、十歳になる頃この村にきて初めて出会った。
キールは気弱な性格でよく人見知りをする。それでいて陽の光のような明るい黄髪を肩まで伸ばしており、顔は年頃の少女のように可愛らしいので、よく女の子に間違えられていた。俺も初めて会った時は騙された。
そして、村に馴染めずにいた俺を率先して手助けしてくれたのはキールだったりする。
その頃からか、俺達はよくつるむようになった。
「すこし休憩するかー」
「うん、ちょっと歩き疲れたかも……」
俺の言葉にキールが呼応し、二人して木の根元に腰かける。
歩き疲れたというのも、さっきまで俺たちは狩りという名目で魔物を討伐していた。
俺達が住んでいる村は辺境にひっそりと佇むような小さな村で、動物が畑を荒らしたり、たまに魔物と呼ばれる大型の獣が村を荒らしに来ることがある。
なので俺達は、それを未然に防ぐために魔物を狩っているというわけだ。
そして、もう一つ魔物を狩る理由がある。
「はぁ……アリア元気にしてるかなぁー」
「ん? 気になるのか?」
「まあね、今みたいにアークと一緒に狩りをするのも楽しけど、昔みたいに三人で騒いでたのも悪くなかったなって、ね?」
「まあ、明日でお前も十五になるからな。もう少しでお前の大好きなアリアちゃんにあえるぞ~」
俺がからかうとキールは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
二年前までキールとは別にもう一人よくつるむ人物がいた。それがアリアだ。
キールと仲良くなり始めたあたりから自然と俺達二人の輪の中にいて、俺達が二人で集まると決まって湧いて出てきた。色々と謎の多い少女であった。
そんなある日、クエストの都合で近くに魔物を討伐しに来た冒険者達が、アリアをクランにスカウトしたいといってきた。話を聞くに、ピンチのところを助けてもらったのだという。
どうやらアリアは冒険者達が苦戦していた魔物を、拳一発で倒してしまったらしい。
そしてアリアはこの申し出を最後まで渋っていたが、俺が「十五になったら成人だし、その時キールと二人で冒険者になるよ。アリアはその時までに強くなっててよ。そしたらまた三人で冒険でも何でもしようぜ!」と、それとなくかっこつけた台詞を吐いたら、彼女はそれに呼応するように首を縦に激しく振っていた。それ首大丈夫?と、少し心配になった。
その後で、アリアと別れる時三人で泣いたのはいい思い出だ。
そして、もうじき俺達二人は冒険者になり、アリアに会いにいくことができる。
そのことが待ち遠しくて、軽く足取りが弾む。
「ほら、照れてないで行くぞ! キール」
「てっ、照れてないし!」
俺がキールをからかうと、彼はさらに顔を真っ赤にさせ頬を膨らませる。
「アークだってアリアのこと好きでしょ! 人のこと言えないよ!」
「はは~ん、認めたなお前。アリアは好きだけど友達としてだからな。あーあー、キールちゃん可愛い可愛い」
「ぼ、僕だって友達としてだから! 勘違いしないでよ!」
「どうだかな~」
「くっ……」
夕日に照らされる赤焼けた山道を、帰路に就くため二人して下っていく。
この時はまだ、この他愛もない会話をこの先もずっと続けられると思っていた。
また三人で笑い合える日が来ると、そう思っていた……。
          
俺は背中に担いでいる犬型の獣を地面に下ろしながら言った。
「まあ僕はこれくらいしか取り柄がないからね……」
そう自信なさげに言葉を漏らした少年もまた、肩に担いでいた犬型の獣を地面に下ろした。
少年の名はキール。俺が五年前、十歳になる頃この村にきて初めて出会った。
キールは気弱な性格でよく人見知りをする。それでいて陽の光のような明るい黄髪を肩まで伸ばしており、顔は年頃の少女のように可愛らしいので、よく女の子に間違えられていた。俺も初めて会った時は騙された。
そして、村に馴染めずにいた俺を率先して手助けしてくれたのはキールだったりする。
その頃からか、俺達はよくつるむようになった。
「すこし休憩するかー」
「うん、ちょっと歩き疲れたかも……」
俺の言葉にキールが呼応し、二人して木の根元に腰かける。
歩き疲れたというのも、さっきまで俺たちは狩りという名目で魔物を討伐していた。
俺達が住んでいる村は辺境にひっそりと佇むような小さな村で、動物が畑を荒らしたり、たまに魔物と呼ばれる大型の獣が村を荒らしに来ることがある。
なので俺達は、それを未然に防ぐために魔物を狩っているというわけだ。
そして、もう一つ魔物を狩る理由がある。
「はぁ……アリア元気にしてるかなぁー」
「ん? 気になるのか?」
「まあね、今みたいにアークと一緒に狩りをするのも楽しけど、昔みたいに三人で騒いでたのも悪くなかったなって、ね?」
「まあ、明日でお前も十五になるからな。もう少しでお前の大好きなアリアちゃんにあえるぞ~」
俺がからかうとキールは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
二年前までキールとは別にもう一人よくつるむ人物がいた。それがアリアだ。
キールと仲良くなり始めたあたりから自然と俺達二人の輪の中にいて、俺達が二人で集まると決まって湧いて出てきた。色々と謎の多い少女であった。
そんなある日、クエストの都合で近くに魔物を討伐しに来た冒険者達が、アリアをクランにスカウトしたいといってきた。話を聞くに、ピンチのところを助けてもらったのだという。
どうやらアリアは冒険者達が苦戦していた魔物を、拳一発で倒してしまったらしい。
そしてアリアはこの申し出を最後まで渋っていたが、俺が「十五になったら成人だし、その時キールと二人で冒険者になるよ。アリアはその時までに強くなっててよ。そしたらまた三人で冒険でも何でもしようぜ!」と、それとなくかっこつけた台詞を吐いたら、彼女はそれに呼応するように首を縦に激しく振っていた。それ首大丈夫?と、少し心配になった。
その後で、アリアと別れる時三人で泣いたのはいい思い出だ。
そして、もうじき俺達二人は冒険者になり、アリアに会いにいくことができる。
そのことが待ち遠しくて、軽く足取りが弾む。
「ほら、照れてないで行くぞ! キール」
「てっ、照れてないし!」
俺がキールをからかうと、彼はさらに顔を真っ赤にさせ頬を膨らませる。
「アークだってアリアのこと好きでしょ! 人のこと言えないよ!」
「はは~ん、認めたなお前。アリアは好きだけど友達としてだからな。あーあー、キールちゃん可愛い可愛い」
「ぼ、僕だって友達としてだから! 勘違いしないでよ!」
「どうだかな~」
「くっ……」
夕日に照らされる赤焼けた山道を、帰路に就くため二人して下っていく。
この時はまだ、この他愛もない会話をこの先もずっと続けられると思っていた。
また三人で笑い合える日が来ると、そう思っていた……。
          
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