転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する

カイガ

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 先程の衝撃音を聞きつけたのか、校舎内から何事やと騒ぐ声がいくつも聞こえる。リリナは手を上に掲げて何かを唱える。するとさっきまでの喧騒は静まり、屋上に近づく気配も消えた。

 「人払いの結界を張ったわ。誰も私たちに干渉することはないから」
 
 俺が復讐の時にいつも使っている下準備の魔術も使えるのか。同時に防音と不可視と防臭など複数の遮断系魔術を付与して完全密室をつくりあげる。

 「話をしましょう...」

 その声はお願いしてるように聞こえる。
 不意打ちであいつを殺すのは無理だと、二回の攻撃失敗で悟った。向こうもすぐに殺す気は無く思える...一応は。
 癪だがここは様子見に徹するとしよう...。あいつの素性もまだほとんど知らんことやし。

 「......この力を手にしてからはいつぶりやろーな、俺にダメージを負わせた奴は...。まさかこの世界で俺と同じ異世界の力を持った奴が出てくるとは思わへんかったわ。この力はこの世界では俺だけのもんやって思い込んでたからな...まさか俺みたいに異世界からここに来る奴が現れるとは。
 しかもよりにもよってお前がや」
 
 剣を粒子に変えて消して両手がフリーになったことを主張しながらビックリした感じの声で話し出す。

 「......あの時と違って、訛り口調で喋るのね?確か関西弁っていうのかしら?」

 「は?.........生まれはここ大阪の土地やったからな。二度目の人生は異世界での暮らしが続いたせいでこの訛りが抜けたが...この時代を生きる俺とシンクロしたことで関西訛りに戻ったんやろな。これが元々の俺の口調や」
 「そっか......うん、その喋り方も良いわね。なんか面白いかも。
 ぇへへ、久しぶりに友聖とこんな会話が出来たわ...嬉しい」

 「............」


 内心舌打ちをする。何が嬉しい、や?話の流れからして自分の素性とかどういう手段でここに転移したんかを話すところのはずが、俺の喋り口調についての話に持っていきやがった...。しかも俺と会話したことに対して喜んでさえもいる...。意味分からん。俺はお前を殺した奴なんやぞ?自分殺した奴にそうやって楽しそうにできるか普通?
 そして俺もなんであいつの話につき合ったんや...アカン、あいつのペースに乗せられてる気がする...。


 「で?お前は女神とか言うてたけど、そこんとこについて教えてくれるんかな?あとどうやってここへ来たのかも」
 「ふふふ...友聖ったら私のことが気になってるのね?今の私がどうなっているのを知りたいのよね?うん、じゃあ全部教えてあげるね――」

 などとイラっとする物言いをしてから奴自身についてのことを聞く。

 死んだ後に俺と同じあの転生の間とかに連れられて、大女神によって女神に転生されたこと。その頃にはあの異世界が無くなっていたとのこと。つまりリリナの時間と俺の時間にはズレがあるということ。
 で...天界という場所で敵対している悪魔族らと戦うべくリリナは戦士となって鍛えて戦っていた。
 さらにサタンとかいう悪魔族の長が禁忌を犯してこの世界に潜伏したから、コイツがここへ派遣された、と。転移の方法は賢者の力でねぇ?
 などと、粗方の事情は理解できた。この地球と俺が転生した先の異世界を含む人間界を“この世”という次元とリリナのような女神や悪魔がいる世界を“あの世”という次元があるということも大体分かった。


 「サタンの分身体が...俺の中に潜伏している、ねぇ?」

 中でもいちばん驚かされたのが、女神の敵である悪魔の長の分身体が...そういうことになってることだ。

 「ここに来てからずっと感じてるわ......友聖の中に邪悪なものが混ざってるって」
 「サタン...。俺の心とかに根付いてるんかねぇ」
 「友聖、あなたにはサタンの存在は感じてないのよね?じゃあいつサタンがあなたの中に入ったのかも、知らないのよね...?」
 「そうなるな。気配も感知も何も感じへんかったわ。今俺の中にそんな危険人物がいるとか、全く考えられへんけどな」

