言いたいことが言えない

おかゆ

好きな人を裏切るということ




わたしは真面目な人が好きなんだよなぁ
そして、そういう人を裏切るのも好き。



クソ野郎だなと、いい加減自分でもはっきり気付いてしまいました。
待ってください、どうか去らないで。
訳があるのです。

なるべくぱっと話します。

幼稚園の頃に家が近所で、ものすごく仲が良かった友人がいました。
その子とは、4才くらいから仲が良く、そうして次第に親同士も仲良くなり、
まあここは表面的にだと思いますが

私とその友人は、小学校に上がっても常に毎日いっしょにいました。
登下校は必ず一緒で、学校から帰ってもいっしょに遊び、
なんでしょうか。姉妹のような、ソウルメイトのような。
なんと言ったらいいのかわかりませんが、お互いがお互いを
友として認めて、人として好いていて、大切に思うような存在です。

4才くらいから私はピアノを習っていて、
その友人ものちに同じピアノ教室で習いはじめました。
家が近いことと、仲が良いこともあり、レッスンの時間は先生が
気を利かせて被せてくれました。

冬になると、レッスンが終わる5時頃にはもう外が暗くて、
それが、私にはとてもこわかったのです。
家の前では、お母さんが待ちかまえててくれているのにも関わらず、
それでも家までのほんのわずかな道のりが、
私には外が暗いだけで、とても恐ろしく感じていました。

レッスンが終わりピアノ教室から出て、目の前の一本道を友達と二人で歩き、
しばらく歩いて行くと坂があって、その坂を降りると、すぐに友達の家がある。

私の家は、そこから一直線にまっすぐ歩いてすぐそこです。
距離でいえば500メートルくらいだろうか。
大人の足で歩けば、1分とか、そんなものです。

そんな距離感にも関わらず、辺りが暗いと、幼い私にはそれだけで足がすくみ、
どうしてもひとりで歩いていけなかった。
私がそうやって、怖がり、立ちすくんでいると、
友達は自分の家が目の前にあるのに、
わざわざ、その先にある直線を一緒に付いてきてくれて、
私の家まで送ってくれるのだった。


その友達は私と同い年の女の子で、私はいつもこの子はこわくないのかな?
悪いな、と思いつつも、レッスンのある日はいつも家まで送ってもらっていた。

だけど、ある日、わたしの勝手な裏切りによって、
その子との仲は壊れてしまった。
永遠に、もう話すこともなくなってしまった。



理由はもちろん、その子のことが嫌いになっただとか、
ましてや、傷つけてやろうだなんてものではない。

私はその子のことが大好きだったし、そもそも裏切ってやろうだなんて、
そんな魂胆や、企みは、もちろんなかった。

結果として、裏切りという形になってしまったのです。

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