転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する

カイガ

02

 気がつくと、俺の目の前には無機質な空間があり、そこに金髪の妙齢の女性が一人いた。何だか神々しく感じられるその女性は大女神《おおめがみ》と名乗り、これから俺は異世界に転生すると説明された。そこの世界には魔王の脅威にさらされていて、いずれ俺は魔王軍と戦うことになるだろうと予言した。
 転生先の世界は、魔王軍がいる世界以外へは行けないとのことで、仕方なくそのハズレ枠の異世界に転生することを承諾した。転生する際にこれまでの知識・知恵・経験を引き継ぐこと、戦闘における特別な才能と能力を授けられて、俺は生まれ変わった。俺の想いがそうさせたのかどうかは知らないが。

 転生した俺はは3才児のガキとして生まれ変わり、森をうろついていたら保護されて近くの村が運営している孤児院に引き取られて、そこで二度目の人生を歩み始めた。容姿は、前世の幼少期の自分と同じだった。黒髪黒目の黄色肌の...幸薄い雰囲気を醸し出している、純日本人男児だ。
 俺は早速自身の能力を確認するべく行動に移った。武術と魔術の両方に秀でているというバリバリの戦闘系の才能に恵まれていると分かった俺は、そこからずっと己の戦闘技術を磨き続けた。

 10歳から原則では冒険者稼業が認められているこの異世界のルールに従い、その年になった俺は早速冒険者になって、村近辺に出現する魔物を討伐したり、ギルドが出す依頼をこなしたりして過ごした。

 そこから5年後、俺に勇者の素質があることが発覚され、それを知った孤児院の人間や村人が、噂を流して喧伝しやがった。俺は望んではなかったのに。やがて噂を聞きつけた国王が、半ば強制に俺を王国に連れて、いきなり魔王軍と魔王の討伐に力を貸せと命令してきた。
 その時の国王の命令口調が、前世のブラック企業のクソ上司を彷彿とさせてとても嫌な気分になった。断ることを許さないという圧力が大臣たちや兵士たちからもかかってきて、更には可憐な王女様からもお願いされた俺は、渋々命令に従って王国の魔王討伐軍に入隊した。
 そこから勇者としての異世界生活が始まったわけだが......ここでも俺に対する扱いはクソッタレなものだった。

 「勇者の素質があると聞いて呆れる。あの程度の魔物を容易に討伐できないのか?あまり失望させてくれるなよ」

 討伐任務から帰ってくる度にネチネチと偉そうな口を常に叩いてくる大臣ども。俺はチート主人公なんかじゃない。最初からハイレベルの魔物なんか倒せるわけないのに、いつも強い兵士たちと比較して俺にそんなことを言ってくる。前世の嫌味ばかり言ってくるパワハラ上司みたいに。



 「勇者のお前の為に沢山出資しているんだ!私たちの為にもっと魔王軍を討伐してもらわないと困るよ君!」
 「そもそも下賤な身分が勇者だというのがおかしいのだ!しかも大して強くもい、せいぜい王国の兵士10人分程度の実力しかない。おまけに体も貧相で幸薄い顔をしている。これだから平民は...!」

 出資しているからといって俺が身を粉にして魔族討伐するのは当たり前だとか、身分などを理由に俺を貶す言動を浴びせてくる貴族ども。だから俺は素質があるだけで、チート無双できるスペックなんてないってんだろが。しかも外見と身分も馬鹿にしてきやがる。これも前世と同じ、外見を貶してくるクソ同僚みたいで最悪だった。



 「こんなガキが勇者だと?どうせイカサマか何かで討伐軍に入れてもらえたクソガキだろうが!弱そうな形のくせに調子こいてんじゃねーぞ!」
 「お前なんかが魔王軍の猛者と戦っただぁ?ホラを吹くのも大概にしろぉ!」

  これまた外見でしか判断ができない性格クソ野郎の冒険者ども。ギルドに入る度にイカサマ野郎だの偽勇者だのと罵ってきてたくさん悪口を浴びせられた。こっちが何か言ったら逆ギレしてきて暴力振るってくるクソ野郎もいた。安アパートのあの隣のクズ野郎と同じ人間ばかりだ。



 ほんっっっと、異世界でもロクな人間しかいない。前世とほとんど変わらない、クズどもばっかりだ。勇者だからといって過度の期待をしてきて、平民だから貴族や王族の言うことを聞くのは当たり前だみたいなことを言ってくる。ブラック企業となんの変わりもない最低の日々だった。前世のとある小説での造語で...異世界は良い世界...などとあったが、ふざけたことほざいてんじゃねーぞバカルテットが。


 だけど......



