幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)
楽園の裏側2
「——本日の議題は以上となります。お疲れ様でした。では、ここからは月間MVPの選定に関わる報告に移りたいと思います」
日本の某所に存在する、とあるビル。
その最上階のフロアに設けられた会議室で、一人の男が声を発した。
仕立ての良いスーツに身を包んでいる、この男は、このビルを所有する会社の社長だ。
今日も相変わらず、変態どものブレーキ役として、会議の司会・進行を務めている。
「いやぁ、今回は、どんなMVP候補の活躍が見られるのか、楽しみじゃわい」
「そうですな。むしろ、このために会議に参加していると言っても過言ではない」
「あらあら、そう仰るなら、先の会議で出た貴方のアイデアは取り消し……という事で宜しくて?」
「そ、それとこれとは別だっ! まったく、最近の若者は、すぐに揚げ足を……(ぶつぶつ)」
堅苦しい会議が終わったことで空気が弛緩し、雑談に興じる参加者が増えていく。
まぁ、堅苦しい会議といっても、主に個々の性癖をぶつけ合う議論なので、本人たちに、その意識はないかもしれない。
参加者は世界各地に散らばっているため、ホログラム越しの会話ではあるが、みな楽しそうだ。
ちなみに、この会議に参加する者は全員、日本語を完全にマスターしている。
これも、幼女への愛が為せる業だろうか。
「……コホン。静粛にお願いします」
会議室に満ちる声が多く、大きくなってきた所で、司会の男が注意を呼び掛ける。
ここに集まっているのは、彼よりも地位が高い人間ばかりだが、その指示には大人しく従った。
ここで騒げば、お楽しみが後回しになると分かっているからだろう。
まるで母親におやつを盾にされた子供のようだ、と、司会の男は内心で苦笑する。
もちろん、顔はポーカーフェイスを保ったままだが。
「……それでは、お楽しみ下さい」
そこから、しばらくは、見やすく編集された、プレイヤーの活動記録が、会議室の大型ディスプレイに映し出された。
月毎に、最も活躍したプレイヤーを称える、月間MVP選定のため、という名目だが、実態は変態どもの観賞会だ。
とはいえ、別に、いかがわしいシーンを切り取ったものではない。
というか、【ネバーランド】は、その健全さをアピールするために、教育上よろしくない行為全般が禁止されているため、見たくても見れない。
単に、幼女たちの活躍を眺めるもので、そういう意味では授業参観や運動会の雰囲気に近いかもしれない。
「うんうん。やはり、戦闘以外のシステムにも力を入れたのは正解だな。せっかく、各業界の権威が集まっているからと始まった企画だが、選択肢の幅が増えたことで、幼女たちの個性が良く見える」
「特に、生産職の導入は、ユーザーからの評判も高いですわ。他のゲームでも良く見られる仕様のため、独自性は無いかも知れませんが、我が【ネバーランド】には、極限のリアリティーという他にはない武器がありますものね」
「うむ。単純な料理ひとつ取っても、見た目はもちろん、味や香り、舌触り、噛んだときの音など、再現度が比較にならんからな」
戦闘シーン以外にも、幼女が料理を楽しんでいるシーンや、自作のドレスにうっとりしているシーン、宝石の加工に一喜一憂しているシーンなど、悲喜こもごもな場面が映し出されていく。
その合間には、司会の男による解説も挟まれ、変態どもは非常に満足している様子だ。
そんなこんなで、数人のMVP候補の映像が終わったところで、司会の男は神妙に口を開いた。
「さて、ここまでは、いつも通りの代わり映えない映像でしたが、ここで、新たなプレイヤーを1人、ご紹介したいと思います」
そんな前置きと共に、画面に映し出されたプレイヤーネームは【みのりん】。
「このプレイヤーは、例のサーバーにログインしており、数日前から新規でプレイを開始しています」
「ほぅ、あのサーバーか。ということは、彼女は……」
「はい、その通りです。細かいことは後程。まずは映像を、ご覧ください」
そして映し出されていく、みのりんの奇行。
チュートリアルをスキップした事から始まる、独特のプレイスタイル。
その一挙手一投足に、ある者は驚き、ある者は呆れ、ある者は困惑した。
そして、また、ある者は——、
「きゃあ! この子、私の歌を歌ってくれてる! かっわいい~!」
頬に手を当て、クネクネと悶えていた。
いま映っているのは、みのりんが奈落に閉じ込められた場面。
みのりんが、鼻歌を歌いつつ、穴の中を手探りで調べている所だ。
悶えている女は、世界的に有名な日本人の女性声優。
歌手としても高い評価を受け、世間では清純派として人気を集めている人物だ。
しかし、今にもヨダレを垂らしそうな様子で、食い入るように幼女を見つめる、その姿が世に出回れば、あっという間に失墜するに違いない。
そう、ここに居る時点で分かることだが、彼女も変態である。
「お持ち帰りしてペロペロしたいよぉ~!」
「実行に移そうとした段階で、【部隊】による介入がありますので、ご注意を」
