光の詩

小鳥 薊

第2話 夏の一日

鳥の囀りは黄色い朝
虫の翅音は濃紺の夜
おもいおもいに膨張する

君のいる夏
君のいない夏

揺れる熱気球の下で
海に落ちる影が迷子

エンベロープ
満月みたいなエンベロープよ

空はどこまでも青いので
火傷を知らぬ裸足たちは
夏を一気に駆け抜ける
君と積み雲に乗りたかった

カモメの群れはオールを漕いで
夏の向こうへ行ってしまうのです

エンドロール
終わらないエンドロールよ

積み雲の隙間から
いつか君に降り注いでいた天使の梯子は
嘘みたいに
灰色の水平線へ
吸い込まれていった
吸い込まれていった

積み雲もない
静かで冷たい夜の海よ
星々の下の住人たちよ

夏は膨張を続け
やがて弾けて死んでしまうのです
土に落ちた檸檬の果肉の中で
きゅう、と私は泣いた

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