音を知らない鈴

布袋アオイ

下校時間

先生の由来は凄く素敵だった。
だけど自分の名前にも先生のような意味が込められていたらどうしようと思った。
親の期待、理想。
小学生ながらに名前の由来を親に聞くのは少し怖かった。その期待に応えられるはずがない。それは小学生であったにしても勘付いていた。
なぜなら、それまでの人生で人より長けていた部分が全く無かったからだ。
運動も勉強も、見た目も性格も。
自分が落ちこぼれであるかどうかなんて、小学生でも分かる。
充分分かっていた。
そしてそれは親もだ。
私の才能の無さにはがっかりしているだろう。
そんな中で名前の由来を聞くだなんて、嫌な宿題を出されたものだ。

"鈴音"

自分の名前を頭に浮かべ、
がっかりするのを少しでも減らすために、
予想を立ててみた。
だが、思い浮かばない。
自分の名前から希望や夢が連想されない。
もしかすると、そもそもそんな願いは込められていないのかもしれない。
適当にパッと付けられた名前だとしたら。
それもそれで傷つく。
色々考えながら下校をしていたが、結局嫌な感じで着地してしまうことに気づいて考えることを止めた。

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