「分かってるわよ! だから、ここで見るだけで我慢してるじゃない!」
司会の男の警告に、噛みつくように反論する女。
実際に【部隊】を動かすような事案が起きれば、司会の男の仕事が増えてしまう。
保身のために口を開いた司会の男だが、こうして敵意を向けられると、どちらがマシか、少し判断に困る。
「……失礼しました」
取り敢えず、適当な謝罪で場を凌ぐことに。
その後も、みのりんの活躍は、変態どもの興味を大いに惹き付けた。
「さて、プレイヤーネーム【みのりん】の活躍をご覧いただかましたが、一つ、気になることが」
「【楽園】のこと……だな?」
「はい、本来なら例のグランドクエストをクリアした者のみ招待する場所ですが、彼女は非正規のルートから侵入してしまったようです」
「それは映像を見れば分かる。イベントで使う地下の一部が、一般フィールドの地下と繋がっていたな」
「はい。現在は修正されているため、再び入る事は不可能です。加えて、認識操作の応用で記憶の優先度を可能な限り下げております。その後の様子を見ても、【楽園】については忘れていると見て、間違いないかと」
「ならば、問題なかろう。それに、あのサーバーなら外部との接触も少ない。漏洩の心配もないだろう」
「かしこまりました」
「それにしても、やはり、あのサーバーに出入りするプレイヤーは面白い者ばかりだな。やはり特殊な境遇に身をおけば、特別な感性が育つ、ということか」
「決して、好ましい境遇とは言えませんけれど。確かに彼女たちが他とは異なる輝きを放つのは事実ですわね」
「いやはや、これからの活躍が楽しみじゃわい。それに、この娘。結構なペースで称号を集めておるのう?」
「確かに。冒険者の戦闘職はスキルを集めにくいという表の特性がありますが、称号を集めやすいという裏の特性もある。それを考慮しても、このペースは中々ですな。これは、ついに、【アレ】を手にする初のプレイヤーとなるかも」
「この少女に関しては、引き続き、調査を継続します。それと、本日、この少女と共に冒険する新たな仲間が加わったようです。そちらの少女に関しても、調査していく予定です」
「ふぉっふぉっふぉっ。MVP選定の目玉が、また一つ増えるという訳か。せいぜい期待させてもらおう」
「それでは、本日の予定は、これにて終了となります。お疲れさまでした。【全ては穢れ無き幼女のために!】」
「「【全ては穢れ無き幼女のためにッ!】」」
この挨拶は未だに慣れないな……いや、慣れたら終わりか、と、司会の男は、そんな事を最後に考えていた。
日本の某所に存在する、とあるビル。
その最上階のフロアに設けられた会議室で、一人の男が声を発した。
仕立ての良いスーツに身を包んでいる、この男は、このビルを所有する会社の社長だ。
今日も相変わらず、変態どものブレーキ役として、会議の司会・進行を務めている。
「いやぁ、今回は、どんなMVP候補の活躍が見られるのか、楽しみじゃわい」
「そうですな。むしろ、このために会議に参加していると言っても過言ではない」
「あらあら、そう仰るなら、先の会議で出た貴方のアイデアは取り消し……という事で宜しくて?」
「そ、それとこれとは別だっ! まったく、最近の若者は、すぐに揚げ足を……(ぶつぶつ)」
堅苦しい会議が終わったことで空気が弛緩し、雑談に興じる参加者が増えていく。
まぁ、堅苦しい会議といっても、主に個々の性癖をぶつけ合う議論なので、本人たちに、その意識はないかもしれない。
参加者は世界各地に散らばっているため、ホログラム越しの会話ではあるが、みな楽しそうだ。
ちなみに、この会議に参加する者は全員、日本語を完全にマスターしている。
これも、幼女への愛が為せる業だろうか。
「……コホン。静粛にお願いします」
会議室に満ちる声が多く、大きくなってきた所で、司会の男が注意を呼び掛ける。
ここに集まっているのは、彼よりも地位が高い人間ばかりだが、その指示には大人しく従った。
ここで騒げば、お楽しみが後回しになると分かっているからだろう。
まるで母親におやつを盾にされた子供のようだ、と、司会の男は内心で苦笑する。
もちろん、顔はポーカーフェイスを保ったままだが。
「……それでは、お楽しみ下さい」
そこから、しばらくは、見やすく編集された、プレイヤーの活動記録が、会議室の大型ディスプレイに映し出された。
月毎に、最も活躍したプレイヤーを称える、月間MVP選定のため、という名目だが、実態は変態どもの観賞会だ。
とはいえ、別に、いかがわしいシーンを切り取ったものではない。
というか、【ネバーランド】は、その健全さをアピールするために、教育上よろしくない行為全般が禁止されているため、見たくても見れない。
単に、幼女たちの活躍を眺めるもので、そういう意味では授業参観や運動会の雰囲気に近いかもしれない。
「うんうん。やはり、戦闘以外のシステムにも力を入れたのは正解だな。せっかく、各業界の権威が集まっているからと始まった企画だが、選択肢の幅が増えたことで、幼女たちの個性が良く見える」
