幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)
ラックの奮闘
「ファイアボール!」
ラックが放った拳大の火の玉が、人型兵器の体勢を僅かに崩す。
その隙に急いで距離を詰め、人型兵器の足の間を通過して、敵の背後に回り込む。
「アクアスプラッシュ!」
そして、移動の間に詠唱を済ませておいた水属性の魔法を放ち、ダメージを与えると共に足元を濡らす。
金属製の床という事も相まって、ツルツルと滑りやすくなったため、人型兵器の動きが目に見えて鈍くなる。
ラックの狙い通り、バランスの制御に苦労している様子だ。
不安定な足場のせいで、こちらに振り向くのが遅れている。
そのチャンスを逃さず、再びラックが人型兵器の足元を駆け抜けた頃、ようやく人型兵器が体の向きを変える。
しかし、そのお陰で、またしてもラックが背後を取ることに成功した。
ラックが一人で戦闘を始めてから、既に何度も繰り返された展開だ。
「はぁ……はぁ……。よし、なんとか僕だけでも凌げてる……。このまま、カナさんが戻るまで時間を稼げれば……」
ちなみに、これまで散々、苦しんできた人型兵器のレーザー攻撃は、今のところ機能していない。
その挙動を観察していたラックが、2つの法則に気付いたのだ。
まず1つ目は、人型兵器の正面にのみ、レーザーが放たれるということ。
そして2つ目は、黄色いレーザーが反射する時、その射線上に人型兵器がいないことだ。
先程のラックの動きは、この2つを踏まえて考えた作戦によるものだった。
敵の背後と人型兵器の足元、2つの安全地帯を行き来して、レーザーを封じるという狙いだ。
その目論見は見事に功を奏し、ラックの命を繋いで来た。
とはいえ――、
「……さすがに、キツく……なってきたかな……」
たった一度のミスで瓦解する、薄氷を踏むような作戦だ。
その緊張感は、ラックの精神力をガリガリと削り、集中を乱していく。
そして、遂に――、
「ウィンドカッター……あっ!?」
長く続いていた均衡が崩れ去る。
MPの残量を把握し損ねたせいで、魔法が発動しなかったのだ。
また、濡れていた床も、すっかり乾いている頃合いだった。
つまり、人型兵器の動きを遮るものは何もない。
「しまっ――」
これまでの鬱憤を晴らすかのような、レーザーの嵐。
その全てがラック一人に向けて殺到する。
直撃すれば間違いなくHPが消し飛ぶだろう。
そうなれば、攻略は失敗。
強制的に街に戻され、伝説の商人の宝には届かない。
ベイドを見返すという目標も叶わないのだ。
「ラックゥゥゥ!」
未だ麻痺が抜けきらないカナが叫ぶ。
そちらをチラリと振り返り、ラックは諦めと共に笑みを浮かべた。
「カナさん……ごめんなさい」
そう呟いて、全てを受け入れるように手を広げ、前を見据える。
それでも、やっぱり怖くて、思わず目を閉じそうになったラック。
しかし――、
「…………えっ?」
ラックは見た。
天から降り注いだ光が、全てのレーザーを呑み込んでいく様を。
ラックが放った拳大の火の玉が、人型兵器の体勢を僅かに崩す。
その隙に急いで距離を詰め、人型兵器の足の間を通過して、敵の背後に回り込む。
「アクアスプラッシュ!」
そして、移動の間に詠唱を済ませておいた水属性の魔法を放ち、ダメージを与えると共に足元を濡らす。
金属製の床という事も相まって、ツルツルと滑りやすくなったため、人型兵器の動きが目に見えて鈍くなる。
ラックの狙い通り、バランスの制御に苦労している様子だ。
不安定な足場のせいで、こちらに振り向くのが遅れている。
そのチャンスを逃さず、再びラックが人型兵器の足元を駆け抜けた頃、ようやく人型兵器が体の向きを変える。
しかし、そのお陰で、またしてもラックが背後を取ることに成功した。
ラックが一人で戦闘を始めてから、既に何度も繰り返された展開だ。
「はぁ……はぁ……。よし、なんとか僕だけでも凌げてる……。このまま、カナさんが戻るまで時間を稼げれば……」
ちなみに、これまで散々、苦しんできた人型兵器のレーザー攻撃は、今のところ機能していない。
その挙動を観察していたラックが、2つの法則に気付いたのだ。
まず1つ目は、人型兵器の正面にのみ、レーザーが放たれるということ。
そして2つ目は、黄色いレーザーが反射する時、その射線上に人型兵器がいないことだ。
先程のラックの動きは、この2つを踏まえて考えた作戦によるものだった。
敵の背後と人型兵器の足元、2つの安全地帯を行き来して、レーザーを封じるという狙いだ。
その目論見は見事に功を奏し、ラックの命を繋いで来た。
とはいえ――、
「……さすがに、キツく……なってきたかな……」
たった一度のミスで瓦解する、薄氷を踏むような作戦だ。
その緊張感は、ラックの精神力をガリガリと削り、集中を乱していく。
そして、遂に――、
「ウィンドカッター……あっ!?」
長く続いていた均衡が崩れ去る。
MPの残量を把握し損ねたせいで、魔法が発動しなかったのだ。
また、濡れていた床も、すっかり乾いている頃合いだった。
つまり、人型兵器の動きを遮るものは何もない。
「しまっ――」
これまでの鬱憤を晴らすかのような、レーザーの嵐。
その全てがラック一人に向けて殺到する。
直撃すれば間違いなくHPが消し飛ぶだろう。
そうなれば、攻略は失敗。
強制的に街に戻され、伝説の商人の宝には届かない。
ベイドを見返すという目標も叶わないのだ。
「ラックゥゥゥ!」
未だ麻痺が抜けきらないカナが叫ぶ。
そちらをチラリと振り返り、ラックは諦めと共に笑みを浮かべた。
「カナさん……ごめんなさい」
そう呟いて、全てを受け入れるように手を広げ、前を見据える。
それでも、やっぱり怖くて、思わず目を閉じそうになったラック。
しかし――、
「…………えっ?」
ラックは見た。
天から降り注いだ光が、全てのレーザーを呑み込んでいく様を。
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