ジッグラト
episode.1
「………」
ゆっくりと意識を覚醒していく。どうやら眠っていたようだ。背中には柔らかい感触。目を開けるとそこには何の変哲も無いコンクリートの壁と天井。そして……銃が目に入った。
  どうやらライフルらしい。所々木でできているあたりどうやら随分と古いライフルみたいだ。何よりグリップ式リロードだ。
それはひっそりと壁に寄りかかっていて、古びているもののいまだ殺気立っている。今か今かと弾がその銃身から撃ち出されるのを待っているかのよう銃口を光らせていた。
「どこだ…ここ?」
そう、さっきまで…?思い出せない。何をしていたのか、一体自分が何者なのか、全く思い出せない。一応男みたいだ。確か名前は………ショウマだっけな?
「………ここはどこだろう?」
皆目見当もつかない。窓は一応あるみたいだがその周りには何やら赤黒いシミと割れたガラスが散乱していた。
「………血?……とにかく外に出てみるか…」
銃は……いらないな。なぜここにあるかはわからないが必要ないだろう。それから色々と部屋の中を探してみたが家具の1つもない。あったのは注射器。あとは何やら液体の入っていたようなペットボトルだけだった。
ペットボトルに関しては蓋さえあれば水筒がわりにでもできそうだが、あいにく水がない。
そしてベッドの横にあった黒いボロボロのリュックサックに使えそうなペットボトルを2.3本だけ放り込み扉へとゆっくりと歩みを進める。
「………」
無言で扉を開ける。ギシッというドアの軋む音がし、ぎこちない動作で扉が開いた。
 そこには………
「なんだここ…?」
そこには草木に覆われ、巨大な都市があった。
「………何だあれ?」
よく道路を見てみるとそこには戦車やヘリの残骸などが所々で深緑に飲み込まれている。空は……見えない。というか天井だ。とてつもなくだだっ広い天井があった。
一体なんで兵器がここにあるのかさっぱりだがとりあえず下に降りないと話しが進まないだろう。
「向こうに階段がある……行ってみるか」
出てきた部屋の扉と同じような扉がいくつも並んでいる。その全ての扉に鍵がかかっていたので中には入れなかった。そして階段に差し掛かったあたりであるものを見つけた。
「ん?なんだこれ?鍵か」
少し錆びているが鍵だ。どこの鍵だろう?………203?何の数字か分からないが書いてあった。
「一応取っておくか」そう思いポケットに突っ込む。
それから階段を降りた。どうやらさっきの階は三階だったらしい。下に行くにつれ緑が深くなっていき、進みづらくなっていた。
そして一階へとたどり着いたのだが………
「邪魔だな……」
どうしようか。どうやら鍵がかかっているらしい。しかも鍵穴が潰されていて鍵が差し込めない。
もしかしたらと思った鍵もこれでは使い物にならない。
「さっきの銃でこの鍵壊せるんじゃないか?」
それから先ほどの階段を登り、さっきの部屋に戻ってきた。
「………ボルトアクションか…」
さっきの銃。もといライフルはボルトアクション式のライフルだった。少し錆びているがまだまだ現役のようだ。
「弾が入ってない……困ったな…」
弾がなければ話が始まらない。それから外に出て部屋の周りに何かないかと探したがもちろん弾なんて出てこなかった。
「305……この部屋の番号か?」
三階の階段から5つ目の部屋だから305。そんなことを思った。
「あ、この鍵って下の階の部屋の鍵か?」
それから先ほどの階段を1つ降りて恐らく203であろう部屋の前にやってきた。
「ここか……なんだこの扉…穴が空いてる……まあいいや……開いた!」
まさか本当にここの鍵だとは思わなかった。ゆっくりと扉を開け、中を覗き込む。
「お邪魔しまーす……」
何だかコソ泥になった気分だ。だが、この部屋にも家具1つなかった。さっきの部屋と違うのは……
「死体………?」
そこには白骨死体があった。胸に大穴が開いた白骨死体。恐らく死んでからかなり長い時間が経っているのだろう。その腕には今自分が持っているのと同じ銃が握られていた。ぱっと見軍人ぽい服装をしている。
(弾を持っているかもしれない…)
若干の恐怖はある。白骨したいなんて普通はない。だが、この人には悪いが弾をいただいておこう。じゃないと外にも出られない。それから両手を合わせて「すみません」と謝り、何か持っていないか調べた。
「………弾はこの人が持ってる銃に入ってたやつだけか…」
