幼女の、幼女による、幼女のための楽園(VRMMO)
魔女の家
「ここが、【魔女の家】かぁ。……今にも崩れそうなくらい、ボロいけど大丈夫だよね? 生き埋めとか、やだよ?」
「へ、平気ですよ。きっと、雰囲気を出すための演出ですって! それに、最悪でも広場に戻されるだけですし!」
「その考え方は、前向きなのか、後ろ向きなのか……」
メニュー画面に表示された地図を頼りに、【魔女の家】の前まで辿り着いたネネと、みのりん。
二人は、老朽化が進んだ木造の一軒家を前にして、尻込みしていた。
まぁ、築100年ほど経過していると言われても違和感の無い外観なので無理もない。
あちこちに傷や穴があり、壁や屋根には蔦が生い茂っている。
極めつけに、煙突からは紫色の毒々しい煙が立ち上っている始末。
まさに、絵本に出てくる不気味な【魔女の家】といった印象だ。
周りが背の高い建物で囲われ、薄暗くなっているのも雰囲気を助長している。
「と、とにかく中に入ってみましょう。み、みのりん。手を繋いでもらえませんか?」
「お、おうともさ! ネネちゃんは私が守るよ!」
「クーッ!」
震えるネネの手を握りしめて格好をつけた、みのりんに続き、アオも高らかに声をあげてアピールする。
まるで、ネネを守る騎士は自分だ、と言わんばかりだ。
「ふふっ、アオちゃんも守ってくれるんですか? ありがとうございます」
「……そういえば、アオちゃんって、オスなの? メスなの?」
ふと、頭に浮かんだ疑問を口にした、みのりん。
しかし、ネネは顎に手を当て、考えている風に見えて、あまり気にしていない様子だ。
「……さぁ、どうでしょう。まぁ、どちらにしろ、アオちゃんは、アオちゃんなので」
「それもそだね。萌えに性別は関係ない! という訳で、突撃ー!」
「唐突すぎですし、意味も分かりません~っ!」
取り敢えず高いテンションを維持してノリで乗り気ってしまおうという、みのりんの力業に巻き込まれ、若干、悲鳴を上げるネネだったが、二人はようやく、中に足を踏み入れた。
「うっへっへっへ。お客さんかい? 取り敢えず、これが出来上がるまで待ってておくれ。もうすぐキリが良くなるからねぇ。散らかってて悪いけど、適当に見学してなぁ」
「あっ、ここヤバイとこだ……」
「み、みのりん! 心の声が漏れてますよっ!」
【魔女の家】に入った途端、妖しさが滲み出るような笑い声と共に、老婆から歓迎される。
ちなみに、その老婆は踏み台に登り、人が3人は入れそうな巨大な釜をかき混ぜていた。
釜の中身は赤と黒の斑模様で、ぐつぐつと煮えたぎっており、良く分からない草や、良く分からない骨、良く分からない肉が浮かんでいる。
そして部屋の中は他にも、怪しい薬品が並んだ棚、謎の記号が描かれた布、不吉な光を放つ水晶など、意味不明な品が乱雑に置かれ、不穏な雰囲気を醸している。
みのりんの危険センサーが発動し、警戒心を露にしたのも無理ないだろう。
「いいから逃げよう! こんな危険な所にいられるかっ! 私は家に帰る!」
「なんで、みのりんは、危ない場面で死亡フラグばっかり立てるんですかぁっ!?」
「ぎゃーっ!? ドアが勝手に閉まって動かないっ!」
「だから、言いましたよねぇ!?」
「うっへっへっへっへっへ」
「なんか楽しそうに笑ってるぅぅぅ!」
「若いもんは元気が一番よぉ」
「思ったより、まともな理由だったぁぁぁ!」
「活きが悪いと贄にならんからねぇ」
「と、思ったら、やっぱり物騒だぁぁぁ!?」
「もー、お婆ちゃん! また、お客さんをからかって! そのうち衛兵さんに通報されるよ!」
と、みのりんの正気度がゼロになる前に助け船を出したのは、奥の部屋から顔だけ出した少女。
背は低く童顔でもあるが、勇敢な顔つきをしていて頼もしく感じる。
特に、みのりんという心の支えを失って、へたり込んでいたネネにとっては、まさに救世主だった。
「あ、ありがとうございます! えっと、お名前を聞いても?」
「あっ、ちょっとだけ、待ってください。いま着替えてたので!」
