転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する

カイガ

40(終)


 ―――足りない...。俺は満足出来ていない...。
 いつからこの感情を抱いてたか?たぶん今の日本をつくりあげたあの日からだ。
 何度も確認するが、俺はこの生活に不満は無い。むしろ快適と思っているし幸せに思ってもいる。では何が足りないというのか?
 女...にも不自由は無い。行きつけの風俗があるし、何ならそこで贔屓している嬢が最近俺にあからさまな恋愛的アプローチをしてくるくらいだ。
 友達が欲しい?いやナイナイ。今の俺はもはやそんなものを求めない。他人に友情など微塵も湧かなくなった俺に親しい奴は要らない。一生独り身で良い。
 生活そのものは良い。食い物も娯楽もエロも充実しているからな...不満や不足は無い。

 ではいったい何が足りないというのか?物理的なものではない。何かこう、心が欲しているのだ......《《あいつら》》がより多くの血を流している様を...《《あいつら》》がより不幸や絶望のどん底に落ちることを...。

 要するに俺は、自分の復讐にまだ満足出来ていないというわけか。
 じゃあ、あの時復讐対象どもをぶち殺したことは、本当は俺にとっては為にならなかったのか......いや、為にはなった。あの復讐の日々は今思い出しても俺を最高の気分にしてくれる。何ならその様子を録っておいた映像をダビングしているくらいだ。今も定期的に再生して楽しんでいる。
 復讐したことに後悔はしていないし虚しく思ってもいない。
 だけどまだ足りないんだ...!
 俺はまだ《《あいつら》》をとことん嬲ってやりたいと考えている。復讐対象どもはもう俺が殺していなくなったというのに、連中をまだ甚振って苦痛を与えまくりたいと求めている。

 ......いったい何故満足出来ていないのか。しばらく考えた末に、一つの答えにたどり着いた...!




 「《《この時代のあいつら》》を殺しても、復讐の達成感を満たしきれない...っ!!」




 確かに殺してきたあいつらは全て、紛れもない本人だった。偽物じゃない、当時俺を虐げて排除した連中と同一人物だった。
 だが肝心の見た目が違ってしまったせいで、当時のあいつらを殺した達成感があまり得られてなかったんだ!だからまだ“足りない”と感じてしまっているのだ!

 「っはははは...!つくづく俺って奴は、欲張りやなァ。中学生だったあいつらを、高校生だったあいつらを、まだ20~30代だったあいつらを、まだ還暦迎えたばかりのあいつらの面を見下ろしながら殺すことが、いちばんスカッとするに決まっている!!オッサンになったあいつら、クソジジイになったあいつらなんかの顔やったから、物足りなかったんだ...!」

 あの時代で生きているあいつらにこそ、復讐するべきだ。当時の俺を進行形で虐げていた奴らに復讐する方が最も俺の心を満たしてくれるに違いないっ!!


 「戻りてぇ...あの頃に。俺の心を完全に満たす為の復讐がしてぇ...!まだ若かった頃のあいつらをぶち殺してぇ...!!」


 俺は、決意した。

 ―――俺が虐められていた時代過去へ行く!!



 しかしそれを実行するには、難関過ぎる壁が立ちはだかってくる...“時空”というデカすぎる壁が。
 言わば時間遡行《タイムトラベル》をすることと同義だ。空間魔術を用いたことで俺は異世界からここへ帰って来られたが...“時間魔術”というものは異世界でも存在しない。もうこの時点で詰んだ気持ちになったが、諦めずに検索魔術を起動して時間遡行の方法を探してみた結果......


 「あった...!が、この方法は......」


 あるにはあった。
 だがこの方法で時間遡行を行うと......俺は―――

 ―――死ぬことになる...。


 “魂の引継ぎ” これが時間遡行する唯一の方法だ。目に見えない情報、つまりは自身の「中身」のみを過去の自分に引き継がせるという手段だ。
 だが魂(=心)と思念体(=精神)をこの肉体から離すということは、ある意味死と同義だ。脳や心臓には一切負担が無いから肉体は死なないが当然身動きが出来ない以上、絶食状態に陥る...つまり餓死する。アバターどもも俺を動力源としている為いつかは消えてしまう。俺以外の人間に世話を頼む?まぁそれも有りやけど......。
 ここで過ごすよりも、俺はあの時代でまた同じように日本を改造してみたい。というより一度“引継ぎ”をしたら、果たして元に戻れるか分からんしな。もうこの肉体はここで朽ち果てさせるのも一つの手だと考えている。
 

 「それに...あの時代だったら、あいつら以外にも殺したいと思ってた奴らも気持ちよく殺せるやろーしなァ」

 
 虐めの主犯格どもはもちろん、あいつらの罪を許したあの場所そのものに復讐が出来る...考えただけでもワクワクしてきた!

 「そうと決まれば...この時代で楽しめることを全部、満喫して堪能するぞっ!」




 新たなる目標を立てたその日からは、“引継ぎ”魔術の習得とやり残していることの消化の日々に漬かり、毎日を過ごして...気が付けば十年は経っていた。


 「完成した...!あとは魔術を発動するだけや」

 俺(推定40才)は色々書き記した魔術本を開いてそこに魔力を込める。同時に自身の中身...心・魂と精神・思念体と、このスペック(魔力や魔術、身体能力の全て)を本に移行するイメージを思い描く。


 「......楽しかった。楽し過ぎたわ、この二度目の人生は。生前のクソ人生を塗り潰すくらいの濃くて最高で幸せな人生が送れた...まぁ最初は酷い扱いと裏切りに遭ったが、それを強いた連中はぶち殺したし気分は晴れた」


 今にすれば懐かしい。クソ国王とゴミ貴族どもとカス冒険者どもとクソッタレ孤児院の連中を残酷にぶち殺したあの日から始まった。
 ......ああ、俺の想いを裏切ったクズ王女もいたっけ。最後まで嘘を言って俺から逃げようとしてたっけ?ざまぁねーぜ。
 そしてここに来てからは、生前の復讐の日々!心は浄化された。最高だ。
 けどまだ終わりではない、もう一回遊べるドンッ!なんてな。


 「ああ......意識が遠のいていく。中身が本に吸い込まれていくような感覚だ。この本を媒体にしてあの時代へ遡っていく...。あー眠い。この時代の俺はここで終わる...。まさか、三度目の人生を送ることになるなんてな...面白いわホンマ。

 ......あの頃の自分を救うのは誰でもない、俺自身か。ガキだったあの頃の俺を幸せにしなきゃな...。

 最っ高の青春を送らせてやろう...!ははははははははははぁ!!」

 その決意込めた叫びを最後に、俺の意識は途切れ、永遠の眠りについていく...。


 力無く倒れた男の傍にある本が眩い光を放って.....物体をすり抜けて遥か上空へ飛び立つ。より一層強い光を放って、やがて消えた―――



 『スギヤマユウセイノ魂オヨビ思念体ヲ預リマシタ』
 『コレヨリ預カッタモノヲ過去ノ時代ニイルスギヤマユウセイニ引継ガセマス』
 『遡行可能ナ行キ先ノ時代ヲ検索中......行キ先ガ決定シマシタ』
 『西暦2010年...対象ノ人物ノ年齢ハジュウゴニナリマス』
 『引継ギ実行中............引継ギニ成功シマシタ。時間ニ若干ノラグガ発生シタ為、引継ギガ反映サレルノ二少シ時間ヲ要シマス』
 
 『デハ......良イ人生ヲオ過ゴシ下サイ、主様―――』


 ――――ブツン...ッ





そして、俺の三度目の人生が...さらなる復讐が始まった―――



第一部 完

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