「特に、生産職の導入は、ユーザーからの評判も高いですわ。他のゲームでも良く見られる仕様のため、独自性は無いかも知れませんが、我が【ネバーランド】には、極限のリアリティーという他にはない武器がありますものね」
「うむ。単純な料理ひとつ取っても、見た目はもちろん、味や香り、舌触り、噛んだときの音など、再現度が比較にならんからな」
戦闘シーン以外にも、幼女が料理を楽しんでいるシーンや、自作のドレスにうっとりしているシーン、宝石の加工に一喜一憂しているシーンなど、悲喜こもごもな場面が映し出されていく。
その合間には、司会の男による解説も挟まれ、変態どもは非常に満足している様子だ。
そんなこんなで、数人のMVP候補の映像が終わったところで、司会の男は神妙に口を開いた。
「さて、ここまでは、いつも通りの代わり映えない映像でしたが、ここで、新たなプレイヤーを1人、ご紹介したいと思います」
そんな前置きと共に、画面に映し出されたプレイヤーネームは【みのりん】。
「このプレイヤーは、例のサーバーにログインしており、数日前から新規でプレイを開始しています」
「ほぅ、あのサーバーか。ということは、彼女は……」
「はい、その通りです。細かいことは後程。まずは映像を、ご覧ください」
そして映し出されていく、みのりんの奇行。
チュートリアルをスキップした事から始まる、独特のプレイスタイル。
その一挙手一投足に、ある者は驚き、ある者は呆れ、ある者は困惑した。
そして、また、ある者は——、
「きゃあ! この子、私の歌を歌ってくれてる! かっわいい~!」
頬に手を当て、クネクネと悶えていた。
いま映っているのは、みのりんが奈落に閉じ込められた場面。
みのりんが、鼻歌を歌いつつ、穴の中を手探りで調べている所だ。
悶えている女は、世界的に有名な日本人の女性声優。
歌手としても高い評価を受け、世間では清純派として人気を集めている人物だ。
しかし、今にもヨダレを垂らしそうな様子で、食い入るように幼女を見つめる、その姿が世に出回れば、あっという間に失墜するに違いない。
そう、ここに居る時点で分かることだが、彼女も変態である。
「お持ち帰りしてペロペロしたいよぉ~!」
「実行に移そうとした段階で、【部隊】による介入がありますので、ご注意を」
「分かってるわよ! だから、ここで見るだけで我慢してるじゃない!」
司会の男の警告に、噛みつくように反論する女。
実際に【部隊】を動かすような事案が起きれば、司会の男の仕事が増えてしまう。
保身のために口を開いた司会の男だが、こうして敵意を向けられると、どちらがマシか、少し判断に困る。
「……失礼しました」
取り敢えず、適当な謝罪で場を凌ぐことに。
その後も、みのりんの活躍は、変態どもの興味を大いに惹き付けた。
「さて、プレイヤーネーム【みのりん】の活躍をご覧いただかましたが、一つ、気になることが」
「【楽園】のこと……だな?」
「はい、本来なら例のグランドクエストをクリアした者のみ招待する場所ですが、彼女は非正規のルートから侵入してしまったようです」
「それは映像を見れば分かる。イベントで使う地下の一部が、一般フィールドの地下と繋がっていたな」
「はい。現在は修正されているため、再び入る事は不可能です。加えて、認識操作の応用で記憶の優先度を可能な限り下げております。その後の様子を見ても、【楽園】については忘れていると見て、間違いないかと」
「ならば、問題なかろう。それに、あのサーバーなら外部との接触も少ない。漏洩の心配もないだろう」
「かしこまりました」
「それにしても、やはり、あのサーバーに出入りするプレイヤーは面白い者ばかりだな。やはり特殊な境遇に身をおけば、特別な感性が育つ、ということか」
「決して、好ましい境遇とは言えませんけれど。確かに彼女たちが他とは異なる輝きを放つのは事実ですわね」
「いやはや、これからの活躍が楽しみじゃわい。それに、この娘。結構なペースで称号を集めておるのう?」
「確かに。冒険者の戦闘職はスキルを集めにくいという表の特性がありますが、称号を集めやすいという裏の特性もある。それを考慮しても、このペースは中々ですな。これは、ついに、【アレ】を手にする初のプレイヤーとなるかも」
「この少女に関しては、引き続き、調査を継続します。それと、本日、この少女と共に冒険する新たな仲間が加わったようです。そちらの少女に関しても、調査していく予定です」
「ふぉっふぉっふぉっ。MVP選定の目玉が、また一つ増えるという訳か。せいぜい期待させてもらおう」
「それでは、本日の予定は、これにて終了となります。お疲れさまでした。【全ては穢れ無き幼女のために!】」
「「【全ては穢れ無き幼女のためにッ!】」」
この挨拶は未だに慣れないな……いや、慣れたら終わりか、と、司会の男は、そんな事を最後に考えていた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
549
-
-
314
-
-
24251
-
-
337
-
-
4503
-
-
4
-
-
34
-
-
1978
-
-
381
コメント