弾は3発入っていた。あとは水筒。まだ少し中身が残っている。それからナイフ。未使用の包帯。ハンドガン。弾は弾倉に1発だけ入っていた。ペインキラーと書かれた透明な液体が入った未使用の注射器。などなどたくさん持っていた。
悪いけど全部持って行かせてもらおう。でも注射器はあまり使わないだろうが…というかなんだろうこの液体…ペインキラー……?まあいい。とにかく銃弾が手に入ったんだ。さっさとさっきの場所に行って外に出よう。
それから白骨死体……もとい骸骨さんの部屋を出た。階段へ向かい1階へと降り、先ほどの扉の前に立った。
骸骨さんの銃の弾を弾倉にセットし、ボルトハンドルを引く。
ガチャリという音で弾倉に弾が入ったことを確認する。
ストックを肩に当て銃を固定する。それから狙いを定めて……トリガーをゆっくりと引いた。
ターンッ!
軽快な音がビルの中に響き渡った。鍵の部分は完全に破壊され銃の反動で勝手に向こう側へと開いた。
「………ロビーか……?」
そこには完全に植物に覆われた広い空間が広がっていた。ビリビリに裂けたソファーが横倒しになって倒れている。
「………何があったんだろう…」
「そこに誰かいるの………?」
急にそのソファーの裏側から声がした。銀鈴のように透き通っているがどこか感情のこもっていないような声がした。
 そこでバックからハンドガンを取り出し構え、ゆっくりとソファーへ近づく。
「………誰だ」
「私……?私は…私。それ以上でもそれ以下でもありません」
そこには腰まである長い金髪と透き通るような碧い目をした少女が倒れたソファーにもたれかかっていた。
「………何をしている?」
「足、怪我しちゃって歩けなくて少し休んでます」
「……大丈夫か?」
「大丈夫です」
そう言う彼女の足は血にまみれている。白くすらりと伸びた足のふくらはぎに見るのも痛ましい傷がある。何かに噛まれたような跡もある。
「……待ってろ治療してやる」
リュックから包帯。水筒。ペインキラーと書かれた注射器を取り出した。
「………どうして治療してくれるのですか?」
彼女はキョトンとした顔でこちらを伺っている。特に他意はないので素直に質問に答える。
「いや、痛そうだったから…嫌だったか?」
「そう言うことじゃないです。なぜ私にそんなことをしてくれるのか聞いてるんです」
「………痛いだろ?」
「それは……痛いですけど…」
「それだけだ」
「……そうですか。でも正直私を助けたところで何もメリットはありませんよ?」
「別にいいって…よし、終わったぞ」
傷を水筒に余っていた水で洗い流し、包帯できつく縛った。彼女の足には少し長すぎた包帯の余った部分をナイフで斬る。これで止血はできるだろう。あとは………
「まだ痛むか?」
「………少し…というかまだかなり痛いですね…」
「腕を出せ。痛くはしないから」
「………はい」
彼女の細腕にペインキラーと書かれた注射器を突き立てる。そのまま中の液体を流し込む。
「………」
「ほら、これで刺したところおさえてろ」
「はい……」
そう言って俺は包帯を少しナイフで斬って渡す。しかし………一体何があってこんな怪我をしたのだろうか。皆目見当も付かない。
「で、どうしてこんな怪我をしたんだ?何かに噛まれていたような傷跡だったような気が………」
「………犬…いや狼に襲われました。それでここまで逃げてきたのですが……」
「狼?なんでそんなものがここにいるんだ……」
「………あなた…今この都市……いえ世界と言いましょうか。どうなってるか知らないのですか?」
「………実は記憶が曖昧でよく前のことを覚えてないんだ」
「そうですか……じゃあ説明しましょう。ここで、この階層都市で何が起こったのかを…」
ゆっくりと意識を覚醒していく。どうやら眠っていたようだ。背中には柔らかい感触。目を開けるとそこには何の変哲も無いコンクリートの壁と天井。そして……銃が目に入った。
  どうやらライフルらしい。所々木でできているあたりどうやら随分と古いライフルみたいだ。何よりグリップ式リロードだ。
それはひっそりと壁に寄りかかっていて、古びているもののいまだ殺気立っている。今か今かと弾がその銃身から撃ち出されるのを待っているかのよう銃口を光らせていた。
「どこだ…ここ?」
そう、さっきまで…?思い出せない。何をしていたのか、一体自分が何者なのか、全く思い出せない。一応男みたいだ。確か名前は………ショウマだっけな?