 「そう。サタンも私に全く応じる気も無いみたいだし...。
 ......まだバレてないつもりかしら?彼の中にあなたがいることはもう分かってるのよ?どれだけ存在を隠そうと女神族の捜索魔術は誤魔化せないわよ。大女神様を甘く見過ぎよ」

 リリナは突如詰問するように話す。俺に対してではなく、俺の中に...いるらしいサタンとやらに語りかけてるようだ。
 彼女が一言二言語りかけるも無反応。無視しているのか、眠っているのか、分からない。

 「私に応じる気も友聖から出て行く気も全く無いようね。やっぱり、やるしかないのね......」

 リリナはお手上げといった様子で語りかけるのを諦める。そしてさっきまでの気安さを消して、真剣な顔つきで俺と向き合う。

 「本当はあなたからサタンを乖離させて彼を消そうって考えてたけど、それは無理そうね。サタンはあなたと同化していると言っていいわ...」
 「いつのまにそこまで...。で?そうと分かったお前は、俺をどうするんや?」

 俺の問いにリリナは少し押し黙り、やがて覚悟を決めた様子で、俺の目をしっかり捉えて答える。


 「本当はこんなことしたくなかったけど...今のあなたをこの世界でこれ以上好きにさせるわけにはいかないわ。だから私は.........
 友聖、あなたを“あの世”へ連れて行きます!!」
 

 ハッキリとした声で告げる。はったりでも虚勢でもない、本気の言葉や...。

 「それは、遠回しに俺を殺すって言ってるんやろ?」
 「ええ...そうよ」


 その答えを聞いた瞬間、俺は動いた!上へ向かって破壊魔術を放つ。闇雲に上へ放ってはいない。この結界のいちばん薄い箇所を捉えてそこを狙い撃つ。
 結界は破れ、俺は上空へ飛んですぐさま真下へ炎魔術を放つ!


 「死ぬんはお前や!消えろぉ!!」

 
 巨大な炎球が校舎ごとリリナは焼却―――



 「―――それはダメよ友聖。無関係の人を巻き込むのは許さない」

 ドパァン―――
 ...されなかった。
 炎に呑まれたはずのリリナには火傷などいっさいついてなかった。校舎も無事だ。よく見ると水蒸気がたっているのがわかる。

 「相殺したんか...水と氷の魔術で...しかもあっさりと」

 俺が魔術を放って数秒経ってから魔術を放ったくせに、あっさり俺の炎を破ったんかいな...時間差あった分こっちの方が有利だったはずが、負けた...。

 「私の結界の弱い部分をすぐに見抜いてすぐ破壊するなんて、驚いたわ。さすが魔王を倒した勇者ね」
 「お褒めの言葉どうも...なんて言えるかよ。あっさり俺の本気の魔術を破りやがって...。それも余裕そうに......っ」

 俺は今の魔術も本気で放った。このリリナという存在が俺にとって脅威であると最初の攻撃で理解した。せやから本気を出した。けど破られた。

 目の前にいるこの転生女神は、力・魔術ともに俺を上回ってやがる...!!

 「友聖...大人しくそのままでいて?私はサタンを討たないといけない。でもそうするにはもうあなたごと討たないといけない...。あなたをむやみに傷つけて苦しませたくないから......そのままじっとしててちょうだい」

 リリナは穏やかな声でそうお願いして俺に手を伸ばしながら近づいてくる。力の差をにおわせて、抵抗の無意味を分からせて、穏便に俺を殺そうとしている。このまま大人しくしていれば、俺は苦しまずに死に、サタンとやらを倒しておしまいというわけか。で、俺はコイツにあの世へ連行される...と。
 当然俺の答えは......


 「い や だ ね」


 力と魔力が上なだけで、総合の実力では俺はまだ負けてはいない。足掻きもせずに大人しく殺されてたまるかよ!
 ドンと地を蹴ってデタラメに駆け回り...短剣を握りしめてリリナを真後ろから心臓を突き刺す!
 そして俺は―――


 「そう...なら痛くて苦しい目に遭うことになるから」


 地面に叩きつけられていた。





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