「わ、分かりました!」
それから、1分と立たず部屋から出てきたのは、先ほどの少女——ではなく、少年だった。
「初めまして! 僕はトーシロー。お婆ちゃんの一番弟子で、見習い薬師をやってます!」
ここで、ようやく落ち着いた、みのりんが再び混乱する。
「お、男の娘っ!?」
「は、はい。男の子ですけど。よく女の子に間違われます」
「そっかぁ……男の娘かぁ。お母さん、喜びそうだなぁ」
「えっ、みのりん。何で急に、お母様の話?」
「いやぁ、『お母さん、昔は男の娘と結婚したかったのよ』って、よく言ってたから。でも、幼馴染みの、お父さんが泣いて頼むから、ほっとけなくて結婚したんだって。まぁ、今ではラブラブだけど」
「そ、そうなんですか……」
友達の家庭の、こんな話を聞かされて、どんな反応を返せばいいのか。
取り敢えず、ネネは笑って誤魔化した。
「さて、お二人は、どんなご用でウチへ?」
さすが、NPC。
驚異的なスルーで、話を進める。
「あっ、そうでした! 私、薬師になりたくて、ここに来たんです!」
「そうかい、なら今日からあんたも見習い薬師だ。トーシローと仲良く頑張るんだね。ほら、薬師のバッジだ」
釜を混ぜる作業を終えたのか、踏み台から降りてネネの元にやってきた老婆は、懐から取り出したバッジを手渡すと、すぐに奥の部屋へ引っ込んだ。
「えっと、この後は、どうすれば?」
「はい、今後は、この釜を自由に使ってもらって構いません。そして、調薬を繰り返して、一定の熟練度に達したら昇級試験が受けられます。昇級試験をクリアすると、より上位のアイテムを作れるようになるので頑張って下さい。では、調薬の詳しい手順を説明しますね。まずは……」
そこから、トーシローの説明が始まり、ネネは真剣に聞き入っている。
ちなみに、みのりんも一緒に聞いていたのだが、途中で飽きてしまい、興味本意で奥の部屋を覗いてみることに。
しかし、扉を開けると、そこには——、
「ぎゃああああ!?」
「ムッ?」
老婆の姿はなく、一人の悪魔が立っていた。
「へ、平気ですよ。きっと、雰囲気を出すための演出ですって! それに、最悪でも広場に戻されるだけですし!」
「その考え方は、前向きなのか、後ろ向きなのか……」
メニュー画面に表示された地図を頼りに、【魔女の家】の前まで辿り着いたネネと、みのりん。
二人は、老朽化が進んだ木造の一軒家を前にして、尻込みしていた。
まぁ、築100年ほど経過していると言われても違和感の無い外観なので無理もない。
あちこちに傷や穴があり、壁や屋根には蔦が生い茂っている。
極めつけに、煙突からは紫色の毒々しい煙が立ち上っている始末。
まさに、絵本に出てくる不気味な【魔女の家】といった印象だ。
周りが背の高い建物で囲われ、薄暗くなっているのも雰囲気を助長している。
「と、とにかく中に入ってみましょう。み、みのりん。手を繋いでもらえませんか?」
「お、おうともさ! ネネちゃんは私が守るよ!」
「クーッ!」
震えるネネの手を握りしめて格好をつけた、みのりんに続き、アオも高らかに声をあげてアピールする。
まるで、ネネを守る騎士は自分だ、と言わんばかりだ。
「ふふっ、アオちゃんも守ってくれるんですか? ありがとうございます」
「……そういえば、アオちゃんって、オスなの? メスなの?」
ふと、頭に浮かんだ疑問を口にした、みのりん。
しかし、ネネは顎に手を当て、考えている風に見えて、あまり気にしていない様子だ。
「……さぁ、どうでしょう。まぁ、どちらにしろ、アオちゃんは、アオちゃんなので」
「それもそだね。萌えに性別は関係ない! という訳で、突撃ー!」
「唐突すぎですし、意味も分かりません~っ!」
取り敢えず高いテンションを維持してノリで乗り気ってしまおうという、みのりんの力業に巻き込まれ、若干、悲鳴を上げるネネだったが、二人はようやく、中に足を踏み入れた。
「うっへっへっへ。お客さんかい? 取り敢えず、これが出来上がるまで待ってておくれ。もうすぐキリが良くなるからねぇ。散らかってて悪いけど、適当に見学してなぁ」
