音を知らない鈴

布袋アオイ

#11 守っているよ

 「じゃあな、テスト頑張ろうな」

 「うん、ありがと」

 「おう」

 やっと1人になれた。

 帰ろうって誘ってくれるのはありがたいけど早く1人っきりにやりたかった。

 朝に比べたら帰る時間は短く感じるから何とか我慢できるが、本当は一刻も早く1人になりたい。

 金木君が遠くに行くまで暫く見送った。

 小さくなる姿を確認して、大きく溜め息をついた。

 「はあぁぁぁぁ」

 空気が軽く感じる。

 1人だぁぁ!!

 肺にいっぱい空気を送り込んだ。

 (生きてる……)

 ようやくそう感じた。

 1日の仕事を終えたような、安心しきった
風が私を包み込んでくれた。

 (ありがとう……大好きだよ………)

 私が甘えて逃げてしまわないようにずっとこの風を吹かせないでいてくれたのかな…。

 そんな訳は無いが何となくそう思った。

 優しい風に泣きそうになる。

 どうして言葉を話さないのにこんなに私の心を癒やしてくれるのだろうか。

 自然は特殊能力の持ち主だ。

 きっと自分でもその自覚はあるんだろうな。

 羨ましい。

 まるで自信に満ち溢れているかのような

 清々しさが心地良い。

 目を閉じて、目に見えない無い癒しを存分に感じた。

 全てに明かりを届けた後の光。

 自身の使命に誇りを持っているかのような
堂々たる姿が見える。

 応援しているよと言わんばかりの温もりを、心でギュッと抱きしめた。

 「帰ろう」

 これなら家に帰れる。

 明日は土曜日。

 約束の日。

 誰とかって?




 分からない

 でもきっと明日分かる




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