 「友聖、討伐任務ご苦労様です。今回はいつもよりレベルが高い魔物と戦ったと聞いたわ。ケガは...平気?」


 唯一、俺のことを気にかけてくれて労いの言葉をかけてくれる人もいた。
 王女のリリナ様。艶やかな青い髪を肩にかかるくらいまで伸ばして、笑うと可愛い少女を思わせるこの彼女だけが、戦いから戻ってくる俺に優しい声をかけてくれた。年が近いこともあって、親しい同級生のように接してくれて、俺の唯一の味方だった。
 
 「友聖はどんどん強くなってるよ。勇者っていわれるだけあって成長が早いのかな。でも、無理はしないでね?無事に帰ってくれるのが良いから...」
 「ありがとう......リリナ様」

 人の心を潤してくれるようなその綺麗な声に俺は癒された。リリナ様の支えがあったお陰で、なんとか腐らずに勇者としての責務を負って、魔王軍と戦った。次第にチートレベルに強くもなっていき、魔王軍をたくさん討伐できるようになった。

 成果をたくさん上げても、俺に対する国王や大臣、貴族どもの見る目は変わらずで、王国...いや、世界の為に粉骨砕身の精神で魔王軍と戦っているのに俺を戦いの道具としか見ていない。自分らの為に汗と血と心を流して削るのは当然だと言いそうな態度の野郎ばかりだ。
 討伐隊の兵どもやギルド登録の冒険者どもも、実力をつけた俺に対して直接的な干渉はしてこなくなったものの、陰で嫌味や嫉妬の類の醜い言葉を遠くから浴びせられるようになった。さらには王国の民や村の人間までもが、俺に対して嫌味を言うようになった。さっさと魔王を倒せだの何だのと、こっちはいつも全力で戦っているのに...そもそも元はこの世界の人間じゃないっていうのにだ。
 そういう目や言葉が向けられる度に、前世でのクソッタレな出来事が掘り返されて胸糞な気分になった。何でこんな奴らの為に頑張らなければならないのか?嫌味や侮蔑の目や言葉しか浴びせてこないクズどもを守らなければならないというのか、マジで心が病みそうになった。

 けれどリリナ様だけは、そんな俺を支えてくれた。前世で肉親以外...他人で俺に優しくしてくれた人は一人もいなかったので彼女には本当に助けられた。少し、恋慕の情を抱いた自覚もあった。が、身分を重視する旧時代の人間が蔓延るこの異世界では、俺のこの儚い恋心は成就しないだろうと思い込み、早々に彼女との恋は諦めた。あくまで、親しい友人止まりで良いと割り切った。それだけでも、嬉しく思えたから。
 
 そして、勇者として戦うことが決まってから約2年後、ついに俺は死闘の末に魔王を討伐して、魔王軍の殲滅を成し遂げた。
 五体ズタズタにされながらも、魔王との一対一《サシ》勝負を制して辛勝、魔王城を陥落させた。最終決戦前の俺は、武術と魔術、さらには剣術を、右に出る奴はいないくらいに極めたチート勇者と化していた。どうやら俺は大器晩成型のチート主人公だったらしい。
 ともあれ大女神の予言通り魔王と戦うことになり、最終的には魔王を倒して俺は異世界の人間たちの平和を守ることに成功したのであった。

 「ぐ......勇者よ、我を討った褒美に一つ助言をしてやろう。
 お前は後悔することになる...。お前が守った者たちに価値など微塵もなかったと、やがて気付くだろう...。見限るなら今のうちだ。人間は醜い...。
 では、さらばだ勇者―――」

 魔王が死に際に何か言っていたが、特に聞く耳を持たなかった。
 とにかくこれで少しは俺を見る目が変わるだろう。蔑んできた俺への態度の改正、そして今回の魔王討伐に対する褒賞・地位の確立等等......もう俺を蔑視することは無いはずだ。俺に嫌味を垂れることは無くなるはずだ。

 (みんな......俺のことを大事にしようと、思うはずだ!地位を得られれば、リリナ様と正式に付き合うことも...!)

 魔王を討伐した直後の俺は、王国やギルド、村のみんな全員が俺に対する態度を改めると、唯一心の支えとしていたあの人と真正面から接することができると。


 ――そう思っていた......。



 現実は、またも俺を裏切りって――
 俺を失望させて――
 俺の心を、壊しにきた――


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