音を知らない鈴

布袋アオイ

#25 分かった、のるよ

 「朝か…」

 とんでもない夢を見てしまった。まだ頭は夢の中を彷徨っているのかさっきの姉の姿が浮かんでいる。

 目はハッキリ天井を捉えているが、今僕に見えているのは袴姿の姉と、同じく袴を着た男性、そして薄明かりに照らされた神秘的な空間。

 「……じ………ん………」

 (じん…って何だっけ…)

 耳に残る゛じん゛という音。

 顔の側の時計がチッチッチッと3回進んだ。

 「………そうだ!!!」

 神社で姉が男の人に言った…名前か!!

 細いタルんだ線がピンと張った感覚になった。

 「忘れないうちに…!」

 直ぐに姉にこの夢の事を相談しようとベットから飛び起きた。

 「おはよう」

 「おはよ!お母さん!お姉ちゃんは?」

 「ん?外に出てったよ?」 

 「え?」

 「それにしてもよく寝たね?」

 リビングの時計は信じがたいことに11時を指していた。

 「え!?もうお昼じゃん!」

 「今気付いたの?」

 「うん、寧ろ早起きレベルかと…」

 「あらら、それは残念」

 「はぁー……」

 「眠れなかったの?」

 「いや、夢の中が忙しくて寝れた気がしない…」

 「ん?夢?」

 (そうか、お姉ちゃんに言う前にお母さんに言おう)

 「お母さん、すっごい変な夢見たんだけどさ」

 「うん」

 お昼前、ご飯の準備を後回しに母親に今日の夢を最初から話した。





 僕が見た夢はこれから起こる不思議の前兆。

 そして、母親と話していく内に鈍感な僕でも分かった。

 母親の顔色が曇っていく様子が。

 そして母親は僕にこう告げた。

 人差し指を立て

 「このお話はお姉ちゃんには秘密ね」

 本気のトーンにこくりと頷いた。

 続けて母親はこう言った

 「でも龍也がこの夢を見たのは何か意味があるかもしれない。だけど、すずには言ってはダメよ。これはあの子が知るべき事じゃない」

 若干棘のある言葉に感じたが、母親はいつだって僕達の事を考えてくれていた。

 ここは、母親に乗っかるしかない。




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