音を知らない鈴

布袋アオイ

#9 聞こえる?鈴音

 「はい、今日のホームルームはここまで号令」

 「起立、礼」

 「ありがとうございましたー」

 キーンコーンカーンコーン

 キーンコーンカーンコーン

 「はぁーー、終わったね〜」

 「これからだろ?まだ1時限目も終わってねーぞ」

 「そうだけどさーホームルームが何だかんだ一番嫌いなんだよね〜」

 そう言ってなつはふぁ〜とあくびした。

 「大丈夫?眠いの?」

 「まあね、帰ってからしかテスト勉強できないから」

 「大変だね…」

 「すず、あんたこそ大丈夫なの?テスト」

 「こいつはどーしよもねー馬鹿だからな〜」

 「…確かに」

 へへへと笑った。

 「人の心配ばかりしないで、自分の事心配しなよ?すずは優しすぎるところあるから」

 「…ごめん…」

「確かにお人好しだよな」

 (金木君まで…)

 「あ、そうだ!皆で勉強会しようよ」

 「え…?」

 「いいな!それ」

 「勉強会?」

 「明日土曜だし、流石に休日まで部活はないから」

 「あ…でも…」

 「丁度良かったな、俺らが教えてやるよ」

 「いや、そんなの申し訳無いし…」

 「遠慮しなくていいよ、まだ来週の土日もあるし」

 「そうだな、1日くらいお前に使ってもどうって事ねぇよ」

 「そうそう、寧ろ教えるのも勉強になるから」

 「あ、うん……でも私はいいや」

 「え?何で?用事でもあるの?」

 「う、うん…」

 「テスト前に用事作るなよな、一人だと捗んねーだろ」

 「せっかくなんだけどごめんね…」

 「んーー、まッしょうがないか!私も今いきなり言ったし」

 「……確かにそうだな、またやろう」

 (ふぅ…良かった)

 正直、休日まで人とは触れ合いたくない。

 誰にも会わなくていい時間が無いとやっていけない。

 だがそんな理由は言えるはずない。

 それに2人のテスト勉強の時間を割いてまで私に教えてくれるなんて申し訳無さ過ぎる。

 どうせ成績なんて上がるはずもないから後でまたとやかく言われるより今絶対に断っておきたかった。

 それができて良かった。

 そしてどうしても明日だけはあそこに行きたかった。

 今日、朝日を浴びた時に聞こえた気がしたのだ。




 「待っている」と。


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