幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)

雪月 桜

凸凹コンビ

「それで? 今回は、いったい何を企んでいる?」

壁を這うようにして迫るトカゲ型のモンスターを切り捨てつつ、ベイドが尋ねると——、

「ん~? なんのことかな~?」

わざとらしく首を傾げた、みのりんが、コウモリ型のモンスターを撃ち落として、答えを返す。

現在、二人はパーティーを組んで、伝説の商人の宝が眠ると言われているダンジョンを攻略中だ。

とある山の頂きに隠された入口から侵入し、第1層の階段を下りて、第2層を進んでいる。

しかし、ベイドは未だに今回の成り行きに納得していない様子だった。

「惚けるな。お仲間と離れてまで、わざわざ僕に付いてきておいて、何も無い訳がないだろう。まさか、スパイのつもりか? あるいは僕の足を引っ張って、彼のサポートがしたいのか?」

いつものように嫌みったらしい口調で、みのりんを問い詰めるベイド。

しかし、いい加減、みのりんも彼の人となりに慣れているので、特に気にならなかった。

「うーん。まぁ、ある意味ではサポートと言えるかもね~。でも、攻略で手を抜く気はないし、ベイドさんの邪魔をするつもりもないよ?」

肝心の部分は濁して、はぐらかすように答える、みのりん。

「……分からないな。だったら何が目的だと言うんだ?」

「えっとね~、まだ内緒っ! それを言っちゃうとベイドさんが変に意識しちゃうかも知れないし。出来るだけ自然体で攻略に集中して欲しいんだよね~」

「……まったく、決闘デュエルの件といい、つくづく勝手だな君は」

呆れたように溜め息を吐くベイドだが、それ以上、追及するつもりはないようだ。

「でも、今回は、ちゃんと役に立ってるでしょ?」

「否定はしない。……やはり、あの時は手を抜いていたな?」

みのりんとの決闘デュエルの事だ。

「そんなつもりはないよ。ただ真正面から堂々と勝負したかっただけ。呆気なく防がれちゃったけど」

「こちらも、それほど余裕があった訳じゃないけどね。君がリタイアしなければ、危なかった。僕よりレベルが低くて職業も冒険者のくせに、あの馬鹿みたいな威力の砲撃はなんだ?」

「正確には銃弾なんだけど……。まぁ、詳しいことは秘密かな。ただ、あれは全部のMPを消費して初めて出せる威力だから、一撃で決まらなかったらリタイアするしかないよ。カナちゃんみたいに素手で戦う訳にもいかないし」

まぁ、弓の通常攻撃ならMPの消費はないが、遮蔽物もない空間で呑気に弓を構えている暇は無かっただろう。

「す、素手で戦う? 君の仲間も相当な規格外だな。彼女の場合は言葉遣いも乱暴だが」

「根は良い子だけどね。ベイドさんと同じで」

「誰が良い子だ! 年下のくせに、人を子供扱いするんじゃない!」

「あっ、あっちに光が見える! ベイドさん、行ってみよ!」 

「だから、人の話を聞けぇ!」

相変わらず、みのりんの自由奔放ぶりに振り回されるベイドであった。

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