「あっ、ここヤバイとこだ……」
「み、みのりん! 心の声が漏れてますよっ!」
【魔女の家】に入った途端、妖しさが滲み出るような笑い声と共に、老婆から歓迎される。
ちなみに、その老婆は踏み台に登り、人が3人は入れそうな巨大な釜をかき混ぜていた。
釜の中身は赤と黒の斑模様で、ぐつぐつと煮えたぎっており、良く分からない草や、良く分からない骨、良く分からない肉が浮かんでいる。
そして部屋の中は他にも、怪しい薬品が並んだ棚、謎の記号が描かれた布、不吉な光を放つ水晶など、意味不明な品が乱雑に置かれ、不穏な雰囲気を醸している。
みのりんの危険センサーが発動し、警戒心を露にしたのも無理ないだろう。
「いいから逃げよう! こんな危険な所にいられるかっ! 私は家に帰る!」
「なんで、みのりんは、危ない場面で死亡フラグばっかり立てるんですかぁっ!?」
「ぎゃーっ!? ドアが勝手に閉まって動かないっ!」
「だから、言いましたよねぇ!?」
「うっへっへっへっへっへ」
「なんか楽しそうに笑ってるぅぅぅ!」
「若いもんは元気が一番よぉ」
「思ったより、まともな理由だったぁぁぁ!」
「活きが悪いと贄にならんからねぇ」
「と、思ったら、やっぱり物騒だぁぁぁ!?」
「もー、お婆ちゃん! また、お客さんをからかって! そのうち衛兵さんに通報されるよ!」
と、みのりんの正気度がゼロになる前に助け船を出したのは、奥の部屋から顔だけ出した少女。
背は低く童顔でもあるが、勇敢な顔つきをしていて頼もしく感じる。
特に、みのりんという心の支えを失って、へたり込んでいたネネにとっては、まさに救世主だった。
「あ、ありがとうございます! えっと、お名前を聞いても?」
「あっ、ちょっとだけ、待ってください。いま着替えてたので!」
「わ、分かりました!」
それから、1分と立たず部屋から出てきたのは、先ほどの少女——ではなく、少年だった。
「初めまして! 僕はトーシロー。お婆ちゃんの一番弟子で、見習い薬師をやってます!」
ここで、ようやく落ち着いた、みのりんが再び混乱する。
「お、男の娘っ!?」
「は、はい。男の子ですけど。よく女の子に間違われます」
「そっかぁ……男の娘かぁ。お母さん、喜びそうだなぁ」
「えっ、みのりん。何で急に、お母様の話?」
「いやぁ、『お母さん、昔は男の娘と結婚したかったのよ』って、よく言ってたから。でも、幼馴染みの、お父さんが泣いて頼むから、ほっとけなくて結婚したんだって。まぁ、今ではラブラブだけど」
「そ、そうなんですか……」
友達の家庭の、こんな話を聞かされて、どんな反応を返せばいいのか。
取り敢えず、ネネは笑って誤魔化した。
「さて、お二人は、どんなご用でウチへ?」
さすが、NPC。
驚異的なスルーで、話を進める。
「あっ、そうでした! 私、薬師になりたくて、ここに来たんです!」
「そうかい、なら今日からあんたも見習い薬師だ。トーシローと仲良く頑張るんだね。ほら、薬師のバッジだ」
釜を混ぜる作業を終えたのか、踏み台から降りてネネの元にやってきた老婆は、懐から取り出したバッジを手渡すと、すぐに奥の部屋へ引っ込んだ。
「えっと、この後は、どうすれば?」
「はい、今後は、この釜を自由に使ってもらって構いません。そして、調薬を繰り返して、一定の熟練度に達したら昇級試験が受けられます。昇級試験をクリアすると、より上位のアイテムを作れるようになるので頑張って下さい。では、調薬の詳しい手順を説明しますね。まずは……」
そこから、トーシローの説明が始まり、ネネは真剣に聞き入っている。
ちなみに、みのりんも一緒に聞いていたのだが、途中で飽きてしまい、興味本意で奥の部屋を覗いてみることに。
しかし、扉を開けると、そこには——、
「ぎゃああああ!?」
「ムッ?」
老婆の姿はなく、一人の悪魔が立っていた。
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