「………ここはどこだろう?」
皆目見当もつかない。窓は一応あるみたいだがその周りには何やら赤黒いシミと割れたガラスが散乱していた。
「………血?……とにかく外に出てみるか…」
銃は……いらないな。なぜここにあるかはわからないが必要ないだろう。それから色々と部屋の中を探してみたが家具の1つもない。あったのは注射器。あとは何やら液体の入っていたようなペットボトルだけだった。
ペットボトルに関しては蓋さえあれば水筒がわりにでもできそうだが、あいにく水がない。
そしてベッドの横にあった黒いボロボロのリュックサックに使えそうなペットボトルを2.3本だけ放り込み扉へとゆっくりと歩みを進める。
「………」
無言で扉を開ける。ギシッというドアの軋む音がし、ぎこちない動作で扉が開いた。
 そこには………
「なんだここ…?」
そこには草木に覆われ、巨大な都市があった。
「………何だあれ?」
よく道路を見てみるとそこには戦車やヘリの残骸などが所々で深緑に飲み込まれている。空は……見えない。というか天井だ。とてつもなくだだっ広い天井があった。
一体なんで兵器がここにあるのかさっぱりだがとりあえず下に降りないと話しが進まないだろう。
「向こうに階段がある……行ってみるか」
出てきた部屋の扉と同じような扉がいくつも並んでいる。その全ての扉に鍵がかかっていたので中には入れなかった。そして階段に差し掛かったあたりであるものを見つけた。
「ん?なんだこれ?鍵か」
少し錆びているが鍵だ。どこの鍵だろう?………203?何の数字か分からないが書いてあった。
「一応取っておくか」そう思いポケットに突っ込む。
それから階段を降りた。どうやらさっきの階は三階だったらしい。下に行くにつれ緑が深くなっていき、進みづらくなっていた。
そして一階へとたどり着いたのだが………
「邪魔だな……」
どうしようか。どうやら鍵がかかっているらしい。しかも鍵穴が潰されていて鍵が差し込めない。
もしかしたらと思った鍵もこれでは使い物にならない。
「さっきの銃でこの鍵壊せるんじゃないか?」
それから先ほどの階段を登り、さっきの部屋に戻ってきた。
「………ボルトアクションか…」
さっきの銃。もといライフルはボルトアクション式のライフルだった。少し錆びているがまだまだ現役のようだ。
「弾が入ってない……困ったな…」
弾がなければ話が始まらない。それから外に出て部屋の周りに何かないかと探したがもちろん弾なんて出てこなかった。
「305……この部屋の番号か?」
三階の階段から5つ目の部屋だから305。そんなことを思った。
「あ、この鍵って下の階の部屋の鍵か?」
それから先ほどの階段を1つ降りて恐らく203であろう部屋の前にやってきた。
「ここか……なんだこの扉…穴が空いてる……まあいいや……開いた!」
まさか本当にここの鍵だとは思わなかった。ゆっくりと扉を開け、中を覗き込む。
「お邪魔しまーす……」
何だかコソ泥になった気分だ。だが、この部屋にも家具1つなかった。さっきの部屋と違うのは……
「死体………?」
そこには白骨死体があった。胸に大穴が開いた白骨死体。恐らく死んでからかなり長い時間が経っているのだろう。その腕には今自分が持っているのと同じ銃が握られていた。ぱっと見軍人ぽい服装をしている。
(弾を持っているかもしれない…)
若干の恐怖はある。白骨したいなんて普通はない。だが、この人には悪いが弾をいただいておこう。じゃないと外にも出られない。それから両手を合わせて「すみません」と謝り、何か持っていないか調べた。
「………弾はこの人が持ってる銃に入ってたやつだけか…」
