音を知らない鈴

布袋アオイ

第一章 鈴音

鈴音、大層な名前を付けられたものだ。
私にこんな可愛らしい名前は似合わない。
小学生の時、親に名前の由来を聞く宿題があった。そして皆の前で発表する事に。
どういう宿題なんだ、そう思った。
その宿題があるまで、私は自分の名前に由来があることなんて気にしたことが無かった。
これは私だけなのか。
それとも皆その時に初めて自分の名前に由来があることを知ったのか。
先生が分かりやすいように自分の名前を例にして説明してくれた。
素敵だった。
由来を知るだけで、先生の名前が輝いて見えた。

まるで響きが違った。

そして、最後にこう言った。
「先生はお父さんとお母さんに付けてもらった名前が大好きです。
お父さんとお母さんが私にこうなって欲しいと願いを込めて考えてくれました。
きっと皆にもそんな願いが込められた名前だと思います。
今日の宿題で聞いてきてくださいね。」

願い………

その時はその言葉の響きが良くなかった。


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