私、幽霊です!
P.22
自分にはとても真似出来そうに無いな。と息を吐いた和輝は、会話に加わることより初めて入る友人の部屋に目を向けることにした。
だが、それにも一分と掛からないだろう。
それくらいに、意外と綺麗に整理されている。
と言えば、聞こえは良いが、それくらいなにも置いていないとも取れた。
1Kの間取りに五人座っても窮屈に感じない。
短い長方形の部屋の隅に勉強用の机と、その壁沿いにベッドが並んでいるだけで、あとは机とベッドに挟まれてテレビが置いているだけだ。
普段の会話の中だと持っている漫画やフィギュアやらの話が出て来るのだが、ここに無いことを考えるとテレビ側と反対の壁に在る押し入れは空けないほうが良いだろう。
薄型の液晶テレビはその大きさよりちょっと広めな茶色のローテーブルの上に乗っかっているのだが、よく見るとそこだけ話の種になりそうな物が見えた。
「瞬、あれビデオデッキ?」
正直、今時珍しいと思う。
テレビの下にDVDプレーヤーが置かれているのなら和輝も見たことがあったが、ビデオデッキなるものは初めて見た。
それもDVDと一体型などではなく、単にビデオだけ再生出来る物だ。
シルバーの表面は近づいて見るとところどころ傷が入っていて使い古された感じだ。
瞬にレトロな趣味が有るとは聞いたことが無かったが、そのビデオデッキだけがこの部屋のあらゆる家具の中から浮いていた。
「あー……それな」
意味ありげに瞬が口を開くと、他二人と会話をしていたはずの、赤茶のポニーテールが揺れ動いた。
「あら、ちゃんと見つけてくれたのね。良かった」
「見つけた? どういうことだ?」
優弥が切れ目の端を彼女の整った顔に向ける。
「それがなきゃ観れないもの」
彼女がそう言って鞄の中に手を突っ込んだのを見て、和輝は昼間のことを思い出した。
「そう言えば……あー……」
言葉に詰まったのは思い出し損ねたからではなく、彼女を呼べなかったからだ。
舞の時から学習出来ていない。
その舞から悪意の無い笑みが零れたのと同時に、女性は鞄から『あるモノ』を取り出しながら和輝に応えた。
「あぁ、私の自己紹介まだだったわね。神谷まひろよ。宜しくね、相田和輝君」
微笑みながら『あるモノ』を手に持つまひろに、和輝は少し驚いた。
「え、なんで俺の名前……」
「あら」
今度は、まひろがわざとらしく口を片手で覆って驚いて見せた。
「貴方、お昼の時からそっちの二人に苗字も名前も呼ばれていたのに」
「相田君、知らない内に詐欺にあってそうだね」
舞の追い打ちもあって、和輝は顔が熱くなったのを感じた。
そんな熱を覚ますべく、和輝は話題を元に戻す。
「じゃあ……神谷さん。昼間に俺達に見せたい物があるって言ってたよね」
言われたまひろは、たった今取り出したそれを皆に見えるように差し出した。
「うん、これのことよ」
先程からまひろの手に持たれているその『あるモノ』は、黒い布地で覆われていた。
ティッシュ箱くらいの大きさがあるが、厚みはそれより少し薄いくらいか。
まひろが覆っている黒い布を丁寧に剥すと、中から出て来た物に優弥が興味を示した様子だった。
だが、それにも一分と掛からないだろう。
それくらいに、意外と綺麗に整理されている。
と言えば、聞こえは良いが、それくらいなにも置いていないとも取れた。
1Kの間取りに五人座っても窮屈に感じない。
短い長方形の部屋の隅に勉強用の机と、その壁沿いにベッドが並んでいるだけで、あとは机とベッドに挟まれてテレビが置いているだけだ。
普段の会話の中だと持っている漫画やフィギュアやらの話が出て来るのだが、ここに無いことを考えるとテレビ側と反対の壁に在る押し入れは空けないほうが良いだろう。
薄型の液晶テレビはその大きさよりちょっと広めな茶色のローテーブルの上に乗っかっているのだが、よく見るとそこだけ話の種になりそうな物が見えた。
「瞬、あれビデオデッキ?」
正直、今時珍しいと思う。
テレビの下にDVDプレーヤーが置かれているのなら和輝も見たことがあったが、ビデオデッキなるものは初めて見た。
それもDVDと一体型などではなく、単にビデオだけ再生出来る物だ。
シルバーの表面は近づいて見るとところどころ傷が入っていて使い古された感じだ。
瞬にレトロな趣味が有るとは聞いたことが無かったが、そのビデオデッキだけがこの部屋のあらゆる家具の中から浮いていた。
「あー……それな」
意味ありげに瞬が口を開くと、他二人と会話をしていたはずの、赤茶のポニーテールが揺れ動いた。
「あら、ちゃんと見つけてくれたのね。良かった」
「見つけた? どういうことだ?」
優弥が切れ目の端を彼女の整った顔に向ける。
「それがなきゃ観れないもの」
彼女がそう言って鞄の中に手を突っ込んだのを見て、和輝は昼間のことを思い出した。
「そう言えば……あー……」
言葉に詰まったのは思い出し損ねたからではなく、彼女を呼べなかったからだ。
舞の時から学習出来ていない。
その舞から悪意の無い笑みが零れたのと同時に、女性は鞄から『あるモノ』を取り出しながら和輝に応えた。
「あぁ、私の自己紹介まだだったわね。神谷まひろよ。宜しくね、相田和輝君」
微笑みながら『あるモノ』を手に持つまひろに、和輝は少し驚いた。
「え、なんで俺の名前……」
「あら」
今度は、まひろがわざとらしく口を片手で覆って驚いて見せた。
「貴方、お昼の時からそっちの二人に苗字も名前も呼ばれていたのに」
「相田君、知らない内に詐欺にあってそうだね」
舞の追い打ちもあって、和輝は顔が熱くなったのを感じた。
そんな熱を覚ますべく、和輝は話題を元に戻す。
「じゃあ……神谷さん。昼間に俺達に見せたい物があるって言ってたよね」
言われたまひろは、たった今取り出したそれを皆に見えるように差し出した。
「うん、これのことよ」
先程からまひろの手に持たれているその『あるモノ』は、黒い布地で覆われていた。
ティッシュ箱くらいの大きさがあるが、厚みはそれより少し薄いくらいか。
まひろが覆っている黒い布を丁寧に剥すと、中から出て来た物に優弥が興味を示した様子だった。
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