弾は3発入っていた。あとは水筒。まだ少し中身が残っている。それからナイフ。未使用の包帯。ハンドガン。弾は弾倉に1発だけ入っていた。ペインキラーと書かれた透明な液体が入った未使用の注射器。などなどたくさん持っていた。
悪いけど全部持って行かせてもらおう。でも注射器はあまり使わないだろうが…というかなんだろうこの液体…ペインキラー……?まあいい。とにかく銃弾が手に入ったんだ。さっさとさっきの場所に行って外に出よう。
それから白骨死体……もとい骸骨さんの部屋を出た。階段へ向かい1階へと降り、先ほどの扉の前に立った。
骸骨さんの銃の弾を弾倉にセットし、ボルトハンドルを引く。
ガチャリという音で弾倉に弾が入ったことを確認する。
ストックを肩に当て銃を固定する。それから狙いを定めて……トリガーをゆっくりと引いた。
ターンッ!
軽快な音がビルの中に響き渡った。鍵の部分は完全に破壊され銃の反動で勝手に向こう側へと開いた。
「………ロビーか……?」
そこには完全に植物に覆われた広い空間が広がっていた。ビリビリに裂けたソファーが横倒しになって倒れている。
「………何があったんだろう…」
「そこに誰かいるの………?」
急にそのソファーの裏側から声がした。銀鈴のように透き通っているがどこか感情のこもっていないような声がした。
 そこでバックからハンドガンを取り出し構え、ゆっくりとソファーへ近づく。
「………誰だ」
「私……?私は…私。それ以上でもそれ以下でもありません」
そこには腰まである長い金髪と透き通るような碧い目をした少女が倒れたソファーにもたれかかっていた。
「………何をしている?」
「足、怪我しちゃって歩けなくて少し休んでます」
「……大丈夫か?」
「大丈夫です」
そう言う彼女の足は血にまみれている。白くすらりと伸びた足のふくらはぎに見るのも痛ましい傷がある。何かに噛まれたような跡もある。
「……待ってろ治療してやる」
リュックから包帯。水筒。ペインキラーと書かれた注射器を取り出した。
「………どうして治療してくれるのですか?」
彼女はキョトンとした顔でこちらを伺っている。特に他意はないので素直に質問に答える。
「いや、痛そうだったから…嫌だったか?」
「そう言うことじゃないです。なぜ私にそんなことをしてくれるのか聞いてるんです」
「………痛いだろ?」
「それは……痛いですけど…」
「それだけだ」
「……そうですか。でも正直私を助けたところで何もメリットはありませんよ?」
「別にいいって…よし、終わったぞ」
傷を水筒に余っていた水で洗い流し、包帯できつく縛った。彼女の足には少し長すぎた包帯の余った部分をナイフで斬る。これで止血はできるだろう。あとは………
「まだ痛むか?」
「………少し…というかまだかなり痛いですね…」
「腕を出せ。痛くはしないから」
「………はい」
彼女の細腕にペインキラーと書かれた注射器を突き立てる。そのまま中の液体を流し込む。
「………」
「ほら、これで刺したところおさえてろ」
「はい……」
そう言って俺は包帯を少しナイフで斬って渡す。しかし………一体何があってこんな怪我をしたのだろうか。皆目見当も付かない。
「で、どうしてこんな怪我をしたんだ?何かに噛まれていたような傷跡だったような気が………」
「………犬…いや狼に襲われました。それでここまで逃げてきたのですが……」
「狼?なんでそんなものがここにいるんだ……」
「………あなた…今この都市……いえ世界と言いましょうか。どうなってるか知らないのですか?」
「………実は記憶が曖昧でよく前のことを覚えてないんだ」
「そうですか……じゃあ説明しましょう。ここで、この階層都市で何が起こったのかを…」
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